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レスリングエリートをMMAファイターに育てる方法■宮田和幸インタビュー
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レスリングエリートをMMAファイターに育てる方法■宮田和幸インタビュー

2021-03-02 17:30
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他ジャンルからの転向が相次ぐ現在のMMAシーン。どうやって強くなればいいのか、どうやって育てればいいのか――選手や指導者、2つの立場をもっとも理解しているのは、シドニー五輪レスリング代表からMMAにチャレンジし、現在BRAVE GYMで数多くのファイターを育成する宮田和幸氏ではないだろうか。1万字インタビューで選手育成の秘訣を伺った(聞き手/松下ミワ)


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――
「レスリングのトップ選手が、MMAに適応できるまでにはどのくらいかかるのか?」というテーマでお話をおうかがいしたいのですが、宮田さんはよく「レスリング選手を最速で強くさせられる自信がある」というツイートをされていますよね?

宮田 ああ、自信ありますよ(キッパリ)。

――
大晦日にはレスリング銀メダリストの太田忍選手がMMAデビューされましたが、宮田さんから見て、ズバリ、MMA適応に必要な期間というのはどのくらいなんでしょう?

宮田
 まあ、3年ぐらいだと思います。

――
3年はかかるんですね。

宮田
 ボクもそうでしたけど、MMAのトップどころとやるのには、きっとそのぐらいかかるのかなと思います。ただ、もしかしたらボクが転向した当時よりも、いまのほうが時間が必要かもしれないですね。

――それはMMAという競技がどんどん成熟しているからという?

宮田 そうですね。たとえばPRIDE時代だと、ボクの先輩でもある藤田和之さんが袈裟固めで勝ったりしていましたけど、レスリング出身者は倒しちゃえば勝てるみたいな部分もあったと思うんですよ。でも、近年はみんな寝技がうまいから倒しただけでは勝てないし、ケージレスリングとか言っても、逆にレスリングだと壁を使う場面なんてないんでね。むしろ、みんな壁で倒されないように防御するのもうまいし、昔と比べても技術が格段に向上しているので。

――
トップ選手なら、そういう対処はあたりまえにできる時代ですね。

宮田
 指導者のレベルも上がっていますからね。ボクもそうですけど、選手としてガッチリやってきた人が指導者になっていているので。やっぱり3年はかかりますね。ボク自身がそうだったので。

――
太田選手のMMAデビュー戦は宮田さんの目から見ていかがでしたか?

宮田 なんか、思ったとおりというか……。ああいう負け方か、打撃で負けちゃうだろうなとは思ってました。でも、太田選手からすると所英男選手は最悪な相手ですよ。だって、寝ても立っても負けるわけだから。

――
実際にそうでしたねえ。

宮田
 所くんって、レスリング以外は全部一流ですよ。打撃だって、ボクシングが凄くうまいし。まあ、太田選手の試合も1回目の所英男戦はアリだと思います。でも、2回目もまたああいう感じだと潰れちゃうから、太田選手の2回目に関してはRIZINはちゃんとやんなきゃダメですね。

――
そこは大事にしないと。

宮田
 いまキツいのは、コロナの関係で日本人しか呼べないから、だいたいどのくらいの強さかというのがわかっちゃうという。昔、よくわからない外国人ファイターを呼んでたりしてましたけど、やっぱり何かしら特別枠みたいな感じでやって育ててあげたほうがいいと思います。レスリング出身者って最初はパンチなんか全然見えないですからね。

――
そういうもんですか?

宮田
 最初のうちはまったく見えない。ボクもはじめの頃は全部パンチをもらうぐらいの感じだったし、やっぱり打撃は慣れなので。ボクは昔パチンコのスロットをよくやってた時期があったんですけども……あれ、やり込んでいる人って、じつは全部見えるんですよ。つまりビタ押しできるんです。目押しってヤツですね。

――
それは動体視力で?

宮田
 そうですね。素人に言わせると「凄い!」と言うんですけど、あれは誰でもできるんです。だから「7」がきたらみんなビタ押しするわけ。それと一緒で、打撃も……まあ、スロットよりは難しいですけどね(笑)。

――
ハハハハハ!

