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8月17日&18日に開催されるDDT両国国技館大会。初日の17日大会で
南海キャンディーズ山里亮太さんが総合司会を務めることが発表されました。ここでは『Dropkick Vol.7』で実現した山ちゃんと男色ディーノ対談の中編をご紹介いたします(前編はコチラ)
なお、最新号『Dropkick vol.9』では男色ディーノとリットン調査団・藤原さんの対談を掲載中です。
なお、最新号『Dropkick vol.9』では男色ディーノとリットン調査団・藤原さんの対談を掲載中です。
男色 逆にワタシはお笑いの構造について聞きたかったのよ。いまテレビに出られてる方ってトーナメントを勝ち抜いた方なの?
山里 いや、もうそれはいまでも勝ち抜き戦ですよ!
男色 いまでも!
山里 そこはネタだけじゃなくて番組内での立ち振る舞いも問われてて。ボクは『スッキリ』で天の声やってるんですけど、スタッフ側でモニター越しにみんなの“プレイ”を見てるんですよ。そうすると、そのときに誰がオンエアにとってベストな人なのか、番組を盛り上げる言動をするのか、ここでケンカを売れる才能の凄さとかが伝わってくるんです。
男色 スタッフ側に立つことで芸人の才能が見えてくるわけね。
山里 やっぱり売れている人たちはその能力が尋常じゃないです。ネタの面白い、面白くないとかは抜きにして、合いの手や相槌の入れ方、ケンカの仕方とか、もう長く売れてる人は見ていて惚れ惚れする。中でも「めちゃイケファミリー」が凄いんですよ!
男色 ああ、それはよく言われるわねぇ。
山里 もう「めちゃイケファミリー」の誰か一人が番組にいるだけで、そこの空間が成立するんです。濱口(優)さん一人いるだけで、全員がその空間で面白くなることができるし、ボクみたいな素人でも編集が見えてくる。「ここのやり取りは残すよな」「このセリフは絶対アリだよな」とか。あと加藤浩次はもう超天才だと思ってて。あの人の構成力はもう惚れ惚れするもん。加藤さんこそもっと評価されてなきゃいけないっていうか。(島田)紳助さんがいないいま、この世を紡げるのは加藤浩次しかいないと思ってますね。
男色 そういう話はチラホラ聞くわね〜。
山里 他人に気は使えるし、さじ加減も良いし、プロデュース能力も尋常じゃないし、ほら、そこは加藤さんもプロレスが好きだから。俺もプロレスを勉強していればもっと……。
男色 でも、山ちゃんもM─1に出てブレイクしてるじゃない。
山里 はいはい、2004年の伝説のっ!!(身を乗り出して)。
男色 自分で伝説認定するのね(笑)。あれ、けっこうカルチャーショックを受けたのよ。ちょっと調べたらワタシと同い歳だし、そこは完全に近親憎悪というか。
山里 嫉妬じゃないけれど(笑)。
男色 だってダウンタウンさんは“壊す笑い”じゃない。作り上げて壊す、もしくは壊してから作る。でも、山ちゃんはそうじゃなかったのよね。誰も壊してないというか、誰も損してなかったのよ。
山里 そこはあるとき気づいたんですよね。ボクのお笑いのセンスがバツグンだったり天才だったりしたら、他人の邪魔をしていいんですね。邪魔することでさらに面白くできる。でも、天才以外はそれをやっちゃいけないんだなって気づいたんですよ。
男色 ホントに誰も損してないのよね。誰かをクサしてそれを笑いにするわけじゃないじゃないですか。するとしたら自分自身に向けてるじゃない。
山里 だってクサして笑いを取る人は山ほどいるし。いま有吉(弘行)さんにその闘いを挑めつったら……。
男色 しかも有吉さんも愛がありますね。
山里 あります。そこは天才的な分析力から抽出された毒舌芸だから。「この人はこのポイントを突いたら面白い」「これを言ったあとに怒ってる姿がこの人を一番立たせられる」という正解しか出し続けてない。で、ボクはああいう天才を目指してはいけないって気付いたんですよ。
男色 それ、いつ気づいたの?
山里 これはね、昔の南海キャンディーズはもともと“両ボケ”でやってたんです。で、ホントに面白くない漫才をやって凄いすべり続けてて。やっぱり、根っからのボケのシズちゃんに対して、根っからのボケじゃないボクが張り合うと、ただ足を引っ張り合ってるだけにしかならなくて。
男色 無理が生じちゃう。
山里 ぜんぜん面白味がなかったんですよね。そこで「この子と組んだのはこの子と張り合おうとしたんじゃなくて、面白いこの子とつるんだら売れるなと思ったはずなのに」って考え直しました。この子は一人で笑いを成立できるから、ツッコミを工夫することで他人のウイニングランを取っちゃおうと思ったんですよ。
男色 ほうほう。
山里 だからあの子だけで笑いが生まれたあとの余白のところに、俺がさも面白いことを言ってるかのようにしたんです。それが2004年のM─1でやった漫才で。
男色 いやあ、あれってホントに衝撃だったわよ。もうこっちは射精する気なのに、まだ搾り取るみたいな感じでやってるじゃない。「嗚呼、たまらないなわ〜!」と思って。
山里 だって、いまさらボクが「なんでやねん!」的なツッコミで天下を取れるとは思わなかったんですよ。ダウンタウンさんやナインティナインさん、笑い飯さんとか天才たちがひしめく激戦区に飛び込むよりも、師匠クラスしかいない夫婦漫才という土俵なら闘えるんじゃないかって。でも、ただのかわいい女の子と組んでも絶対に話題にならないし。じゃあ“変な女”を探したときにあの子を見つけて。しかも女というよりも奇妙な生き物、トトロみたいな存在。トトロと漫才したら絶対ウケるなと思って。だから最初はシズちゃんに「ボーーーーーーーッ」と唸ってくれって言ってて。その唸り声を俺が解釈するんです。「ダメだよ、シズちゃん、そんなこと言っちゃ!」とか。
男色 面白いじゃない、それ!
