ハックルベリーに会いに行く
1994:その35(1,835字)
山下達郎の『クリスマス・イブ』という曲がある。この曲は、90年代を「代表」していたのではなく、ある種「支配」していたのではないだろうか。
なぜかといえば、当時は「恋愛の時代」だったが、恋愛が最も盛り上がるのがクリスマス・イブだった。そしてクリスマス・イブの定番曲として、文字通りこの『クリスマス・イブ』が君臨していたからだ。
当時は同時に「音楽の時代」でもあって、CDが異常なくらい売れていた。その中にあっても、この『クリスマス・イブ』は毎年クリスマスシーズンになると、必ずベストテンにランクインしていた。
そんな曲は他にはなかった。そもそも一度ランク外に落ちた曲が再びランクインすることすら奇跡なのに、その奇跡を毎年、しかも最もCDが売れる苛烈なクリスマスシーズンに成し遂げていたのである。そんなふうに、音楽界でもこの楽曲は、王者としての揺るぎない地位を築いていた。
そのため『クリスマス・イブ』は