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鬼越トマホーク・坂井さんが「武藤vs蝶野から朝倉未来vs平本蓮」までを15000字で語ります!(聞き手/ジャン斉藤)


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坂井 ジャンさんのことはずっと注目しておりました。

――
あっ、ホントですか。

坂井
 ジャンさんも『紙のプロレス』ですよね。『紙プロ』の皆さんは言わなくていいことをあえて言うじゃないですか(笑)。そこは共感を抱いてますよ。

――
ハハハハハハハ! たしかにわざわざ地雷を踏みに行くことが多いですね。

坂井
 変な言い方ですけど、『紙プロ』の残党の方はクセの強い方が多いですよね(笑)。吉田豪さんや八木(賢太郎)さんとか『紙プロ』に関わってた方と最近ご一緒するんですけど。

――
「非番」でおなじみの八木さんとも。

坂井
 八木さんとはプロレス格闘技関係じゃないゴシップ誌の連載で。そのときに山口(日昇)さんとかジャンさんのお話もして。山口さんはほぼムショに行っちゃったような狂った人生で……という話を聞いて。

――
ボクは山口さんと入社早々殴り合い寸前になったりしたので、狂った人間が集まっていた編集部だったことは間違いないです!

坂井
 中学や高校ぐらいのときに、ニヤニヤしながら読んでいた『紙プロ』の方々と一緒に仕事すると楽しいし、意外とボクの計画どおりだなって。こういう話をしたくて芸能界に入ったので。誰が聞いてるかわかんないところで誰かの悪口を言って、それに共感してくれる人がいるのが一番楽しい(笑)。

――「誰が聞いてるかわかんないところ」がポイントですね(笑)。坂井さんはMMAにめちゃくちゃ詳しいですよね。

坂井
 ありがとうございます。最初はプロレスからなんですよ。

――
プロレスも思い入れを持って語れる。ボクは90年代から見ているファンの変遷を辿るのが好きだったりするんですけど、MMAとプロレスを両方チェックしている人は少なくなってるんですよね。

坂井
 なかなかいないですね。恥ずかしいから隠しているんですけど、ボクがプロレスをちゃんと見始めたのは蝶野正洋vs大仁田厚からなんですよ(笑)。

――
べつに恥ずかしくないですよ!(笑)。

坂井
 中学生の多感な時期だったんですけど、IWGPチャンピオンは武藤さんだったのかな。nWoが分裂する手前ぐらい。武藤さんの華やかさと蝶野さんのかっこよさに惹かれて。

――
あの当時のプロレスファンは蝶野さんのファッションをみんな真似をしてたから、会場に“ニセ蝶野”がウロウロしてましたね。

坂井
 蝶野さんはハマーに乗って入場したり、中学生の目にはめちゃくちゃカッコよかったんですよねぇ。

――それ以前はなんとなくプロレスを見てたんですか?

坂井
 なんとなく見ていたというか、ボクらの世代はゲームからプロレスに入ったところはあるんです。『闘魂烈伝』というゲームがあって。

――
“ゲームとっかかり説”はボクも昔から唱えてるんですよ。90年代のプロレスブームって、ゲームのきっかけがすごく強いと。『ファイヤープロレスリング』とか。

坂井
 『ファイプロ』と『闘魂烈伝』ですよね。プロレスの知識もなくゲームだけはやっていて。ゲームに登場するキャラクターの名前と実際のレスラーがごっちゃになってたんですよね。たとえば猪木さんだと「グレート猪狩」とか本人をイメージする名前が多かったじゃないですか。実際にそういうレスラーがいると思ってましたからね。

――
ボクもUWFの強さを知ったのは『ファイヤープロレスリング』からなんですよ。前田日明的なキャラクターの大車輪キックがとにかく強いんですけど、リアルの前田日明はそんなに大車輪キックはやらないんですよね(笑)。

坂井
 たしかに(笑)。ボクは田舎育ちだったんですけど、人口も少ないからボクみたいに沼にはまっていく人は少なくて。そこまで笑いの知識もなかったんですけど、お笑いを目指したのは『アメトーーク!』でプロレスや格闘技を語っている芸人がすごく楽しそうだなと思ってて。

――
プロレスは芸人の必修科目的なところがありますよね。

坂井
 蝶野vs大仁田から見はじめて、『週プロ』や『週刊ゴング』も読んでいたんですけど、徐々に物足りなくなって『紙のプロレス』まで堕ちた人間というか。

――中学や高校で『紙プロ』に染まるのはちょっと……。

坂井
 浮きますよねぇ。高校に入ると2ちゃんねるのスレに「佐々木健介の試合がつまらない」って書き込んでましたから。荒らしですよ(笑)。

――
当時の健介さんは2ちゃんのアイドルでしたもんね。

坂井
 でも実際健介さんに会ったら意外と優しいというか。……他のプロレスラーの方の健介さんの話は、ボクは右から左に受け流してますけど(笑)。

――
ハハハハハハ! そうしてプロレスファンとして先鋭化していったわけですね。

坂井
 ボクには友達もいなかったし、それが影響したかもしれないです。どんどん逆張り体質になるというか、いまの芸風もそうなんですけど、なんか逆にいっちゃうというか。そのうち橋本真也vs小川直也にショックを受けて、格闘技のほうに徐々に誘導されていくんですけど。

