ここまで、アーティストは「困難な状況を打破するためのメソッドを提示する者」ということを書いてきた。ところで、どの時代にも、その時代特有の困難さがある。そして困難さの厄介なところは、たいていの場合、その困難さの解決方法が見えていないのはもちろん、困難そのものにも気づいていない場合が多いことだ。

例えば、近代化が成し遂げられたとき、人々は歓喜雀躍した。それまで苦労していた「物資の不足」から解放され、豊かな暮らしができるようになったからだ。
しかしそのおかげで、美しさからは縁遠い生活となった。周囲は工場で作られた無骨な鉄製品で埋め尽くされ、生活は味気ないものとなった。それでも人々は、道具の「便利さ」に目を奪われ、「醜い物に囲まれた味気ない生活」という問題に気づけないのである。

あるいは、工場の乱立によって「公害」が発生し、多くの人々が病気になった。それでも、人々は近代化を止めようとはせず、病気の