
修斗の新シリーズ「Lemino修斗」で岡田遼引退試合の相手を務める弥益ドミネーター聡志インタビュー。年に一度は格闘技界の賢者ドミさんの話に耳を傾けて脳のリフレッシュしたい!12000字でお届けします(聞き手/ジャン斉藤)
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・いぶし銀のMMA職人・佐藤将光のアタマの中
――久しぶりの試合がまさかの修斗になりました!
――弥益選手がRIZINに参戦して、DEEPで試合をしなくなった頃からDEEPがどんどん元気になって。いまや国内ナンバーワンですよね。
弥益 正直、DEEPの調子がいいことにはちょっと悔しいですよ(笑)。
――ハハハハハ! 弥益選手が貧乏神みたいに聞こえたら申し訳ないですけど、弥益選手が王者だった頃のDEEPとはちょっと違いますよね。
弥益 あの頃は「弥益は本当にチケットを売らない」と言われ続けたわけですけど(笑)、いまのDEEPは毎回満員ですよね。
――カードも出し惜しみしてないけど、「DEEPだから見に行こう」という雰囲気もあって。
弥益 DEEPのブランドがそれだけ価値が出てるということですね。だから悔しいです(笑)。
――弥益選手は絶好調のDEEPではなく修斗に上がると。

弥益 修斗に出ることはまったく想定してませんでしたし、もちろん岡田(亮)さんと戦うことだって、一度も考えたことなかったですね。岡田さんとは言うほど密に練習していたわけではないんですけど、お互いに名前がない頃から意識はしていたというか。経歴がちょっと似てる部分もありますし。
――オファーを受けてから1週間くらい考えたそうですね。
弥益 そうですね。いままでのオファーって置いても1日ぐらいだったんですけど。今回は身近な人に相談したわけじゃないんですけど、周囲に話をしたときに「やらなくていいんじゃないの?」という声もけっこうあったりして。それを受けてちょっと悩んでしまったところはありましたね
――それはどういった理由で断ったほうがいいと?
弥益 まず舞台がRIZINじゃないってところはあったと思うんですよ。「RIZINに出られるんだったら、注目されるところのほうがいいんじゃないの?」と。あとは今回は岡田さんの引退試合ということに加えて、1階級下の選手ですし、非常にリスクが高い。勝っても引退する選手で、階級も下。プラスはほぼないという判断で「無理にやる必要ないんじゃないの?」と反対してました。でも、自分としては「ここでやらないと、ずっと試合をすることはないんじゃないかな……」という気もしましたし。
弥益 岡田さんはそれぐらい自分の中で特別な方ではあって。さっきも申し上げたんですけど、自分と同じ国立大の経歴で。それまでは格闘技のバックボーンを一切なく、卒業されてから就職をせず格闘技一本に全力を懸けてやられていたので「こういう人を目指して頑張ろう」「自分ももしかしたら近づくことができるかもしれない」と。自分は普通に就職してしまったので、手が届くという認識はなかったんですけど。その岡田さんが数年前に「もうそろそろ引退します」という話をされていて。その理由としては目標としていたUFCには行けそうにないと。
――岡田選手が修斗王者になりましたが、UFCのチャンスはなかなか得られず……。
弥益 そのインタビューを読んだときに、岡田遼という格闘家が引退してしまう悲しさもありましたし、経歴が近いからこそ自分が怖くて進めなかった道を歩んでいた岡田さんが、目指していた場所(UFC)に手が届かず、それで区切りをつける。一方で「自分は何をしてるんだろう」という居づらさみたいなものを味わいまして。その後なんだかんだ岡田さんはRIZINで何戦かされてはいるんですけど。今回引退試合を決意されて、その最後の相手として自分を選んでくれた。光栄というよりは、岡田さんからチャンスをいただいた感覚ですね。
――弥益選手にとっては「チャンス」なんですね。
