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漫画版『無職転生』最新刊を読み終わりました。
あいかわらず素晴らしい出来ですねー。
「小説家になろう」で抜群の人気を誇る有名作の漫画化です。
ある事件をきっかけにしてひきこもりになった男が異世界に転生して、今度こそ本気で生きようと決意するというお話なのですが、この漫画版は原作を忠実に再現しています。
もっとも、原作の内容をそのままデッドコピーしているわけではなく、かなりエピソードの取捨選択が行われてもいます。
この巻では主人公のルーデウスにとって最初の「ターニングポイント」まで話が進むのですが、コンパクトに構成しなおされた展開が非常に美しい。
この調子だとかなり先まで話が進むかも、と思わせられます。
さすがにラストまで全部描き切るのはむずかしいだろうけれど、後半まで描くことはできるのでは。
ちなみに主人公の人生にとってターニングポイントにあたるエピソードを、そのまま「ターニングポイント」と題してしまうのは『無職転生』の発明ですね。
この「ターニングポイント」ではいつもルーデウスの人生が根本から揺り動かされるような事件が起こり、物語はドラマティックに進展します。
この第一の「ターニングポイント」は特に過激で、ルーデウスのそれまでの人生は根こそぎ破壊されてしまいます。
守るべきものはただひとり、傍らの少女エリスのみ。しかし、そのエリスを守って旅を続けることは至難。さて、そんなルーデウスの前に現れる男は何者なのか――?
原作を読んでいる人にしてみれば自明な話なのですが、非常に盛り上がる展開となっています。
この「どんなに幸せを積み上げても一瞬で覆される」という感覚は『無職転生』のオリジナリティですね。
あとで書きますが、これあっての『無職転生』という気がします。
漫画版はまだ序盤ではありますが、原作のサスペンスをうまく再現していますね。
まあ、とにかくこの漫画版は非常にうまくできていて、第1巻及び第2巻のときも感心した記憶がありますが、続くこの第3巻は輪をかけて高い完成度を示しています。
ルーデウスの日常を描く合間にロキシーの冒険がインサートされたりとか、とてもとても洗練された印象。
最近、小説や漫画を読んでも「面白い」より先に「うまい」という言葉が出て来ることが多くなったぼくですが、この作品もとにかくうまくできていると感じます。
もちろん、原作の物語の素晴らしさがあってこそですが、この序盤は『無職転生』全編のなかでも殊の外完成度が高い下りなので、こうも巧みに漫画化されたことはいち読者として嬉しいです。
以前にも書いた記憶がありますが、この『無職転生』という物語の面白さはひとつにはその「優しさ」にあると思います。
「ひとを裁かない優しさ」。
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コメント
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以前、こちらで『無職転生』が紹介されていたのをきっかけにハマった者です。
漫画版、本当に素晴らしい出来ですよね。
「どんなに堕落した人間も決して特別ではない」というのが「非常に優しい視点」であるという分析、とても納得がいきました。
ルーデウスや他の登場人物の多くは卓越した人間ですが、『無職転生』が平凡な人間、大きく挫折したり、堕落したことのある人間にとっても読みやすいのは、その優しさのせいなのかな、と思います。
海燕(著者)
ぼくはやはり優しい物語が好きですね。それは一面で甘さにも通じているので、優しければいいというものではないのかもしれませんが、それでも優しさがあるのとないのとでは読みやすさが大違いだと思います。