宮田
 格闘技もパンチが来る感じがわかるようになるんです。でも、最初は絶対にわからないから、そういうときに試合に出ちゃダメなんですよ。

――
じつは、今回「太田選手が勝つ」という選手や関係者の予想がけっこうあったので、「そんなに完成されてるんだ」と思っていたんですよね。

宮田
 ああ、そうですか。じつは彼、ウチのジムにも呼んだことがあるんですよ。彼はレスリングでも特殊なスタイルで、ガブリ返しというのが得意技なんですけど、ボクの知らない技を持っているのでボクも聞いてみたいなと思って。だから、面識はなかったんですけど、連絡を取ってウチにセミナーというかたちで一度来てもらったんですよね。

――
そういう機会があったんですね。

宮田
 「太田選手を強くしてくれ」と頼まれたこともあったんですけど、そのときはもうべつのジムで練習することが決まっちゃってたので。そのときにひとつだけアドバイスしたんですけど、それは「デビュー戦でグラップラーとはやっちゃダメだよ」と。

――うわ……まさに所選手はグラップラーもグラップラーで。

宮田
 レスラーの得意技って倒すことじゃないですか。でも、テイクダウンしたらそこからは相手の土俵になっちゃいますから「なるべくなら対戦相手はストライカーのほうがいいよ」と言いました。

――
ストライカーなら、グラップラーより勝てる可能性は大きいから。

宮田
 立ちの場面で一撃もらったところで、ちゃんと前を向いて組み付けば投げられるし。寝技がそんなに強くない相手だったら、パウンドを打ったりできるから。ただ、寝技が得意な選手だったら、上から殴るのも難しいんですよね。下から攻められるのを防御するのに精一杯だから、寝技でも勝ってないと殴れない。そういうのができない相手とやったほうがいいよと言いましたね。

――
なんか聞けば聞くほど所選手って最悪の相手ですね(苦笑)。

宮田
 だからこのカードが決まったときは何も言えなかったです(苦笑)。まあ、もちろんお互いに注目度も上がるし、所選手は試合も面白いし、興行的には面白いのかなとは思いましたけど。ただ、十中八九負けるだろうし、勝つとしたらバスターしかないという印象でしたかね。

――叩きつけてダメージを与えるという。

宮田
 ボク、デビュー戦がホイラー・グレイシーだったんですけど……。

――
あらためて聞くと、そのカードもかなりキツいマッチメークで(笑)。

宮田
 そのとき、バスターで1回叩きつけたんですけど、勝つ方法としてはそれしかないなと。そういう感じでしたから。

――
宮田さんが、そういうトップレスラーをMMAファイターとして育てる際、どういうことをポイントとして指導されているんですか?

宮田
 本当に特別扱いしないで、イチから育てます。そして、レスリングとフィジカルトレーニングはやらせないですね。レスリングをやってる人のフィジカルは最強クラスですから。それ以上に習うことがいっぱいあるし、本当に打撃と寝技ですよ。

――
そこに集中するわけですね。

宮田
 まず打撃ですけど、だいたい柔道やレスリング出身の選手って横の動きが強いんですよ。相手を投げる力があるから。でも、まっすぐ伸ばす前後の動きはあんまりないので、じつはストレート系のパンチが得意じゃないはずなんですよね。つまり、全員フック系なんです。

――
たしかに、言われてみれば!

宮田
 ボクもそうなんですけど、KID選手だって打撃はフックでしょ? まあ、彼は当て感が特別なので、実際は相手を見ないで打っているんですけどね(笑)。

――
それで当てられていたなんて逆に凄い(笑)。

宮田
 だから、KID選手のマネはしないほうがいいです(笑)。彼は、感覚で「このへんに打てば当たるな」というのがわかっている人だから。強い選手って、たとえば朝倉兄弟みたいに最後まで打撃を見ているじゃないですか。だから、KID選手は才能の部分もあるんですよね。

――
でも、レスリング選手はフック系が強いなんて、そういう特性があるのは初めて知りました。

宮田
 逆に、野球をやっている人はストレートが伸びますけどね。

――
ああ、それは前後の動きのほうが多いから!

宮田
 だから、格闘技やっている人って球技が苦手な人が多いのは、そういう理由なんだろうな、と。ボクは柔道やレスリングをやってきた人で「ストレート得意そうだな」というのは、あんまり思いつかないですね。……で、ボクはなるべく出稽古に行かないように教えてます。

――
それは、どういう理由からなんでしょう?

