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月曜日に『ブレードランナー2049』についてネタバレなしで書いたところ……
ネタバレありでも書いてもらいたいとの要望があったので、今回はそれについて書いてみたい。
というわけで、ここから先は内容についてのネタバレがあります。
『ブレードランナー2049』は、主題がとても分かりやすかった。映画の内容はすぐには分かりにくいのだが、主題はとても分かりやすくできている。
それは、差別についてだ。特に「人間とは何か?」ということへの問いと、平等性についてである。
主人公は、まず被差別的な立場に置かれている。彼は、人間ではなくレプリカントなのだ。「レプリカント」とは、アンドロイドのような人間が造った生命体のことである。
そのため、人間からは一段下に見られている。また、人間に奉仕するという立場にも置かれている。その意味で、「奴隷」のメタファーだ。
ここで面白いのは、そういうふうに主人公は奴隷的な立場にありながら、同時に同じ奴隷をハンティングしていることである。奴隷のうち、旧型のものを破壊することを仕事としているのだ(主人公は新型)。
そういう引き裂かれの中にはいたのだが、主人公は最初、人間が用意した「神話」に則って、同胞を殺すことには疑問も抱かずにいた。ところが、働くうちにその神話に綻びが見えてくる。というのも、レプリカントに生殖機能――つまり子供を産む能力があることが分かってくるのだ。
それまで、人間とレプリカントの最も大きな違いは「子供を産めるか産めないか」だった。レプリカントは、子供を産めない。だから人間はレプリカントを下に見ていたし、主人公も旧型のレプリカントを狩ることに疑問を抱かなかった。
ところが、子供を産めるとなると話が違ってくる。なぜなら、子供を産めるとなるともうレプリカントと人間との違いはなくなってくるので、狩られること(狩ること)は間違いのように思えてくるからだ。
主人公は、レプリカントでありながら、人間の手先として旧型のレプリカントを狩る立場にあった。そのため、「レプリカントが子供を産んだ」という事実に、最初にアプローチすることができた。
おかげで、皮肉にも神話の綻びを真っ先に知る存在となるのだ。人間の手先であったがために、まず真っ先に人間を疑う存在となったのである。
そういうふうに、この物語は被差別者であり差別者の手先でもあった主人公が、奴隷制度に疑問を感じ、これを打ち破っていくという構造になっている。
ところで、西洋人というのは、日本人には想像もつかないくらい差別に対して複雑な感情を抱いている。特に、2000年にもわたってキリスト教的な価値観の中で生きてきて、そこでは人間の平等が建前としてうたわれていたにもかかわらず、中世においては奴隷制度を押し進めたため、そのことの矛盾が否応なく広がっているからだ。おかげで今は、そのツケを支払わされている状況にある。神話の綻びに長年見て見ぬ振りをしてきたことによって、一朝一夕には解決できないくらいの問題を抱えながら生きることとなったのだ。
そのため、今の西洋人にとっては「奴隷制度の矛盾を解決する物語」というのが一番求められている。そして、その物語の構造にはあるお決まりのパターンがある。それは、被差別者の中から英雄が立ち上がり、差別者を打ち破って旧来の価値観を崩壊させる――というものだ。そういう物語を、被差別者の側ではなく、他ならぬ差別者の子孫が望んでいるのである。
なぜかというと、今の西洋人は先祖のしてきたことの罪があまりにも重いために、自らそれを打ち破ることができずにいるからだ。彼らは、その状況を打破するために断罪を望んでいる。誰かに糾弾されたいのだ。罵られたいのである。
それは、浮気のバレた男性が、妻から怒られると妙にすっきりすることと似ている。そこで妻が、許してくれたり黙っていられたりすると、かえって罪の意識が高じ、居心地が悪いのだ。
これは、一見都合良くも見えるが、しかし人間の本質でもある。人間は、自分で自分をそこまで強く律することはできない。どこまでも社会的な動物なので、他者との関係の中でしか罪の意識を解決できないからだ。
『ブレードランナー2049』は、そういう西洋人の贖罪の気持ちが作った、きわめて現代的な物語なのである。
ところで、差別を糾弾した西洋の作品の系譜の一つにジョン・レノンの『イマジン』があるわけですが、11月末に、その歌詞を絵本にした作品が出版されます。
IMAGINE イマジン 〈想像〉 - Amazon
この絵本の翻訳を、ぼくがつとめさせていただきました。
『イマジン』の歌詞って、46年も前に書かれたんですが、今見ても過激に示唆的なんですよね。
国もいらない、天国も地獄もいらない、宗教もいらない……それが争いの元になる、と。
今また、日本を含め世界中で、国や思想信条の違いによって人々が争うようになっています。
だからこそ、この歌の持つ意味はますます重くなっているのではないかと。
みなさま、よければ読んでみてください。
ところで、差別を糾弾した西洋の作品の系譜の一つにジョン・レノンの『イマジン』があるわけですが、11月末に、その歌詞を絵本にした作品が出版されます。
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この絵本の翻訳を、ぼくがつとめさせていただきました。
『イマジン』の歌詞って、46年も前に書かれたんですが、今見ても過激に示唆的なんですよね。
国もいらない、天国も地獄もいらない、宗教もいらない……それが争いの元になる、と。
今また、日本を含め世界中で、国や思想信条の違いによって人々が争うようになっています。
だからこそ、この歌の持つ意味はますます重くなっているのではないかと。
みなさま、よければ読んでみてください。
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