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「想像力」の正体。初期『ドラクエ』や『ウィザードリィ』の感動の本質は何だったのか?
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「想像力」の正体。初期『ドラクエ』や『ウィザードリィ』の感動の本質は何だったのか?

2020-05-15 03:18
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 ども。夜更けて、やることもないので、記事を書いています。いや、やるべきことは色々あるはずなのだけれど、もう、こうね、何ひとつやる気にならない。ミツユビナマケモノよりも怠惰な日常といえるでしょう。

 いやー、『鬼滅の刃』、ほんとうに終わるんですかねー。『SPY×FAMILY』、面白いですよねー。売れまくっていますねー。はあ(精魂尽き果てたため息)。

 そんなリヴィングデッド的に腐り果てた精神状態でTwitterをさまよっていたら、ひとつ面白い記事を見つけたので、紹介させてもらいます。「「昔のゲームの方が想像力を刺激されて良かった」は本当か」というタイトル。

 書き手の方は「ファミコンのゲームをやってた時に、ドット絵からリアルを想像していたか?」ということについて考えた結果、「これ、冷静に自分の記憶をたどってみると、たぶん、「していなかった」と思うんですよね。」という結論にたどり着いています。

 で、そこから先が興味深い。

確かに、ドット絵の向こうに「見た目以上の何か別の世界」を感じ取ってはいたんだけど、それは「リアル」の延長というわけではなかった。マリオはマリオであってボブ・ホスキンスではなかったし、グーニーズを遊びながら映画のマイキーを想像したこともなかった。ドラクエ1で草原を歩いていても、現実の草原のような風景は浮かばなかった。

例えば、マリオが狭い足場を渡る時は自分のことのようにハラハラしたし、ドラクエで呪文を唱えれば本当に風や炎がまきおこっているような気がした。「アトランチスの謎」ではだだっ広い島を探索しているような気分を味わったし、「ドラクエIII」は本当に世界をまたにかけて冒険している感覚があった(よくオープンワールドゲームで「マップの広さ比較」が話題になるけど、宇宙規模のやつを除けば僕は今でもドラクエIIIがトップ陣に食い込むと思ってる)。

それは決して「リアル」な風景ではなかったけど、少なくともわずか25色、256ドット×224ドットの画面から得られる以上の「何か」を受け取っていたのは間違いなかった。でもその「何か」って一体なんだ? と考えると、これがなかなかうまく言語化できないんですよね……。


 わかる! わかるわー。この話、めちゃくちゃよくわかるわー。ぼくもファミコンの『マリオ』からずっとゲームを遊んで来ている年寄りゲーマーなので、この方が何をいわんとしているのか、実感としてめちゃくちゃ伝わってくる、と思います。

 たしかに、ぼくも『マリオ』や『ドラクエ』をプレイしているとき、現在のゲームのような「リアルな」グラフィックを想像していたわけではなかった。

 そもそも、どこぞの天才児ならともかく、人並みの平凡なイマジネーションしか持ち合わせていない地方都市の一小学生に「リアルな」映像なんて想像できたはずもないんですよね。

 でも、それなら当時のゲームはつまらなかったかといえば、めちゃくちゃ面白かったんです。まさに「マリオが狭い足場を渡る時は自分のことのようにハラハラしたし、ドラクエで呪文を唱えれば本当に風や炎がまきおこっているような気がした」のです。

 おそらく、多くの人が「チープなグラフィックを想像力で補っていた」というのは、この感覚のことを指しているのではないでしょうか。ごくあたりまえに考えて、ファミコンのドット絵から具体的に壮大な冒険世界を想像/創造できるほどイマジネーションの豊かな人はそうはいないでしょうからね。

 しかし、それでは、上記記事でも書かれているようにこの感覚はいったい何なのでしょう? 「想像力で補う」とは実際にはどういうことなのでしょうか?