弥益 はい。岡田さんを指標としていた時期があり、岡田さんみたいな格闘家人生を送りたいと憧れていた。でも怖くていけなかった中で、ここで交われるチャンスをいただいたという認識です。やっぱり歳を重ねてくると、ここまで感情が高ぶるオファーはなかなかないんです。まあ、だいぶ感情がバカになっちゃってるところもあるんですけど(苦笑)。自分はいま2連敗中ですし、ここまで気持ちが高ぶる試合を断ったら、この先に試合ができないんじゃないか、ここまでの気持ちになる試合は今度あるのかな……っていう思いもあって、とっさに掴んだ感じはありますね。
――ボクもめちゃくちゃいいカードだなって思ったんですよね。
弥益 ありがとうございます。自分はここ数年、「表を向いてない格闘家」ってことをあらためて実感していて。RIZINに出たことでたくさんの人に見ていただいて、自分のことを知ってくださっている方も増えた。本来であれば、そういう方々に向けて「どういう試合が求められているのか」ってことを考えながらやっていくのが、プロとしてあるべき姿だと思うんですけど。結局、自分は自分が楽しいからやってるし、自分の人生を少しでも肯定するために格闘技をやってる。たくさんの人に夢を見せるような心躍る冒険譚を書くこともできないし、現実離れしたSFみたいな格闘技人生を送れるわけではない。自分が書けるのはもう私小説というか。
――「弥益ドミネーター聡志」は私小説ですか(笑)。
弥益 私小説です(笑)。あくまで自分の中で完結している小説しか書けないんですけど、それを楽しんでくれる数少ない人もいらっしゃいますし……。
弥益 ハハハハハハハ。自分が楽しめるような人生を歩んでるだけだけど、それを面白く解釈してくれる方々がいらっしゃって。そうやって大人な楽しみ方をしてくれるのはありがたいですね。
――弥益選手ってRIZINに上がってから、試合をすることのハードルが上がってないですか?
弥益 ああ、そこは正直ありますね。ちょっとハードルは上がりはしました。でも、それは家庭環境というか、子供が生まれたことで、自由に動けるわけではなくなったこともあります。言ってしまうと身体のダメージもありますし、家庭もあるし、仕事もある。もちろんRIZINに出たことはすごく大きなターニングポイントではあったんですけど、それと並行して自分を取り巻く環境も変わってはいるので。そういう意味ではやっぱりホイホイ試合を積み重ねていきづらくはなっている現状はありますね。だから大人気のDEEPに出られずに悔しい思いをしています(笑)。
弥益 練習自体は好きなんですよ。でも、やっぱり試合が決まると楽しいだけの練習だけじゃ済まないですし、パフォーマンスを上げていくための練習を絶対にしなくちゃならなくて。「じゃあ、その練習がやりたいか」と言われれば、必ずしもそうでもなかったりしますよね。
――「格闘技の練習」と「試合に向けて練習する」ことはまた微妙に違ってくるんですね。
弥益 「格闘家ごっこ」の楽しさは正直あるんですけど、とはいえ試合をするからには何かしらの理由付け、試合をする意味、自分にとってどういう立ち位置なのか……とか、ある程度自分の中で納得できていないと頑張れない。無意識に妥協に繋がっちゃうところは正直あると自分では思っていて。
弥益 好きなことだけやって強くなれるんだったら、それはもう幸せなんですけど。いかにきつい練習を無感情でやれるか。感情が捨てられないんだったら、いかにそこで自分の中で意義を見つけていくかが大事になってくる。そういう意味で今回の試合は岡田さんに対して恥ずかしい試合はできないし、誠意を見せたい。失礼のないように試合に向けて作っていきたいという思いが本当に強いですね。
――弥益さんの中で大きな意義があるわけですね。
弥益 はい。たぶん過去一ぐらい練習は詰め込んでますし、岡田さんのおかげでキツイこともできてる認識はあります。そういう意味では、この試合を受けてホントによかったと思ってますね。
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