二つ返事ならぬ即答で「行くでヤンス」と答えた記者。果たして都内某所にある『麺屋武蔵』の秘密キッチンにお邪魔することになった。待ち構えていたのは麺屋武蔵本店の“大番頭”矢都木(やとぎ)二郎さん。
キッチンではスタッフさんが既に調理を始めており厨房独特の熱気が伝わってくる。
「間もなく出来上がるのでお待ちください」とにこやかな大番頭。待っている間に今回の『冷やしスタミナ烏龍茶麺』についてのお話を伺うことができた。
●女性ターゲットのメニューとして開発
『冷やしスタミナ烏龍茶麺』は、夏季限定メニューとして用意されたという。今回、『麺屋武蔵』渋谷店と吉祥寺店の2店舗で販売されるのだが、実は『麺屋武蔵』での“特別メニュー”は通常、1店舗でしか扱わないのだそうだ。何故、今回この2店舗なのかというと、渋谷店と吉祥寺店は「女性客が多いから」。
そう、『冷やしスタミナ烏龍茶麺』は女性向けのメニューとして発案された製品なのだ。
「女性はヘルシーなものを好む人が多いですが、ガッツリ食べる派の女性も最近増えています」と語る矢都木さん。「暑い夏にガッツリメニューをサッパリと食べていただきたいです」
つまりは、烏龍茶の「お肉の脂を落とす」性質を利用してサッパリした後味を狙ったのが今回の『冷やしスタミナ烏龍茶麺』というわけ。ちなみに開発期間は3~4週間程度だったそう。
たしかに烏龍茶に脂を落とす作用があるとはそこかしこで聞くけれども、ラーメンに入れて良いことがあるのか?と正直、半信半疑だった。本当に失礼ながら、ちょっとプラシーボ(先入観による効果)もあるんじゃないの?とすら思っていた。
●「分析不能」で食べ続ける無限ループ
キッチンでは熟練のスタッフさんによって手際よく肉が炒められている。別のコンロではもう一人のスタッフさんがゆで上がった麺と何かを絡めている様子が見えた。
「今回は麺にも烏龍茶が練り込まれています。味のバランスを考えて、麺に絡めるXO醤は専用のものを用意しました」と、かなり手間がかかっている様子がうかがえる。
トッピングに用いられるお肉は上質なハラミを100g。ラーメンに載せる肉の量としてはかなり多め。その都度、炒めないといけないのでこちらもかなり手間がかかりそうだ。
「出来上がりました。召し上がってみてください」と、出てきた『冷やしスタミナ烏龍茶麺』は想像している冷やしラーメンとは異なった。緑の野菜がベースに、赤いトマトのアクセントと白いネギ、そして焼き上げられたハラミ。お肉が載ったサラダのような彩りだ。
緊張しながら、麺と野菜、肉を口に運ぶ。ファーストインプレッションは「何が起きたのかわからない」。グルメレポートとしてはあるまじき表現だが、正直なところ、本当にこんな気持ちだった。
濃厚な味が口の中におしよせる。ハラミの脂の旨味が口の中に広げるけれど、それが次の瞬間、「サッ」と引いていってしまう。
けれども、スープに含まれる牛のダシ、麺に絡んだややピリ辛のXO醤の味は損なわれることなく、味わいとして口の中にきちんと残り続けているのだ。
想像していただきたい。
たとえば、冷やし中華を食べたときに口の中がサッパリとする。あるいは、酢のものを食べたときにも同様の現象が起こる。あの「スッキリ」「サッパリ」とした感覚に近いかもしれない。しかし酢の味は(もちろん)全くしないのだ。本当にコッテリ感だけがリセットされてしまったかのようである。
食べた当初はこの“違和感”にやられ、「おいしい!けどなんだろう?」「なんだろう?でもおいしい!」と疑問符を抱えたままひたすら箸を運んでいた。後半には器の奥に隠された「隠し風味」まで出てきて、記者の味覚を翻弄(ほんろう)し続けてくれた。野菜の食感と麺のモチモチ感のコントラストも申し分ない。
人間はきっと頭のどこかで、過去に食べたものをすべて覚えていて、何かを食べたときに「ああ、これは以前に食べた〇〇の味と似ているな」「これは〇〇が入っているな」と無意識のうちに比較しているのだと気付かされた。少なくとも、僕の感じたことのない感覚があったことは確かだ。
●食べてわかった「疑って正直スマンカッタ」
当初、烏龍茶の効能を疑っていたが、ここまで脂の感覚をリセットしてくれるとは、正直思っていなかった。
一口ごとが新鮮なので、文字通り、夢中で食べ続けられてしまう中毒性が素晴らしい。もちろん、これは烏龍茶の効能に加え、トータルで計算された味のバランスが絶妙だったからだと言えよう。矢都木さんが「お肉と烏龍茶は非常に相性がいいんですよ」と言っていたのも、今なら素直にうなずける。
「疑って悪かったでヤンス。何と言ったらよいかわからないまま、食べきってしまったでヤンス。」
スープまで飲みきって、器の前にひれ伏した。今回取材で来た記者だが、絶対に渋谷店か吉祥寺店に行こうと心に決めながらこの地を後にした。(割とマジで)。
調理担当してくださったスタッフさんたちも「お待ちいたしております」と笑顔で見送ってくださった。
●夏季限定のメニューでヤンス
『冷やしスタミナ烏龍茶麺』は、6/29(土)のニクの日に提供を開始する。販売価格は850円だ。ただし、1日の販売予定数は30食!これ、手間もコストもかなり頑張ってしまっているので現在はこの提供数を考えているのだとか。
売り切れ前に食べるためには、ちょっと気合が要るでヤンスね……。
コッテリなのにサッパリの不思議な美味さを体験したい人は、『麺屋武蔵』に足を運んでいただきたい。ただし、僕の分は残しておいてほしいでヤンス……。
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