――
通称1・4事変、小川直也が橋本真也を潰したシュートマッチですね。

坂井
 あの抗争のときは橋本さんを応援してましたねぇ。小川さんはもう本当に大魔王みたいなイメージが怖くて、本当に負けてほしいと思ってました。

――
でも、そこで小川派に付かなかったのはプロレスファンの良心が残ってたんですかね。『紙プロ』の影響を受けてると、大魔王・小川直也にベッドしがちですけど。

坂井
 あの橋本と小川の抗争のあとは徐々に新日自体から離れていっちゃったというか。結局、猪木さんや小川直也がやろうとしたことには、ハマっていくわけですよね。PRIDEのPPVも買うようになっちゃって。家族とは仲が悪かったんですけど、家には金はあったんで勝手に注文して。

――
充実したPRIDEライフというか。

坂井
 面白かったですねぇ。学校もまったく楽しくなくて、芸人やろうとも思ってなくて。2~3ヵ月に1回のPRIDEや、のちにWOWOWで始まるUFCを楽しみにしてました。その頃になるとプロレスはちょっと嫌いになってましたよね。「もういいや、プロレスは」って。

――
あのへんでいったんプロレスに興味なくなったファンは多いんですよね。

坂井
 ボクも興味なくなりました、完全に。あとで戻ってくるんですけど……。

――
そんな坂井さんからすると、今回の武藤敬司vs蝶野正洋はいろいろ思うところがあったんじゃないですか。

坂井
 もちろんありました。めちゃくちゃ感動的でしたよね。ただ、ジャンさんは「90年代の武藤vs蝶野はつまらなかった」ってけっこう触れづらいところいくじゃないですか(笑)。

――
逆説的な言い方なんですけど(笑)。誤解しないでほしいのはあの時代性の中では武藤vs蝶野は刺激的ではなかったというか。

坂井
 わかります。ジャンさんがそう言ってくれるのはありがたいというか、ボクは「武藤vs蝶野を語ってください」と頼まれたら、いくらでも褒めますもん。今回の武藤vs蝶野の引退試合で、涙を流して感動したのは事実なんです。

――
ここ30年近くのプロレスの歴史がオーバーラップするし、プロレスファンとしての自分を見つめ直すことになりますね。

坂井
 でも、心の中ではジャンさんと同じなんですよ。たしかにボクがプロレスを見始めた頃って、武藤さんや蝶野さんのことは好きだったけど、武藤vs蝶野にはそんなにハマってなかったんですよねぇ。

――
武藤vs蝶野は91年の第1回G1クライマックス決勝のインパクトがあまりにも強かったこともありましたね。

坂井
 あのG1決勝もグチャグチャだったから面白いっていうか、「蝶野、勝つんかい!」みたいな。

――
伏兵・蝶野が勝った衝撃と、闘魂三銃士時代到来のワクワク感ですよね。90年代中盤以降の武藤vs蝶野はたしかハイクオリティなんですけど、「これが見たかった!」という熱狂カードではなくて。

坂井
 それは小川vs橋本のあの刺激にやられてしまったところもありますよ。小川直也の「新日本プロレスファンの皆さん、目を覚ましてください!!」というマイクでまさに目を覚ましてしまって。

――
1・4事変のときの小川直也のマイクですね。

坂井
 最初は「負けてくれ!」って呪っていた小川直也に引き込まれていって、そこからPRIDEで藤田和之や桜庭和志にも熱狂していきましたからね。日本の総合格闘技はある意味、プロレスを食い物にしたからいまの地位がありますよ。

――
小川vs橋本はプロレスの試合なんですけど、結果的に総合格闘技人気の起爆剤になりましたね。

坂井
 でも、最初は小川vs橋本の意味をまだわかってなかったんです。ボクが見始めた蝶野vs大仁田の半年ぐらい前に小川vs橋本があったんですけど、TEAM 2000とか見つつ、橋本のことは『闘魂烈伝』とかで知ってるんですけど「あの太ってる奴だろ」「柔道の小川直也と何があったんだ?」ってイマイチ把握できてなくて。当時はYouTubeもなかったので簡単に試合を確かめようもない。

――
あれは捉え方が難しい試合なんですよね。

坂井
 長野の田舎にはTSUTAYAもそんなに発展してなくて、ご当地にしかないDVDレンタルショップみたいなのがあったんです。そこにマニアックな店長がいたんでしょうね。格闘技やプロレスのDVDがめちゃくちゃあったんですよ。新日本vsUWFインターの対抗戦もそこから借りました。いまの人は恵まれてますよ。YouTubeとかですぐにチェックできるから。

――
いまは日々の情報が溢れすぎちゃって、逆に過去をカバーする時間が足りなかったりしますよね。

坂井
 ああ、たしかに。いまのプロレスファンは、長州さんが優しい人だと思ってますから(笑)。ボクも長州さんと仕事で絡みましたが、ユーモアがある方なんで面白いですけど、プロレスファンとして根底に苦手意識みたいなものが……やっぱり怖い人という認識なんですよ(笑)。

――
90年代のプロレスファンは長州力の怖さを植え付けられてますよね。話は戻すと蝶野vs大仁田から入って小川vs橋本でプロレスの怖さを知ると。

坂井
 蝶野さんはめちゃくちゃ華があってカッコいいんですけど、試合は渋いですよね。

――
あの頃の蝶野さんは殴る蹴るだけのシンプルな試合構成でしたよね。それだけで試合を組み立てるのは一流なんですけど、若いファンからすれば……。

坂井
 まだ「技が少ないほうがいい」っていう境地まで行ってなかったんで。派手な技が多ければ多いほどよかった。やっぱりちっちゃいときってバイキング食べ放題、好きじゃないですか(笑)。それと一緒で、技が多い選手が好きなんですよ。

――最初はやっぱり大技大好きですよね(笑)。90年代を指して「ファミコンプロレス」と蔑んだ言い方もされましたけど、猪木・馬場時代がリセットされてファンも入れ替わったから見せ方が変わるのは当然だったと思うんですね。

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