
「最近の老化研究は、どこまで信用していいんですか?」みたいな質問をよく受けますんで、現在のポイントをまとめておきましょう。
たしかに、最近のアンチエイジングクラスタでは、「生物学的年齢が下がる!」「寿命スイッチを入れる!」みたいなフレーズが飛び交っております。それにともない、NMN、NAD、メトホルミン、ラパマイシン、幹細胞治療などがもてはやされるようになりまして、「老化は止められるのでは?」って気分になるわけです。
で、実際のところ、ここ数年の老化研究はすごくて、DNAの損傷、テロメア、慢性炎症、老化細胞など、ここ数十年で「なぜ体は老いていくのか?」ってのは、かなりのとこまでわかってきたんですよ。なので、今20代の人が50代になるころには、本当に老化がだいぶ食い止められるようになってるかもですな。ああ、うらやましい。
ってことでこのシリーズでは、数回にわけて老化研究の今を見ていくことにします。具体的には、「なんで私たちは老いるのか?」ってとこを確認しつつ、以下のような話題の真偽をチェックしていきます。
- NMN
- NAD
- レスベラトロール
- メトホルミン
- ラパマイシン
- 若い血液
- 幹細胞
- 老化時計
- クライオニクス
- 不老不死ビジネス
どれも、アンチエイジング界隈で話題のネタでして、気になっている方も多いでしょう。
これらの点については、近年、ノーベル化学賞を取ったヴェンカトラマン・ラマクリシュナン先生が、とても良いレビュー(R)を書いてくれてるんで、こいつを参照しつつ、現代の老化最前線を見ていきましょうー。
老化に「ひとつの原因」は存在しない
さて、まず大事なのが、「老化にひとつの原因は存在しない」って問題であります。老化ってのは、体の一部分だけに問題が起きる現象ではなくて、
- DNAのダメージ
- タンパク質の処理エラー
- ミトコンドリアの低下
- 慢性炎症の増加
- 老化細胞の蓄積
- 免疫や代謝バランスの崩壊
といった複数の要因がからんでまして、その結果として、筋肉、血管、脳、骨、内臓など、あちこちの機能が少しずつ落ちていくんですよ。つまり、老化ってのは「ひとつの問題を解決すればOK」ってものではなく、体中のメンテナンス機能が少しずつ衰える現象なんですよ。
にもかかわらず、現代の若返りビジネスは、たいてい話を単純にしちゃいまして、
- ミトコンドリアを活性化!
- 細胞のゴミ出しを促進!
- DNA修復をサポート!
- 老化時計を巻き戻す!
みたいな売り文句で、役に立たない美容医療を売りつけてくるわけです。実際、それぞれの背景には本物の科学があるんだけど、いかに老化研究が進んだからといって、すぐに若返り商品が生まれるわけじゃないですからねぇ。私などは、老化の仕組みがわかるほど、むしろ「これは簡単にはいかないなぁ」と思うケースが増えるばかりだったりします。
ラマクリシュナン先生いわく、
老化とは、分子、細胞、組織にダメージが蓄積し、それが体の衰えと死につながっていくプロセスである。
老化の特徴は分子から細胞、組織、全身システムまであらゆるレベルに存在し、それぞれが互いに影響し合うため、老化には単一の原因があるわけではない。
とのこと。現時点での研究に照らして言えるのは、「老化のメカニズムが少しずつ見えてきた」「動物実験では老化に介入できる例が増えてきた」「人間でも健康寿命を延ばすヒントが出てきた」ぐらいなんで。
なので、アンチエイジングに関するニュースを見かけたら、とりあえず「話が盛られてそうだなー」ぐらいに思っておいてくださいませ。
「老化は病気だから治せる!」は、どこまで本当か?
もうひとつ、最近アンチエイジング界隈でよく見かけるのが、「老化は病気だから治せる!」ってフレーズであります。老化はあくまで病気のひとつに過ぎないので、薬やサプリや医療技術でなんとかなるはずだ!って考え方ですね。
実際、最近の老化研究では、「老化はただ受け入れるべき自然現象ではなく、ある程度までどうにかなるプロセスではないか?」って見方が広がってたりします。昔は、老化は「そういうものだから仕方ない」と思われてきたのが、いまでは研究対象としてかなり本気で扱われているんですよ。
そこで、まず押さえておきたいのは「老化は普通の病気とはかなり違う!」ってポイントであります。
たとえば、感染症には、原因となるウイルスや細菌があるじゃないですか。もちろん実際にはもっと複雑ですが、少なくとも「この病原体を抑える」「この感染経路を断つ」といった形で、対策を立てやすいんですよ。
同じように、高血圧なら血圧という指標があるし、糖尿病なら血糖やインスリンを問題にすればいいし、脂質異常症ならLDLコレステロールに対策すればいいわけです。
ところが、老化には「これだけ見ればOK」という単一の指標がないんですよ。上述のとおり老化には、
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