デルタブルースの昔から今日に至るまで、歌詞の世界で、「非常に疲れた」と言う表現は、さまざまなレトリックが発達してきた。曰く「ボロ雑巾になった気分」「今がいつでどこだかも分からないぐらい」「死んだ3匹の蝿ぐらいになった」「自分がブロンズ像にでもなった気分だ」「目をつぶれば寝てしまう」「寿司一個が重くて持てない」「眠りは死の友人だ。だからオレは寝ない」等々。

 現在のボディ·コンディション(これは歯の具合も関わっている)のまま、ダブセクステットと2期のDJイベントと、山下ー堀越ー菊地の「山下洋輔DUO +1」(この名称になった経緯も面白い話なのだが、今、キーパンチするのもしんどいのでいつかまた)を、飛石式に1日おきに3連続したら(その間もぺぺのレコーディングもあり)、ボロ雑巾になって今がいつかでどこなのか分からず、目をつぶればもう寝てしまう以上のブロンズ像にでもなった状態のままだ。

 とはいえ、どんな状態であろうと、ステージには上がる限りは、クオリティは絶対に維持しないといけない。「疲れてるんで大目に見て下さい」は、最後の最後のセリフだ。

 ダブセクステットはチームプレイなので、それこそマイルスよろしく、自分の吹くパートは普段の80%に落として、類家君や坪口に任せることができ(ジャズメンは、一回セッションすれば、具体的な=口頭でいくら怪我や病気の話をしても、伝わらない=コンディションは丸見えになるので、「オレ80%に落とすからさ」とさえ言わないでも伝わる)、バンドサウンドも自分のソロも、クオリティ落とさずに何とか凌いだ。