ハックルベリーに会いに行く
マンガの80年代から90年代までを概観する:その70(1,654字)
柳沢きみおは、悩んでいた。鴨川つばめのように、面白いギャグマンガが描けないからだ。自分にはギャグのセンスがないと、たびたび痛感させられていた。それで、毎度アイデア出しに困っていたのだ。
そんなとき、『月とスッポン』の脇役である藤波というキャラクターに頼った。この藤波は、高校時代の同級生がモデルだった。実在の彼の言動を思い返していると、アイデアは湧き出てきた。マンガの中の藤波が、どんどん動いてくれた。
そうして、マンガ自体を面白くしてくれた。だから、藤波の話ばっかりになったのだ。『月とスッポン』の後半は、ほとんど藤波が中心で展開していくのだが、それは柳沢きみおがそれだけネタに詰まっていたということだ。同時に、藤波がキャラとして秀逸だったということでもある。
藤波は、いうならば「前時代の遺物」だった。古い「ガリ勉」の典型だった。だから、そういう言動をし、そういう外見をしていた。それが、「新時代
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