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出版社が生きのこるための考え方の一提案(2,994字)
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出版社が生きのこるための考え方の一提案(2,994字)

2017-08-25 06:00
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こんにちは。ぼくは岩崎書店という児童書の出版社の社長をしている岩崎夏海といいます。
実は作家活動も平行して行っており、普段は有料でメルマガを書いているのですが、今日は無料で読んでいただける場所に記事を書いております。というのも、出版社の社長として一つ考えていることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思ったからです。

昨日、「書店が減り続けている」というニュースが朝日新聞のサイトに出ていました。


これは、出版社にとっては大変由々しき自体です。なにしろ、売り場が減ってしまうのですから、売上げの減少に直結します。

ですが、これは言い方に気をつけなければいけないのですが、こうした事態をむしろチャンスと捉えることが、だいじなのではないかとも思っております。これをむしろ活かすくらいでなければ、出版社は生きのこれないのではとすら考えています。
今日は、そう考える理路について説明したいと思います。


記事によると、書店はここ20年くらいで4割ほども減ったそうです。これは大変な数です。普通なら、会社が潰れたっておかしくないくらいの減少幅です。
しかしながら、岩崎書店はまだ潰れていません。それ以前に、売上げが4割減ったというわけでもありません。もちろんそれなりに減ってはいますが、書店の減少に比べると、減り幅は少なくすんでいます。

なぜかというと、答えは簡単で「インターネット書店で本を買う人」が増えたからです。インターネット書店では、単行本も売っていますが電子書籍も売っています。岩崎書店でも、もちろんインターネット書店で単行本や電子書籍を売っています。そうすることで、本屋さんが減った分の売上減少をカバーしているのです。

また、そういうふうにインターネット書店で売ることには、これまでにない新たな「メリット」もあるととらえています。それは、「これまでとは違った本が作れるようになった」ということです。

20年前は、ほとんどの人が「新刊が発売される」という情報を書店で知っていました。例えばぼくは筒井康隆さんのファンなのですが、その新刊情報はいつも書店の棚で知っていました。

なぜかというと、それ以外でほとんど知りようがなかったからではありますが、もう一つは「本屋さんに毎日通っていた」ので、それで十分だったということもあります。当時の本屋さんは大変に魅力的で、毎日でも通いたくなるような吸引力がありました。だから、「書店の棚」というのは単なる売り場ではなく、実は効果絶大な宣伝媒体でもあったのです。

20年前は、本屋さんの棚に並ぶということこそが、出版社にとっては最も重要な宣伝方法でした。逆にいえば、本屋さんの棚に並ばせられない本を売ることは、ほとんど不可能でもあったのです。「本屋さんの棚に並べにくい本」は、もうそれだけでビジネスチャンスがありませんでした。

「本屋さんの棚に並べにくい本」とはどういうものかというと、いくつか傾向はありますが、新しかったり実験的だったりする本もその一つです。書店というのは売り場も兼ねていますから、売上げを最大に伸ばすため、どうしても過去のデータを参照しながら「売れ筋」の本を並べることが優先されます。その結果、売れるか売れないか分からないような新しい本、実験的な本は、チャンスが少なかったのです。

しかし、新しかったり実験的だったりするものが出ないと、その産業はやがて衰退していきます。ぼくは、書店や出版業が衰退した一因は、そこのところにあるのではないかと考えています。本屋さんが4割減ったというのは、それが理由の一つだったのではないかと。


しかし、町の本屋さんが減少し、インターネット書店が台頭してきた今は、それを覆すような新しい流れが生まれつつあります。先日も、それを証明するようなできごとがありました。

先日、岩崎書店から『マンガの歴史』という本が出ました。

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この本は、発売前にメルマガやTwitterなどで告知したところ、とても大きな反響をいただきました。また発売後も、読まれた方からのツイートが相次ぎ、おかげさまで一時期は、インターネット書店のランキングで200位前後まで上がりました。

これは、この時点での岩崎書店の本としてはトップでした。そんなふうに、インターネットで大きな反響を得た本なので、ぼくは全国の町の本屋さんでも売れているのだろうと思いました。以前、インターネット書店で売れる本は全国で売れる本のだいたい5パーセントだという話しを聞いたことがあります。つまり、インターネット書店で1000冊売れたときには、全国では20000冊売れたという計算になるのです。

その計算だと、『マンガの歴史』は大変な売上げということになります。そこでぼくは、ドキドキしながら全国の書店から上がってきた売上げデータを見てみました。
ところがそこで、愕然とさせられたのです。なぜなら、全国の書店ではこの本が全く売れていなかったからです。その数は、インターネット書店で売れた数の約4倍でした。つまり、インターネット書店の売上げは、全国の売上げの25パーセントにものぼったのです。

なぜそうなったかといえば、そもそも全国の書店には配本すらされていなかったからです。全国の書店では、残念ながら『マンガの歴史』は売れなさそうという判断がくだされ、棚には並べてもらえませんでした。その理由は、『マンガの歴史』が新しく、実験的で、売上げが読めないからというものでした(実際に営業マンがそう聞かされたとのことです)。

もしこれが20年前でしたら、『マンガの歴史』は全く売れず、このまま絶版への道をまっしぐらに突き進んでいたと思います。しかし今は、たとえ本屋さんの棚に並べてもらえなくとも、インターネットを介して口コミが広がれば、売上げを着実に伸ばしていけるようになりました。

なぜなら、町の本屋さんでもインターネット書店の反響を見ているので、一度は見限られた本でも再度棚に並べてもらうことができるようになったからです。
その意味で、今はインターネット書店で売れるということが最も重要な時代になりました。それは、とりもなおさず新しいことや実験的なことが、昔よりやしやすくなったということです。そしてそのことが、ぼくは出版業が再生する、一つの道筋になるのではないかと考えています。

そういう考えで、ぼくはこれまで『マンガの歴史』を含め5冊の本を作りました。
そしてこれからも、そういう本を作っていこうと考えています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ぼくが作った本は、以下になっております。

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もんだい - 井筒啓之

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よんでみよう - 五島夕夏

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おばあちゃんがこどもだったころ - 菅沼孝弘

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マンガの歴史 - みなもと太郎

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空からのぞいた桃太郎 - 影山徹
 
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コメント欄の件を、このように早く解決頂き有難うございました。
今後も、ご教授のほどよろしくお願いいたします。(_ _)
20ヶ月前
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