相沢事件で永田鉄山が殺されて以来、東條英機には何かが「ノ」っかった。何かといえばそれは永田鉄山だ。それ以降の東條英機は永田鉄山の代行者、代理人となったのだ。

それは永田の弔い合戦でもあった。だから人々は、東條自身に永田の影を見ないわけにはいかなかった。そもそも永田と東條は全く異なるタイプの人間だが、しかし永田の代行者となると、東條の右に出る者はいなかったともいえる。

それは現代にたとえていうなら山田康雄と栗田貫一の関係に近い。そもそも栗田はモノマネ芸人で声優でもなんでもない。単に山田康雄が声優を演じるルパン三世のモノマネをしているに過ぎなかった。

しかし山田が病気で亡くなってしまったあとも『ルパン三世』のアニメは続いた。そこで誰かが声優を務めなければならなかったのだが、その適任として山田のモノマネが上手かった栗田貫一以上の人物がいなかったのだ。

永田鉄山が死んだ後も、誰かが永田の代行者を務