
「スーパーエイジャーの科学」の続きです!(#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12,#13,#14)
このシリーズでは、年をとっても脳と体が元気に動きまくる“スーパーエイジャー”の最新研究をもとに、いくつになってもピンピンした状態を保つための知見を考えております。
で、そのために本シリーズでは、スーパーエイジャー研究で有名なトポル先生が提唱する『Lifestyle+(ライフスタイル・プラス)』を掘り下げてまして、今回は「睡眠」の話に入りましょう!
睡眠は大事!って話は、いまさら説明するまでもなし。睡眠が足りないと、翌日の集中力は落ちるし、食欲はバグりやすくなるし、運動のパフォーマンスも下がっちゃいますからね。さらに、慢性的な睡眠不足はメタボリックシンドロームや肥満のリスクとも関係するんで、スーパーエイジャーを目指すなら、睡眠を軽視するわけにはいかないでしょう。
となると、我々としてはすぐに、「では、最強の睡眠法は何なのか?」と考えたくなるわけで、実際に私のもとへも睡眠に関する質問はかなり頻繁に届きます。たとえば、
「毎日8時間寝ればいいのか?」
「寝る90分前に入浴すべきなのか?」
「寝室は何度にすればいいのか?」
「メラトニンを飲めばいいのか?」
「Ouraリングで睡眠スコアを管理すればいいのか?」
みたいな話ですね。もちろん、こういう小技には、それぞれ意味があるんだけど、スーパーエイジャー研究の知見に照らすと、睡眠改善でまず大事なのは「理想の睡眠法」を探すことじゃないんですよ。
では、何が大事なのかってことですが、結論から申し上げますと、ここで最も大事なのは「自分の睡眠を乱している最大の原因をひとつ見つけること」であります。
睡眠時間の理想値みたいなもんはあるが、それだけ見てもしょうがない
では、実践パートに入る前に、睡眠の基礎を押さえておきましょう。
まず重要な「睡眠時間」についてですけども、ここにはだいたいの目安があります。みんな大好き「UK Biobank」のデータなどをもとにした研究(R)によると、睡眠時間と認知機能・メンタルヘルスの関係は直線的ではないと報告されていまして、
- 短すぎてもよろしくないし、長すぎても必ずしも良いわけではない。
- 7〜8時間を下回ると、1時間短くなるごとに心血管疾患リスクが上がる。
- 逆に7〜8時間を上回る場合も、1時間長くなるごとに心血管疾患リスクが上がる傾向がある。
みたいな感じになっております。ということで、ここだけ見ると、「なるほど、じゃあ7〜8時間寝ればいいのか!」と考えちゃうところですが、話はそう単純ではなかったりします。
というのも、人間の睡眠ってのはかなり個人差が大きいんですよ。なにせ、私たちの体内時計ってのは、持ち前の遺伝的な差によるところが大きいもんでして、
- 朝型か夜型か
- 必要な睡眠時間が長めか短めか
- 光やカフェイン、アルコールにどれぐらい敏感か
といった違いが出ることが、過去の研究でわかってるんですよ(R)。もちろん、多くの人にとって「短睡眠でも平気」はかなりレアケースなんで、基本的には7〜8時間前後を目指すのが無難でしょう。
ただし、それを絶対ルールにして、
- 7時間寝られなかったから今日は終わり!
- 8時間寝たのに疲れている自分はおかしい!
- 睡眠スコアが低いから体調が悪いに違いない!
みたいに考え始めると、睡眠改善には一気に問題が出てきちゃうんで注意したいところです。睡眠の改善ってのは、あくまでも「唯一の正解に自分を合わせるもの」ではなく、「自分の生活のどこで睡眠が乱れているかをチェックするもの」と考えるべきだとお考えください。
年を取るほど、睡眠は自然に難しくなっていくから困っちゃうよねー
でもって、さらに厄介なのが、睡眠は加齢とともに変わるところであります。スーパーエイジャー研究で有名なトポル先生は、高齢者の睡眠問題として、以下の3つを挙げております。
- 深い睡眠が減る
- 睡眠が細切れになり、睡眠効率が落ちる
- 体内時計が前倒しになり、早寝・早起きになっていく
いずれも重要な変化ですが、特に深いノンレム睡眠は、記憶や認知、全身の健康に関わる大事な睡眠段階なのが困っちゃうところです。こいつは、40代後半の時点ですでに10代より60%以上低くなりまして、70歳では80〜90%も低くなると考えられております。実際、私も「昔に比べて眠りが浅くなったなぁ……」と体感するケースが増えてたりしますからね。これはなかなか切ない話で、年齢を重ねるほど睡眠は健康に重要になるのに、その睡眠自体が年齢によって乱れやすくなるわけですね。
なので、年を取ってから睡眠が浅くなったり、早朝に目が覚めたりするのはいたしかたなし。こいつは、ある程度まで、体内時計と睡眠構造の変化として起きる現象なんで。だからこそ、年をとってから「若いころと同じように眠れないからダメだ!」などと考えるより、「今の自分の睡眠を乱している要因は何か?」を探したほうが建設的なんですよ。
体内時計は、いろんなもんで乱れちゃう問題
では、どうやって自分の睡眠を整えればいいのかって話になりますが、ここで難しいのが、私たちの体内時計が生活のあらゆる刺激で変わるってところです。
簡単におさらいしておくと、体内時計のマスタークロックは脳の視交叉上核ってとこにありまして、光のような外部刺激によって調整されております。しかも、この時計は、単に眠気を決めるだけではなく、筋肉、肝臓、副腎、腎臓、免疫系、心臓、膵臓などとも分子的につながってるんですよ。
そのせいで、睡眠を乱す要因は山ほどありまして、たとえば、
- 寝る時間と起きる時間が毎日バラバラ
- 夜に強い光を浴び続ける
- 寝る直前に食べたり飲んだりする
- 遅い時間に激しい運動をする
- 午後遅くにカフェインを摂る
- お酒で寝落ちする
- 寝る直前まで仕事やSNSをする
みたいな要因で、いくらでも体内時計は狂っちゃうわけです。睡眠は単独の習慣ではなく、食事、運動、光、仕事、ストレス、飲酒、カフェインと全部つながっているわけですな。だから、「寝る前にこのサプリを飲めば解決!」みたいな話にもなりにくいわけです。これも悩ましい問題ですな。
ってことで、睡眠改善は「7つの候補」から1つだけ試すべし
では、ここまでの話をふまえて、睡眠を改善するために私たちは何をすればいいんでしょうか?
睡眠の状態が悪化しちゃうと、ほとんどの人はつい「寝る前はスマホ禁止」「カフェイン禁止」「酒禁止」「夕食は早め」「朝日を浴びる」「寝室を暗くする」「毎日同じ時間に寝る」みたいにいろんなルールを増やしがちなんですけど、ルールが多すぎると、なにが原因だったのかがよくわからないし、「今日もちゃんと眠らなきゃいけない」って感覚が生まれちゃうんですよね。要するに、睡眠がプレッシャーの対象になっちゃうわけです。
なので、睡眠を改善したいときは、まずは以下の7つから「これは最も怪しいなー」と思えるものを1つだけ選び、2週間だけ試してみてくださいませ。
候補1. 起床時刻
最初に見るべきは、起床時刻であります。これは過去にも書いたポイントですけど、健康的な睡眠を促すための方法が数ある中でも、「週末も含めて毎日同じ睡眠パターンを保つ!」ってのは、睡眠改善においてトップクラスで重要だったりしますんで。