ノーマン・ロックウェルは、1940年代から50年代にかけて絶大な人気と大きな影響力を誇った画家でありイラストレーターである。彼の名前は知らなくとも、その絵を見たことがない者はいないのではないだろうか。

その特徴はいくつかあるのだが、ここで注目したいのは、彼が「ドキュメンタリー的な手法を用いている」ということである。ロックウェルはアメリカの市井の人々をとらえたイラストを数多く発表している。そこで見る風景は、きわめてリアリティが高いのだ。

例えば、小さな犬がどかないために大型トラックが立ち往生しているイラストがある。

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このイラストに象徴的なのだが、出てくる一つ一つの要素――人物や小物はどれもありふれたものだ。しかしそれを一堂に会させ、特異な構図の中に配置することで、一気に劇的な空間を構成している。見る者は、いやでもそれが劇的な空間であることに気づく。つまり、現実そのものではないことに気づくの