宮田
 とくに打撃はそうなんですけど、人間って怖いと目をつぶっちゃうじゃないですか。パッと打たれたらだいたい目をつぶっちゃう。つまり、強いパンチをもらうと目をつぶるクセがついちゃうんですよね。

――
たしかに、パンチをちゃんと見るって難しいです。

宮田
 で、ボクは師匠がいなかったので出稽古ばっかり行ってたんですけど、まだ弱いので、出稽古に行くとパンチをもらっちゃうじゃないですか。そうすると、もらったときに目をつぶったり、顔を背けちゃうクセがついちゃうんですよね。そうならないよう、ウチは当てないスパーリングをずっとやらせるんです。

――
つまり、寸止めということですか?

宮田
 そう、寸止め。あとは、ちょっと当てるぐらい。出稽古に行っちゃうとどうしても熱くなって、ドンと当てられたらドンと当て返すというか。それは暗黙の了解でみんなそうなんですけど、自分のジムではそれがないし、100パーセント試合することがない相手と練習するから。だから、そうやって寸止めで練習していると、ずっとパンチを見てられるんですよ。

――
つまり、それがパチスロで言うところのビタ押しの訓練(笑)。

宮田
 まあ、ビタ押しよりも全然難しいんだけど(笑)。そんな感じで「とりあえずパンチを見とけ」と。そうするとだんだん見えてくるようになるし、時が来たらガチンコもやりますしね。だから、打撃はけっこう最初が肝心なんですよ。

――
いや、面白いですね。それ、宮田さんが気づいたんですか?

宮田
 現役時代、出稽古に行ったときにボクサーの人にも教えてもらったし、ボク自身は完全につぶるタイプになっちゃったんでねえ。

――
最初にたくさん出稽古しちゃったから……。

宮田
 それに、ボクの場合はもっとヒドくて、ボクはホイラー戦の次に武田幸三さんとK-1ルールで試合をやってますから。

――
あのときはKIDさんが欠場となって大会前日に急遽出ることになって。

宮田
 そうなんですよ。それまで、ガチスパーやったことなかったのに(苦笑)。まあ、そういうので目をつぶるようになっちゃって。だから、失敗例をいまに活かしてますね。

――
なるほど(笑)。一方の、寝技の練習はいかがでしょう?

宮田
 寝技はね、けっこうレスラーって下の状態から練習する人っていないんですよ。レスリング出身者で下からの三角絞めとかをやるのってボクぐらいで、あんまりみんなやらないんですよね。でも、下から覚えたほうがじつは防御とかもわかるんですけどね。

――
それは、レスリング出身者が背中をつけることに抵抗があるからなんですかね?

宮田
 というより「どうせ下にならないから」という感じなのかな? だけど、それだけだと行き詰まっちゃうし、伸びしろがなくなっちゃうので満遍なくやったほうがいいですね。

――
宮田さんとしては、下から攻撃する人の気持ちがわからないと、上から攻撃したり対処したりできないからという。

宮田
 そのとおりです。あと、ボクは格闘技を始めてすぐにヒジをケガしちゃったんで、どうしても寝技のほうが練習量が多くなってしまって。本当は打撃をやりたかったけど、そういう理由で寝技の練習が多くなりましたけど、いま教える側としてはそれでよかったなと思いますかね。
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――
ちなみに、レスリングでは極めは反則ですよね?

宮田
 レスリングは相手の両肩をつける競技なので、関節技もないし、相手をコントロールするだけですね。

――
となると、極め技を覚えたり、対処法というのもやっぱり時間はかかるということですか。

宮田
 まあ、知らない技というのは絶対に最初は極められちゃうのでね。ボクは関節技はできるほうだから、いまだにスパーリングをやりながら技を掛けてたりして。それでみんなが覚えていくという感じですかね。

――
そうやって打撃にも寝技にも慣れていくのに、3年かかるということなんですね。

宮田
 ただ、ウチの武田光司は、たぶん入って2年でDEEPのライト級チャンピオンになったのかな? 彼の特性はスタミナなんですよ。あいつは15分間フルパワーで動けるという凄い才能があるんで。ほかはべつに普通なんですけど、スタミナだけ本は当にヤバイから最後まで戦える。そういう強みもあったから、いまのところ彼が最短なんじゃないかな?

――
選手の特性も見て、どう育てるかも大切である、と。先ほど「失敗から学んで教えている」という話がありましたが、ほかに失敗が活きていることってありますか?

宮田
 それで言うと、一番はやっぱりマッチメークですよ。それはボクがやってあげないといけないんですけど、もともとボクは総合格闘技に「試合を断る」という選択肢があると知らなかったんですよね。
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