山里 でも、尋常じゃないすべり方をしたんですよ。それでシズちゃんがあるとき「山ちゃん、ちょっといい? ……ワタシ、しゃべりたい」って言ってきて(笑)。
男色 ハッハッハッハッ。
山里 そこからなんですよ、あの子が漫才でしゃべるようになったのは。
男色 メチャクチャ良いかたちじゃない! いまちょっと聞いて思ったのは、漫才って練り上げていくものだと思うんだけど、プロレスってけっこう使い捨てだったりするんですよ。だから凄く興味があるの、漫才のネタ作りに。
山里 いま南海キャンディーズって、ほとんどネタもやってなくて作り方を忘れたぐらいなんですよ。
男色 早く思い出しなさいよっ!
山里 いや、じつは俺、物事を作りだすことができないってことにコンプレックスがあって。ゼロから何か面白いものもつくり上げることができないんです。たとえば笑い飯さんの昔の漫才だったら、遺跡を掘って土を喜ぶっていうくだりで「ええ土!」ってありますけど、ああいうボケってボクにはできないですよ。なんでそんなところを面白がるのかを論理的に説明できないから。
男色 (頷きながら)ああ、それは凄くよくわかるわ。ワタシもそうなのよ。
山里 理詰めの人間って小粒なボケしか出てこない。芸人をやってる人間が一番言われたい言葉に「三振かホームラン」ってあるじゃないですか。ボクは送りバントかセンター前ポテンヒットぐらいのボケばかりで。良くてツーベースみたいな。
男色 2番バッタータイプね。
山里 だからホームランを狙えないことが凄いコンプレックスで。そこはセンスじゃないですか。理由をちゃんと考えずに面白いことやる人ってすげえ憧れるんですよ。
男色 問答無用の面白さよね。
山里 そしてまたそれがウケたりとかすると本当に……。
男色 つらいわよねぇ。
山里 それはオードリーの若林さんと漫才やったときも思いましたね。若林さんもじつはスラッガータイプで。一緒に漫才をやったとき俺が台本を書いてると「山里さん、俺、ここで急に鬼になってケンカを売るんで止めてもらっていいですか」って言うんです。「どういうこと、鬼になるって!?」。
男色 無表情で何を言ってるんだって話よね。
山里 「いや、ここは鬼になったら変じゃない?」「それぐらいのほうが面白くないですか?」って。それでネタ合わせしたら凄く面白いっていう……。しかも、若林くんはウケたところはもう次のネタ合わせで使わないんですよ。ウケたネタは若林くんの中で殿堂入りするらしいんです。で、その殿堂入りを超えるネタを探し続けるという。
男色 ストイックはストイックよね。
山里 凄いストイックでかなりのスパルタ。そこで昔だったら嫉妬したり悩んだりしましたけど、「もういいかな……」と。その人たちのウイニングランを横取りする生き方でいこうって。
男色 そこに気づけるって凄いよね。要するに“勝ち馬”に乗るわけじゃない。
山里 そうそう。でも、こんな楽な方法はないんですよ! みんなやらないですよね、なんか。便乗するのが嫌いなのかな?
男色 そこはみんなプライドを気にするんじゃない?
山里 それは絶対にあると思うんですよね。なんか浅ましいじゃないですか。ボクは「気持ち悪い〜」とかみんながいい感じで下に見てるから、「こいつ、他人の手柄を取りにきてるな」っていう感じに思わないからバレてないっていうか。
男色 それはまあ戦略といえば戦略よね。
山里 ボクがもっとスマートなヤツだったら、ちょっと鼻につくと思うんですよ。みんなが言ったことを拾って広げるって、じつは凄くいやらしい行動だから。
男色 いま話を聞いて思ったけど、やっぱり山ちゃんはもうちょっと売れてもおかしくないでしょ。みんな過小評価しすぎよ。
山里 いやいや、評価が高くなったらなったでハードルが上がるだけだから。それならディーノさんの凄さも伝わってないですよ。『スタモン』のとき凄いなと思ったのが「今日は闘いに来た」っていう気持ちを表現するのって、プロレスラー以上の人はいないんだなってことですよ。
男色 ああ、そこは無意識ね、たぶん。意識してやってないわね。
山里 ひとつの空間を自分の色に染めることができる。ここで歓喜したらいい、逃げたらいい、驚いたらいい、笑ったらいいっていうルール説明を歩いてくるだけでできる。そこは芸人やアイドル以上ですよね、プロレスラーって。歩いてステージに上がるまでのあいだにその日のルールを全部説明できる人なんだって。
男色 そこまで褒められるとありがたいわねぇ。
山里 なんか褒め合いみたいになって気持ち悪くなって申し訳ないんですけども(笑)。たとえばボクは「そこ、いま気持ち悪いって言わない!」ということで“コイツは気持ち悪い男”として意識させるわけですよ。
男色 そうやってファンに「気持ち悪い!!」と言わせるわけね。
山里 そう。「ちょっとブーイングやめて!」って言うことで「この人にはブーイングしていいんだ」ってなる。ボクらはそうやって言葉で説明するけど、ディーノさんは出てきただけで、お客さんばかりか横並びの演者にも自分の役割を気づかせるじゃないですか。そのあとに『マッスル』の試合を観て、こんなことを全員でやってるのがプロレスなんだと。だからプロレスはもっともっと評価されないとおかしいですよ。
後編へつづく…
■『Dropkick vol.8』絶賛発売中
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