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多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー。今回のテーマは朝倉未来、平良達郎はUFCと契約できるのかです!!(この記事はニコ生配信されたものを編集したものです)
――今月のテーマは、もう毎回のように聞いていて、シュウさんも喋り疲れていると思われる話題なんですが、ズバリ「日本人ファイターとUFCとの契約について」です。
――今月のテーマは、もう毎回のように聞いていて、シュウさんも喋り疲れていると思われる話題なんですが、ズバリ「日本人ファイターとUFCとの契約について」です。
シュウ また話題になってますね(笑)。
――最近では、朝倉未来選手、平良達郎選手、あとは中井りん選手……まあ、中井選手は毎度恒例なんですけども(苦笑)。
シュウ その3人に関してはいろいろと状況を知っているんで、今日は面白い話ができると思いますよ。
――ぜひお願いします!
シュウ 誤解がないようにしたいんですが、どの選手にも全然可能性はあります。ただ、選手によって契約できる条件は違ってきます。
――いまからシュウさんが解説するのは「この選手なら、この条件をクリアすれば契約できるんじゃないか」ということで。「やっぱりUFCは無理だ!」とか「すぐに行くべき!」とか慌てずにお読みください(笑)。
シュウ まず前提として、いまのUFCと新規契約するのは凄く難しいです。というのも、現状としてはTUF(オーディション形式のリアリティ番組)、Lookin' for a Fight(ダナ・ホワイトが有望な新人を発掘する番組)、コンテンダーズ(ワンマッチ形式の契約獲得企画)の3つのルートがあるじゃないですか。
――中でもコンテンダーズは、他のメジャー団体よりレベルが高いんじゃいかなと囁かれるくらいの修羅の国の入り口で。
シュウ この3つから入ってくる選手がどうしても優先されちゃうので、それを乗り越えての新規契約というのはやっぱりハードルが高くなっています。
――つまり、わざわざ他の国から青田買いする必要がない状況ということですよね。
シュウ ただ、UFCって金はあるからビザの取得とかは簡単ですし、そこらへんの細かいお金のことは気にしないんで、イギリスだろうがアジアだろうが「これだ!」という選手は取りますね。ぶっちゃけて言えば、コンテンダーズに出て全敗した中国人選手たちも、結局UFC PI上海があるからということで“政治的意図”でくくられていますから。
――そういう選手を取って失敗したからといって、UFCとしては痛くも痒くもない。
シュウ だから、皆さんいつも「日本人要員」とか「日本市場に力を入れているか」とか、そういう意見を言いがちですけど、ここで朝倉未来選手の話をしますが、UFCは確実なものにしか手を出さないんですよね。つまり「ボクはYouTubeの登録者が200万人います」「ボクと契約すればこんだけのPPVが見込めます」という営業には見向きもしないんです。
――あっ、そうなんですか。
シュウ 逆に、現時点でチャンピオンでもない朝倉未来選手がUFCに行くというのは、裏口入学みたいなもんなんだけど、それを実現させるには、それこそフジテレビやABEMAを口説いて「ボクを入れれば彼らが1億円出しますよ」とか、そういう取引材料を持っていかないとダメなんですよね。なぜなら、UFCは確実なものにしか食いつかないから。で、過去にそれをやった選手が1人だけいるんですけど、それが五味隆典選手です。五味選手は、過去にテレビ東京の中継を持って行ったじゃないですか。
――それってほとんどのファンに知られていない情報なんですけどもね(苦笑)。当時UFCの日本招聘に尽力していた某大手代理店が頑張ったこともあって……。
シュウ でも、もう言っちゃっていいと思うんですよ。で、ボクは五味選手の契約内容も知ってますけど、だからといって目ん玉飛び出るような契約ではなかったんですよね。話を戻すと「チャンピオンへの可能性がある選手とどんどん契約していく」というのがUFCのフィロソフィーですから、朝倉未来選手は競技者としてはどうしてもそのレベルには達していないですよね。
――そこは、斎藤裕選手やクレベル・コイケ選手にも負けてしまっているから。
シュウ そうすると、UFCはその2人と先に契約するのが当然であって、その前に彼が契約するというのはあり得ないわけですよ。ただ、それを覆すのは彼の人気や認知度なんですけども……。それも、ボクの大好きな永ちゃん(矢沢永吉)が、イギリスのウェンブリースタジアムでライブに参加したときのエピソードなんですけど「Hey Jude」のリハーサルで10分ぐらいと初めは言われたのに何十分も待たされたんですよ。「やっぱり、あれだね、悔しいけど」と前置きして、そのときにハッキリ言ってます。「世界で有名にならないとダメね、絶対に」。そして人差し指と親指で、何かをこねくり回してポイッと捨てるような仕草をしながら「日本なんかで有名になっても所詮こんなもんですよ」と。
――恒例の永ちゃん話が出ました!
