まずはなにしろもったいぶらずに
とんでもなく珍しい物の写真をお見せしよう!
事の発端は
私が毎週聴いている山形放送のラジオ番組
『昭和小僧』だった!
その番組にリスナーから
私の心をぐわんと揺らす衝撃的なエピソードが投稿された!
なんでも山形市のお薬師様
通称「千歳(ちとせ)公園」の近くのお寺に
オットセイの墓があると言う!
私は幼稚園から小学校に上がるまで
千歳公園のすぐそばに住んでいたのだが
そんな話はただの一度も聞いた事がない!
大阪でそのラジオを聴いた私は
次の帰郷の際には
必ずやそのオットセイの墓を参拝しよう
と心に決めていた!
そしてやっとその日が来た!
昨晩大阪に戻ったばかりなのだが
1月半ばも過ぎたと言うのに
山形にはまるで雪がない!
スキー客が富をもたらす県において
これは経済的大打撃だ!
山形の人々はみな
「こわいこわい」と言っていた!
これは山形弁の「疲れた」ではなく
純粋に「恐ろしい」という意味だ!
いつかとんでもない大雪が降るかもしれない!
雪の寒さや雪解け水を必要とする農作物に
大きな被害が出るに違いない!
夏には異常な猛暑が訪れるのではないか?
そんな見えない恐怖が山形を包んでいた!
しかしながら
運転免許を持たない私にとって
これほどありがたい事はない!
なにしろ一週間ほどの滞在期間中
毎日自転車で走り回る事ができたのだ!
いつものように起きたら近所の温泉へ!
そこからラーメン屋で昼食をとり
Wi-Fiのあるカフェで世間と連絡を取り
帰宅してちょっと昼寝をしたら
目指すは千歳公園だ!
私は昨年の1月に帰郷した際
千歳公園にて「ラヂオ塔」を探した!
「一幡公平」氏による名著『ラヂオ塔大百科2017』のリストには
山形市の護国神社にラヂオ塔があった事が示されている!
護国神社が公園を含んでいるのか?
お薬師様が千歳公園と呼ばれ
その中に護国神社があるのか?
よくわからないのだが
私はそこら一帯を千歳公園と呼ぶ事を推奨している!
昨年はノーマルな山形だったため
千歳公園は雪に埋まっていた!
もしも台座だけが残っていたとしても
発見のしようがない!
しかし今年はそうではない!
これは絶好のチャンスだ!
これまで私が見た現存するラヂオ塔は
たまたまかもしれないが
すべてその近くに水があった!
大阪城公園のラヂオ塔はお堀の横に!
中之島公園は川べりに!
「前橋るなぱあく」のラヂオ塔は移設された物だったが
職員が言った移設前の「あっちの方」は
利根川沿いの前橋公園で
そこには大きな池もある!
そんな不確かな法則性に従い
私は千歳公園の池の外周を自転車で回った!
その昔に私が
粗末な細い木橋を補助輪つき自転車で渡ろうとして
自転車ごと転落した
後藤家での通称「ひろちゃん転落池」だ!
さほど大きな池でもないので
一周するのは実に簡単だ!
ゆっくりゆっくりと自転車を走らせてみると!
おばあちゃん達が集っておしゃべりしている東屋の横に!
ん?
ややっ?
おおっ!
なんとも不自然な丸い物が地面から少しだけ出ていた!
何かが折られて撤去されたその根本である事は間違いない!
しかもそこに何か背の高い物が立っていたとしたら
それを守るかのように半円状に石が積まれている!
古い灯籠はいくつも見られる公園なのだが
周囲を石でガードするような灯籠は無い!
だとすると
この石垣が守っていた物は
灯籠ではなく
もっと大事な物だったのではないだろうか?
もしもここに立っていた物が
池を背にして音声を発していたとすれば
その正面は舗装された広めの散歩道とプランターだ!
プランターを消せばラジオ体操のために大勢が集合できる
広々としたスペースとなる!
さっそく一幡さんにもこれらの写真を送信したが
なにしろこれだけでは何の確証も得られはしない!
次回帰郷した際には周辺聞き込み調査を行う必要がある!
というわけで
そんな千歳公園の近くにお寺はあっただろうか?
ある!
池のほとりに発見した謎の物体がある場所から
すでに鐘突堂が見えている!
それはかつて雪の日に
傘をさしたら飛べるような気がして
ずいぶんよじ登った位置から飛び降り
何かに足がはさまって抜けなくなったところを
友達みんなの助けを借りて脱出した
後藤家での通称「ひろちゃんジャンプ堂」だ!
