「群馬県」がどれほどへんてこな場所か?
というテーマでここ数回の『ひろぐ』を記している!
しかし私の一生懸命な文章よりも
たった1枚の写真の方が
高い説得力を持つ場合もある!
“If your pictures aren’t enough,you aren’t close enough.”
Robert Capa
「もし君の撮った写真が充分なものでないとしたら
それは君が充分に近寄らないせいだ。
写真家ロバート・キャパ」
というわけで「プロジェクトKUTO-10」による
『財団法人親父倶楽部』群馬公演は
なかなかの盛り上がりで幕を降ろす事ができた!
教育的かつ道徳的なテーマがあるわけでもなく
観たら賢くなるわけでもなく
テレビや映画で大活躍する有名俳優が出演しているわけでもない
ただひたすら奇妙な親父達が「ほたえる」作品など
なかなか伊勢崎市の劇場で上演される事はなかっただろう!
しかしあれほど喜んでくれたお客さんの顔を思い出す限り
「こういう演劇があってもいいのだ!」
という
今後の群馬の演劇界における
新たな指標になったのではないかと実感している!
(用語解説
「ほたえる」
分類:関西弁
意味:無意味に大きな声を出して興奮状態に陥る事
用例:ぼんちおさむがほたえる)
はてさて!
劇団「遊気舎」の公演を控える「クボッティ」こと久保田浩
なにやらダンスのステージが間近な「さんちゃん」こと「藤本陽子」
そして
常に「さっさと家に帰りたい」と願っている「保(たもつ)」さんらは
公演翌日の早朝に群馬を後にした!
しかし当然ながら私はそんなもったいない事はしない!
夕方まで群馬をひろがなければ
俗に言う「ひろぎの魂」に傷がつく!
今回はそこに
「としさん」こと「工藤俊作」氏や
「名古屋の県庁所在地は?」
というクイズを本気で出す
”猿より少しだけ賢い人間”こと
「長橋遼也」なども
私の群馬冒険に付き合ってくれる事となった!
ホテルのチェックアウト時間にロビーに降りると
”ワイルドスピード:還暦ミッション”こと「ちあき」と
”地獄から来た花パン配達人”こと「おっさん」と
”サッポロ五番”の異名を持つ「とみーさん」らが
3台の車で待っていてくれた!
月曜日だというのに
我々の遊びに付き合うべくそれぞれが車を出してくれたのだ!
ありがたい話だ!
残念ながら天気はなかなか強い雨だった!
椎間板ヘルニアと共に生きる私には過酷な天候だ!
だが私はまず
群馬県民が”上毛ディズニーランド”と呼んで譲らない
「前橋るなぱあく」
に向かってもらうよう願い出た!
角 「なんで僕の言う通りにできないの。」
伊藤 「どこがどうあんたの言う通りじゃなかったのか指摘するがいい。」
角 「全部。」
伊藤 「おっ。」
角 「全部でしょ。」
伊藤 「かけらもないというわけか?」
角 「うん。ない。悪いけど。」
伊藤 「なるほど。」
角 「なに”百万年”って。」
伊藤 「”前橋るなぱあく”がこれからも繁栄するよう願いを込めてみた。」
角 「込めないでそういうの。」
伊藤 「だめか。」
角 「だめ。」
(2018年版『源八橋西詰』より)
「前橋るなぱあく」通称「るなぱー」は
誰にとってかはわからないが
「日本一なつかしい遊園地」
というコピーで知られる入園無料の遊園地だ!
遊具の料金は最も高いもので50円!
最も安い電動木馬などは10円で乗る事ができる!
10円でガムも買えなくなった令和の世において
これは驚異的な値段である!
(しかも
「赤の木馬が一番長く動く」
という裏情報も入手した!)
そのため群馬で子供を育てる者は
子供たちに対して
「るなぱー」がどれほど楽しい場所であるかを
過剰に説く能力に長けている!
そして休日に「るなぱーに行きたい」という子供を
”いい子”として高評価する文化が脈々と続いている!
(後藤ひろぱー著『カッターは刃物か乗り物か?』より)
そんな「るなぱー」は
こんな標識で我々を迎えてくれた!
もしも子供を連れた親であれば
PKを外した選手並に
頭を抱え地面に膝をついて落胆しただろう!
しかし私が動じる事はなかった!
なぜなら私が「るなぱー」を訪れた目的は
他にあったからだ!
なんと驚くなかれ!
「るなぱー」には!
あの「ラヂオ塔」があるのだ!
聞けば同公園内にあった物を移築したそうで
そもそもどこにあったのかは資料が見つからないそうだ!
それにしても見事なラヂオ塔だ!
私が大阪城公園や中之島公園で見た物と違い
なんとこのラヂオ塔は
国の登録有形文化財となっている!
「文化庁国指定文化財データベース」
そのため保存状態はあまりにも素晴らしく
朽ちつつある大阪の2基とは美しさがかけ離れている!
大阪は中之島公園にあるラヂオ塔と
比較していただきたい!
(中之島公園ラヂオ塔)
ラヂオ塔は
ラジオが一般家庭に普及する以前に建てられた物だ!
だとしたらこの国の放送文化の原点ではないか!