 これも上に書かれていることですが、「パッケージやイメージイラストから想像を膨らませ」るということがひとつあると思います。これね、ぼくはかなりやっていた。

 当時のゲームグラフィックは限りなくチープで、それに対しパッケージなどのイラストは(センスの古さはともかく)いまと同等に描き込まれていたわけですから、それらのイラストのイメージをゲームのグラフィックに上書きするかたちで想像していた側面はあると思う。

 ただ、それを「ゲームグラフィックを見て、イラストのリアルなグラフィックが動くところを想像していた」というふうに表現すると、やはり違う。

 もしかしたら一定以上の絵画的才能がある人はドット絵から詳細なグラフィックを想像できたかもしれないけれど、ぼくにはできなかった。

 ただ、何というか、ぼくの頭のなかではチープなドット絵と、パッケージや攻略本などで仕入れてきたイラストなどが混然一体となって、ひとつの「リアルな」、あるいは「リアルに感じられる」世界を形づくっていたのです。

 この感覚、わかりますかね? わかってもらえると非常に嬉しいんですけれど。

 まあ、そういうことをやっていない人もいるとは思うんですけれど、そういう人もただ単にドット絵をドット絵としてしか認識していなかったわけではないんじゃないかな、と思います。

 そう。それは、あるいは夢を見ている感覚に近いものかもしれません。夢のなかでは、すべてがぼんやりと曖昧です。決して理路整然としてはいないし、飛躍しているところもたくさんあるはずなのに、なぜかすべては強烈に現実的に感じられます。

 それと同じように、少年時代にゲームをしていたときのぼくは、すべてが曖昧で抽象的で、しかしなぜかはっきりと現実として感じられる世界を旅していたのではないか。そんな気がするんですね。

 もっというなら、そもそも子供時代にはまだ現実は完全に現実ではなかったのではないか。もちろん、普段は現実に所属しすべてを受け入れて生きていたけれど、ゲームをしたり、小説を読んだりしているときはそのあたりまえの世界から遊離して、まさに夢のようにファジィで非現実的な宇宙に旅立っていたのかもしれない。

 もう少し言葉を弄するなら、ゲームをやっていたときは「リアルの閾値が下がっていた」のかもしれません。

 ぼくたちが現実世界を現実として認識するためには、それなりの情報量が必要です。つまり、視覚、聴覚を初めとする五感で世界を詳細に把握して初めて、これは現実だと感じ取れる。

 その一方で、初期の『マリオ』や『ドラクエ』のようなチープなグラフィックは「現実ではない」と判断するわけです。しかし、もし、ゲームをするとき、その「現実らしさ」の基準がはるかに曖昧になっていたとしたら?

 それならば、チープなグラフィックをチープと認識したそのままで、広大な世界を経巡る大冒険を感じ取るという矛盾した現象が説明できるのではないでしょうか。

 もちろん、「ほんとうに」現実と非現実が区別できなくなっていたわけではない。理性ではゲームはゲームに過ぎないとわかっている。しかし、その一方で感性の領域では幻想と現実が混然となった感覚に酔っていたとはいえないでしょうか。

 それはチープなグラフィックを見ながら「想像力でリアルな世界を築き上げた」ということとは違う。チープなドット絵はチープなものとしてきちんと認識しているのです。ですが、その一方でそれと同時にはるかに広い世界をぼんやりと感じ取っていたということなのではないか、と。

 この話を突き詰めると、人間はどのようにして世界を認識しているのか、ということに行き当たるように思えます。

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この記事を読んて、ゲーム夜話の動画を思い出しました。
古今東西の名作ゲームを多彩な視点から分析・解説する、まるで文学研究の様な動画です。
もちろんマリオ1やドラクエ3も最初期に取り扱っており、改定まで加えて詳細に分析しています。

【ゆっくりゲーム解説】ドラクエ3改訂版-ゲーム夜話【第1回-前編】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm30696271

【スーパーマリオ改訂版】ワールド1-1のコースデザイン【第4回前編-ゲーム夜話】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm35862872

この両者に通じるのは、誰のことも見捨てないというレベル設定だと思います。
初めてゲームを触る人に、好奇心や探究心をくすぐる仕掛けを随所に施しいている。
それでいて極めて緩やかにゲームレベルを引き上げていて、プレイヤーの挑戦を巧みに引き出しています。
そして技術的制約がもたらした容量の限界をいなすため、表現すべき情報を考えに考え抜いて取捨選択しています。
こうした様々な工夫によって多くの人のイマジネーションが掻き立てられ、ゲームとしてのより深い表現に没頭していったのではないかと思うのです。

ゲーム夜話はこの他にも新旧様々なタイトルを取り上げています。
よければ参考にしてみて下さい。

No.1 55ヶ月前
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