○この記事の内容。○

 『超格差競争社会・韓国』、『怒りのソウル』といった本を読んだ感想です。いや、韓国はほんとうに大変な状況になっているんだな、と。韓国のきょうは日本のあしたであるかもしれないわけで、他人ごとではまったくないと思います。

超格差社会・韓国 (扶桑社新書 56)

 九鬼太郎『超格差社会・韓国』を読み終えた。タイトルにある「超格差社会」韓国の現実を余すところなく描き出した衝撃的な一冊である。

 超格差社会とは、超競争社会でもある。韓国の格差と競争は、日本の比ではないのだ。格差が開いたといわれる日本ではあるが、韓国に比べればまだ平穏な状況だということがわかる。

 韓国社会のどこがどうきびしいのか。具体的に見ていってみよう。たとえば野球の話。日韓の野球の実力をどう評価するかは微妙なところだし、また、特に野球にくわしいわけでもないぼくの手には余る。

 しかし、本書にあるように、韓国は2008年の北京五輪で金メダルを獲得しているし、日本は第一回と第二回のワールド・ベースボール・クラシックで韓国を破って優勝している。そこまで実力は離れていないと見ていいだろう。

 ところで、日本には4000校を超える高校に野球部があり、甲子園大会に参加している。それがプロ野球のレベルを根底のところで支えているといってもいいと思う。

 さて、韓国の野球全国大会には何校くらいの学校が参加していると思われるだろうか? ヒント、韓国の人口は日本の半分以下だから当然、日本より少ない。ちょっと考えてみてください。

 正解はわずか50校にすぎないのである。日本の80分の1! それでプロ野球は日本と互角に近い実力を持っているのだから、わけがわからない。なぜ、こんなに差が開いているのか。

 著者によると、日本と韓国ではスポーツに関する考え方が根本的に異なっているのだという。韓国では、オリンピックや世界大会など、国際大会で好成績が期待できる種目に関しては国家代表チームが編成される。

 この代表入りを目指し、幼い頃から猛烈なエリート教育が行われる。野球やゴルフなど、プロとして大金を稼ぐことが可能な競技でも徹底的な英才教育がほどこされる。

 その一方で、日本のような「青春のひとコマ」としての中学や高校での運動部はほとんど存在しない。国家代表やプロが無理だと判断したらさっさと断念し、受験勉強に集中するのだという。

 なんという割り切り! しかし、それが韓国という国なのだ。最近、韓国の選手はオリンピックやワールドカップで華々しい活躍をしている。その背景にあるものは、幼い頃からの選抜と競争と、そして「地獄の特訓」にほかならないということなのである。

 これだけでも「韓国の現実」の一端がわかるだろう。しかし、韓国の競争社会のきびしさはまだまだこんなものではない。