弱いなら弱いままで。
そういう記事は信用できないという方はいますぐ回れ右し、べつの記事へ飛んでもらってかまいません。ただし、記事の内容はぼくの裁量に任せられており、べつだん、正直な感想をねじ曲げることを求められているわけではありません。そのことは明記しておきます。
そういうわけで、正直な感想を述べておくと、いや、面白かった。ただ、率直に云ってビジネス書としてはあまり役に立たないのではないでしょうか。内容があまりにユニークすぎる。
この本を読んで、すぐさまビジネスの最前線に役立てることができるひとは、そのひと自身、相当にユニークなキャラクターでしょう。
特に後半の人類史的パースペクティヴに立ってSF的な奇想に至る展開は圧巻。こういう内容が仮にもビジネス書として発表されたことはなかなか画期的なのではないかと思います。役に立たないだろうけれど(笑)。
本書の著者は、ニコニコユーザーなら(たぶん)だれでも皆知っている、ぼくたちのドワンゴ会長、川上量生さんです。
川上さんは本書一巻を通し、現実世界をひとつのゲームとみなし、それをいかに攻略していくか、その方法論を語っています。
しかし、この場合のゲームとは、ある種のテレビゲームだけを指しているわけではありません。むしろ川上さんは「非電源型のシミュレーションゲーム」のほうにより強い思い入れがあり、テレビゲームを少々敵視しているようです。
その云い分に対して、テレビゲームが好きなぼくとしては云いたいこともあるのですが、この際、それはどうでも良い。
川上さんによると、かれが愛する「非電源型」のゲームの魅力は、ゲームのルールそのものをよりおもしろく、より魅力的に書き換えることができる点にあります。
かれの話を信じるなら、それはいっそう現実に近い形のゲームなのです。現実世界、特にビジネスの世界などでは、ルールそのものが書き換えられていくことなどごく日常的な出来事なのですから。
本書のタイトルは「ルールを変える思考法」ですから、まさにこの「ルールそのものに干渉する」ことが、ひとつのテーマとして取り上げられていることがわかります。
川上さんの話によれば、このルールを疑い、時に変えることはビジネスにおいてもきわめて重要であり、「非電源型」の、高度な思考力を要求されるゲームは現実世界での生き方を決める際にも勉強になるということです。
とりあえず、ぼくはそういうふうに理解しました。そして、ここで、ぼくはなるほど、と膝を打ちます。
たしかに川上さんの云い分はわかる。ひたすら決められたルールを順守しつつ、その箱庭のなかで遊ぶゲームは、ある意味で現実から遠い。
そこでは、現実世界の、基本的なルールすらいつねじ曲がるかわからないゲームを勝ち抜く作法は学べないかもしれない。
しかし、一方で、世の中には、そういうゲームこそ高度だと考える一派があるわけです。たとえば、将棋やチェスを愛好するひとたちは、いまさらルールを変えてほしいとは思わないでしょう。
もちろん、そのルールに何らかの難点があったならルール変更を申し出ることもあるかもしれませんが、基本的には、さだめられたルールはそういうものとして、その範疇で戦うことを選んでいるはずです。
だから、そういう現実世界を生きるためにはあまり役立たないかもしれません。むしろ、その種のゲームに夢中になればなるほど、ひたすらに浮世離れしていくという傾向があることすら考えられる。
しかし、まさに「役立たず」であるからこそ、その世界は美しい。
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