シュウ やっぱり世界で有名にならなくちゃダメ。スポーツやアートの世界は世界市場なんですよ。そう考えたときに、日本の200万人登録者なんて、鼻クソみたいなもんなんですよ。
――き、厳しい! でも、それが現実なんですか……。
シュウ そういう感覚を持たなきゃいけないんです。「オレ、YouTube登録者が200万人いるから大丈夫」という考え方でいたら負けますよ。それは、ビジネス交渉にのぞむ姿勢としても、競技者としても。UFCとの交渉の場に立つんだったら、それ相応の取引を持ってこいということなんです。ただ、1億円とか2億円とかの取引を持って行っても、ボクはUFCは動かないんじゃないかと思いますけどね。
だってローガンとジェイク・ポールも、初めはUFCに出てPPV収益を稼ぎたかったわけじゃないですか。けど、いきなりではダメだからボクシングやってるんですよね。それで階級が下とはいえ、なまじ元UFCファイターに勝っちゃってるから知名度が上がって、一部では「いつかUFCに出るでしょ」と言われてるんですけど、TUFとかコンテンダーズならありだとわたしも思うんですよね。
――そうか、あのポール兄弟ですらUFCは食いつかないわけですね。
シュウ いまのポール兄弟の商品価値でもUFCはすぐに食いつかない。そんなローガン・ポールのYouTubeの登録者数は2300万人を越えてますから。ジェイクも2000万人越えてますよね。
――桁が違う。そのうえで彼らは元UFCファイターやメイウェザーとやってますもんね。
シュウ UFCで動いている金って、もっと凄いですから。それプラス、試合というのは2人いないと成立しないわけで。じゃあ、相手を誰にするのかという話になってくるわけですが、世界のフェザー級ってめちゃめちゃ層が厚いですからね。そうなってくると、UFCとしては競技者としてマッチメイクできる選手ではなく、ビジネスディールの中で試合を組まなくちゃいけないわけです。そうなると、ボクら代理人がやっているマッチメーカー相手の営業とは違った営業になるわけですから。
――おそらく、コレクター体質だったロレンゾ・フェティータのオーナー時代だったら、PRIDEに参戦していたようなレジェンドは全員引っ張ってくるというモードでしたけど。
シュウ 本当にそう。彼は真のMMAファンでしたからね。それに五味選手はPRIDEのチャンピオンでしたから。これ、もうひとつの重要なポイントだと思います。
――山本KID選手もレジェンドだから契約できたところもあって、ファイトマネーは低かったと聞きますよね。
シュウ 低かった。五味選手のほうが4~5倍ぐらい高かったですね。
――まだ残っていたFEGとの契約は未払い分でチャラにして、世界最高峰のUFCに挑むというKIDらしいやり方で。五味選手との契約もロレンゾがいたときでした。ただ、エンデバー体制になってから、特別な契約をまとめた日本人ファイターはいないということですね。
――まだ残っていたFEGとの契約は未払い分でチャラにして、世界最高峰のUFCに挑むというKIDらしいやり方で。五味選手との契約もロレンゾがいたときでした。ただ、エンデバー体制になってから、特別な契約をまとめた日本人ファイターはいないということですね。
シュウ 皆さん、忘れているかもしれないですけど、UFCの親会社であるエンデバーはパブリックカンパニーですからね。パブリックカンパニーは、そんなにムチャなことできないですよ。やっぱり、ステイクフォルダー、つまり株主さんたちのために働いているようなものですから。だから、「UFCとベラトールの対抗戦を!」と言いますけど、バイアコム傘下の団体と一緒にパブリックカンパニーでそれをやるのは本当に難しいです。夢を壊すようなことを言って申し訳ないですけど(苦笑)。
――古いプロレスファン向けにいえば、テレビ朝日と日本テレビの関係から昭和の新日本と全日本が対抗戦をやるわけがないという(笑)。
シュウ そう考えると、朝倉未来選手が日本だけのスターという理由で、UFCが引っ張ってくるのは難しいと思います。ちなみに、ボクらみたいなマネジメントはマッチメーカーにアピールするわけですけど、いまだから言える話として、前にUFCマッチメーカーのショーン・シェルビーが今成正和選手を取ろうとしていたことがあったんですよ。そのときに彼が一番心配したのは、「今成選手を取ると、ほかのマネジメントからギャンギャン言われるから、そのときに言い訳がなあ……」と。
――今成選手は面白い選手ですけど、戦績がずば抜けていわけではなかったですね。
シュウ それは、もちろんボクも言いますよ。「この選手を取って、なんでウチのこの選手は取らないんだ!」って。なので、朝倉未来選手を取ったら同じことが起こるでしょうね。だから、その言い訳できるものを彼がUFCに持っていけるかということなんです。
――ちょっと話がズレますけど、つい先日GLORY2階級制覇のアレックス・ペレイラがUFCに出たじゃないですか。MMAではそこまで実績がないですから、特別な契約だったんですよね。
シュウ 絶対にそうだし、あれは完全にバーターですよね。
――最近だとニック・ディアスと同じジムのよくわからない人が出たり。たまにそういうのはありますよね。
シュウ だから、ニック・ディアスぐらいのパワーがあるなら……ってことですよ。だって、彼が動くことによってそれなりのPPVが推測できるじゃないですか。で、まあ日本人選手で唯一政治的なプッシュで入って、本来ならば複数回契約なんだけど、当時のマッチメーカーのジョー・シルバからしたら、べつに取りたい選手じゃないから1試合で、と契約した選手が1人いるんですよね。
――その選手とは?
シュウ 佐々木有生選手です。これ、覚えてます? PRIDEがUFCに買収される少し前の話なんですけど、もしかしたらPRIDEと対抗戦をやるかもしれないという機運が高まった時です。これ日本ではほとんど報道されませんでしたけど、高田延彦さんがわざわざUFCのPPVに出て、オクタゴンサイドでカメラに向かって「桜庭と藤田をオクタゴンに上がらせる」と生中継で宣言したんですよ。当時PPV中継見ていて興奮しました。あのときのバーターで突っ込まれたのが佐々木有生選手です。
――はあ、そんなことがあったんですか。
シュウ そういうこともあった時代ですけど、いまやパブリックカンパニーの傘下ですから。ますます難しいですね。
――それこそ、朝倉未来選手がアジア規模でスーパースターになったら話は変わってくるのかもしれないですか?
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