これを語る人はほとんどいないが、その理由の一つに「共依存」がある。共依存の関係にあるから、ブラック企業の経営者は、従業員に無理強いすることにためらいがない。ブラック企業の経営者は、むしろそれを良かれと思ってやっている。

言うなれば、ある種の「DV」のようなものである。「DV」というと、暴力を振るう側に一方的な理由があるように思われがちだが、実際はそうではない。DVは、受ける側にも理由がある場合がほとんどだ。
実際、DVをする人の中には、「暴力が嫌い」というケースもある。しかし彼らは、家庭では暴力を振るう。なぜか? それは、暴力を振るわれる側が、それを「誘って」いるからだ。

暴力を誘う人が、この世には存在する。どういう人かというと、自分に自信のない人だ。そして、自信を持ちたいと願っている人である。この世界に居場所のない人で、居場所をほしいと願っている人、アイデンティティを確立できないから、それを確立したいと願っている人である。

これだけなら別に何の問題もないが、その一方で、怠惰な人でもある。同時に、その怠惰な自分を嫌ってもいる人だ。自分が怠惰であることと折り合いがつけられずに、自己嫌悪を抱いている人。もっと言えば、自罰的な人だ。自分を罰したいと願う人である。そういう人が、暴力を振るわれることを誘ってくるのである。

しかしもちろん、「ぶって!」とSMプレイのようにお願いするわけではない。その「誘い方」は、もっと高度で、もっと複雑な形で為される。続に言う「誘い受け」のような形で為されるのだ。