
野球道とは負けることと見つけたり:その11(1,855字)
蔦文也は引き裂かれた男である。能力はあるが根性はない。それは、幼い頃甘やかされて育ったからだ。
そのため何をやらせても、はじめは調子よく自分でもその気になるのだが、肝心のところで挫けてしまい、ビビって負けてしまう。それで逃げるが、ときどきの環境と根が真面目な性格だったため、最後まで逃げ切れず、また元の場所に戻ってくる。
そうして徳商野球部、同志社野球部、特攻隊、全徳島、プロ野球と渡り歩いた。しかしプロ野球の世界で全く通じず、結婚したばかりの妻と故郷の池田町に帰ってくることになる。
このときまでに文也は、今の時代はもちろん同時代の人さえ追随を許さないような凄絶な前半生を送っていた。それはとても「金持ちのボンボン」といえるような経歴ではなかった。つまり、根は金持ちのボンボンでありながら、他の誰よりも過酷な生き方を強いられることとなったのだ。
それは「野球が全てそうさせた」ということもあるだろう
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