お寺に入る短い参道はかつては砂利道だった!
なぜ私がわざわざ砂利道で自転車を練習したのか
その理由はわからない!
だが砂利道だったからこそ
転ぶのがいやで
現山形放送職員の「おーちゃん」に習い
ものすごく一生懸命練習した覚えがある!
何かの例えではなく
本当に血だらけで自転車を覚えた!
そんな後藤家での通称「ひろちゃん血だらけロード」を
あれから40数年培ったテクニックで走り抜け
到着したのは「柏山寺(はくさんじ)」だ!
墓地を歩いて1つ1つ墓碑銘を確認してもよかったのだが
そんな事をしている自分が
実にわかりやすい不審者に見える事を客観できていたため
私はお寺横の住居の呼び鈴を押した!
私とさほど変わらない年代であろう女性が現れた!
私は彼女をできるだけ怖がらせないよう
関西弁を控えて尋ねた!
「おかしな奴だと思わないで下さい!
実はこの辺りのどこかのお寺に
オットセイの墓が・・・」
女性は私の言葉を断ち切ってこう言った!
「ああ!うちです!あります!」
かくしてその女性に案内され
たどり着いた場所で撮影したのが
冒頭の写真だ!
それはお寺にたどり着く以前の
「ひろちゃん血だらけロード」のすぐ横にあった!
なんと私はオットセイの霊に見守られながら
自転車を練習していたのだ!
墓石には
「オットセイ君ブロニー之墓」
と刻まれている!
「昔火事があって
千歳公園でやってたサーカスのオットセイが
死んじゃったそうなんですよ。」
彼女にはそれ以上の詳しい事がわからないようだった!
なるほど悲しい話だ!
きっとそれを哀れんだ子供達が!
そして子供の悲しむ顔を見た親達が
みんなで「ブロニー君」を墓に祀ったのだろう!
なんとも美しい話ではないか!
いやいやいや!
これはとんでもなくおかしな話だぞ!
私は宗教にそれほど明るくはないが
恐らくはどの宗教においても
人間と動物を一緒に葬る事は許されないはずだ!
だからこそ
人間の墓場を掘ったら犬の骨が埋められていた
リチャード・ドナーの傑作映画や
自分の娘を動物墓地に埋葬する
スティーブン・キングの書いた話が
永遠のホラー・ストーリーとして成立しているのだ!
千歳公園には立派な馬の慰霊碑がある!
動物園で象などの慰霊碑を見た事もあるし
城崎温泉には食べに食べられたカニの慰霊碑がある!
しかしそれはあくまでも慰霊碑であって墓ではない!
人間の墓地に!
動物の!
しかもオットセイという珍獣の類を
並べてしまっていいのか!
鼻の上にボールを乗せられたら
海老一染之助・染太郎と同じ扱いになるのか?
それをやってしまっているこの「ブロニー君の墓」が
世にも珍しい物である事は明らかだ!
なのに山形の人々のほとんどは
このブロニー君の墓の存在を知らない!
そこで育った私ですらも
そこにそんな物があったとは知らなかった!
これは世界から見物客が集まってもおかしくないほど
奇妙で希少なお墓なのだ!
そうなると
私はどうしてもブロニー君が人間の墓に埋葬された
その詳しい事情を知りたくなった!
お寺の女性によれば以前
山形新聞が何度か
このブロニー君の墓の取材に来たので
山形新聞社に尋ねてもらった方が
詳しい話がわかるかもしれない
という事だった!
実に簡単だ!
なにしろ私は山形新聞で
十年以上もコラムを連載させてもらっている!
私はすぐにコラムの担当記者と連絡を取った!
「丸八やたら漬の新関(にいぜき)社長に会うといい!」
「丸八やたら漬」と言えば
山形で知らない人がいないほど有名な
老舗の郷土漬物店だ!
そこの社長である新関芳則氏は
「城下町やまがた探検隊」を組織する
「隊長」という裏の顔を持つユニークな人物だと言う!
こういうおもしろい事に出会うと
私の行動力は7~8倍になる!
さっそく丸八やたら漬け本舗に向かい
新関隊長へのお目通りを願い出た!
そしてそんな新関隊長から
ブロニー君の美談をひっくり返す
なんとも面白い話を教えてもらい
更に存在する山形市の奇妙な遺物を
いくつも教えてもらうのである!
よし!
つづくとしよう!
へんな物好きは今すぐにでも山形に行きたくなる
そんな次回の『ひろぐ』をお楽しみに!
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