それほど貴重な物を
なぜ大阪は放置して朽ちさせようとするのか?
なぜそれが何かという解説も付けず
人の目をそらさせようとするのか?
この「るなぱーラヂオ塔」の美しさを見るほどに
自分が住む街に憤りすら感じてしまう!
るなぱーラヂオ塔でなによりも驚かされるのは
その背面部分だ!
前面のNHK群馬放送局を表すコールサイン
「JOBG」の表札は
明らかに移築の際に再生された物だが
この背面の鉄製部分は
確証は無いものの
その老朽具合から
最初に建てられた際の素材と推測できる!
戦時中に兵器を作るため発令された
悪名高い「金属類回収令」を逃れ
決して人殺しの道具に姿を変える事なく
ラヂオ塔部品として今も存在しているとしたら
なんと素晴らしい事か!
それゆえに
かつてはスピーカーが収まっていたであろう
塔頂部分の鉄細工も更に貴重だ!
では一体中はどうなっているのだろう?
そんな時にわくわくさせてくれるのが
全天球カメラ通称「ひろの眼」だ!
ではご覧いただきたい!
ひろの眼写真
るなぱーラヂオ塔の中
ラヂオ塔を満喫したところで
るなぱー事務所前に置かれていた
「ピーカップ」に挑んだ!
久しぶりに登場した言葉なので説明するが
『ひろぐ』の辞書には
「ガチャガチャ」とか
「ガシャポン」とかいう言葉は存在しない!
そういう物は全て「ピーカップ」だ!
るなぱーにはオリジナルグッズがあり
100円ピーカップでバッジを購入できる!
なんだか飛行機の遊具のものが当たった!
雨天で営業していないるなぱーなのに
あまりにもわいわい楽しそうにする大人達を不審に思い
事務所のおねえさんとおにいさんが声をかけてきた!
「バンドとかの方ですか?」
なるほど!
平日の雨天閉館な遊園地内を
モヒカン刈りではしゃぐ人が
もしも”バンドの方とか”でなければ
管理する者には通報の義務がある!
恐らくは110番する手を止めての質問だった!
昨日まで伊勢崎で舞台をやってた者です!
という言葉に安心した2人は
私がラヂオ塔を見るために訪れた事に対して
とても興味を持ってくれた!
そして数枚の資料を見せてくれた上で
先に記した移築の情報を与えてくれたのだった!
さて!
もう引き上げよう!
と思った瞬間だった!
「ちょっと!
あなた!
その胸に付けてるバッジは!」
事務所のおにいさん通称「るなぱー兄さん」の胸に
2つ付けられていた「るなぱーバッジ」!
そのうち1つはなんと!
ラヂオ塔のバッジではないか!
「そ!
それがもしまだ器械の中にあるのなら
私は出るまでやります!」
するとるなぱー兄さんは言った!
「これってものすごく人気のないバッジでしてね!
これを出した子供たちは
”はずれが出たから交換してくれ”
といつも泣きついて来たんです!
だからもうその中には入れてません!」
なんだと!
ラヂオ塔バッジがはずれだと?
なんと罰当たりな!
そんな子供は全員床に転がして電気あんまだ!
なんならこのバッジを器械から抜いた
あんたも電気あんまだ!
いや!
大人にはアイアンクローだ!
と!
ここで!
「羽曳野市(はびきのし)」が生んだ酔いどれ悪魔
「としさん」が
ノンアルコールにして得意の「からみ」を見せた!
「えー!
大阪から来てんねんでー!
くれたらええやーん!」
これは大阪府内で50年以上生きた人が発揮する特性だ!
私はまだ30年ほどしか住んでいないので
恐らく70歳になったらこれができるようになるだろう!
「くれやー!
なぁバッジくれやー!
なぁ!」
それを見て笑っていた「るなぱー姉さん」も口を開いた!
「この人実は大阪出身なんですよ!
けど絶対に大阪弁話してくれないんです!」
としさんはそういう所を見逃さない!
「なんや自分も大阪やないかー!
大阪弁しゃべれやぁ!
んでバッジくれやぁ!
なぁ!」
るなぱー兄さんにしてみれば
ひょっとしたら二択だったのだろうか?
何かを理由に長年封じていた大阪弁を今ここで話すか?
もしくは私にラヂオ塔バッジをくれるか?
けらけら笑っていたので
どちらでもなかったのかもしれない!
彼は笑いながら
少しプリントの剥げたバッジを自分の胸から外して
私に差し出した!
「え?
いいの?」
るなぱー兄さんは微笑みながら言った!
「どうぞ!」
感動で涙がこぼれた!
いや!
うそだ!
泣きはしなかった!
そのかわりに心なしか雨が少し強く降った!
ありがとう!
るなぱー兄さん!
ものすごく大事にするよ!
名著『ラヂオ塔大百科2017』の著者
「一幡公平」さんにも
ものすごく自慢するよ!
「僕やで後藤君!
忘れんとってや!
僕が言うたからくれたんやで!」
としさんのその言葉に
あと20年も大阪に住まない方がいいかもしれない
という気がした!
かくして前橋るなぱあくで
何の乗り物にも乗る事なく
ものすごく幸せな気分になって
次なるポイントに向かう私なのであった!
ひろの眼写真
雨のるなぱー