ボクシング漫画『はじめの一歩』の作者として知られる森川ジョージ氏がオーナーを務めるボクシングジム「JBスポーツ」。そのジムのトレーナーを務め、数多くのMMAファイターも指導してきた山田武士氏に新型コロナウイルスで揺れ動くボクシング界の現状について電話取材でうかがった。山田氏は「今年のボクシング新人王戦は諦めたほうがいい」と言い切ったうえで「井上尚弥や村田諒太のビッグマッチからやるべきだ」と説く。そこにはボクシングと世間の関係性に大きな理由があった。格闘技と社会を考えるインタビュー。
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――JBスポーツは休館してどれくらい経つんですか?
――早い時期に決断されたんですね。ボクシング界の動きも早かったですよね。
山田 ウチが2月27日に後楽園ホールで『はじめの一歩30周年記念フェザー級トーナメント』をやったんですよ。その試合前日、計量のときに安倍首相が全国の小・中学校の休校を要請したんですよね。そんなコロナ情勢を受けて当日券の発売は中止にして、ボクシングの3月の興行自体もすべて中止になったんです。
山田 このスピード感はそういうことですよね。で、4月5日の後楽園ホールで東日本新人王予選を無観客興行としてやる……という方向だったんですよ。そこにウチから1人だけ出る予定があって練習してたんですけど、新型コロナの動きってガッと変わるじゃないですか。
――日によって状況がめまぐるしく変わってますね。
山田 無観客だからいいという感じではなくなって。やっぱり無観客といっても人は集まるんですよね。関係者含めて300人ぐらいは集まるっていう話で。新人王の試合は20試合あって、1人の選手に4人まで会場に入れるので選手とセコンドだけで200人。関係者やレフェリー、ドクター、カメラマンなんかを入れたら300人近くにはなりますよね。それだと小さい箱のライブハウスより入りますからね。
山田 ボクはSNSで「絶対にやめたほうがいい」って連呼してて(苦笑)。結局、大会直前の3月30日になって延期になったんです。
――いまのところ興行再開の見通しは立ってないですよね。ボクシングジムの運営はどうなってるんですか?
山田 コミッションからの伝達で一般会員の練習は自粛してくれと。プロは新型コロナに伝染らないのか……って話なんですけどね。一般会員も普通に練習させているところは、じつはあるんですよ。ジムを閉めちゃうと会費を戻さないといけないという理由も……。
――休館しているJBスポーツは会費を戻してるんですか?
山田 はい。全額返金してますね。オーナーの森川(ジョージ)のほうから「こういうときはドッシリと構えて何もするな。 いまやるべきではない」と。
山田 だってボクシングジムって「3密」どころじゃないですよね。相手の汗が飛んできて目に入りますし。実際に愛知のボクシングジムがクラスターになってしまって4~5人入院しちゃったので。ただ、どうしても経営上の問題になるので各ジムの判断に委ねられますよね。大手のジムは閉めてます。
――大手だと信用問題に関わってくるし、体力的にはまだなんとかなる。
山田 そこは体力第一ですね。でも、このまま自粛が続けば潰れてしまうジムは出てくるんでしょうね……。それで焦って営業しているジムがあるということだと思うんですけど。
――でも、仮に営業したところで以前のように会員さんが……。
山田 (さえぎって)無理! 無理ですよ。もう元には戻らないから、まったく違うことを考えないと難しいんじゃないかって。だってコロナはしばらくは収束しないじゃないですか。
―― ワクチンができるまで1年はかかりますもんね。
山田 ボクシング界も一生懸命コロナ対策はしてるんですけど……今年の新人王はやめたほうがいいと思いますけどね。だってオリンピックをやらないんですよ。それなのに新人王をやってどうするんだって言う。
――ボクシング側の山田さんからすると、MMAやキックの姿勢はどう見えますか?
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