ぼくがまだ若かった頃、師匠だった秋元康さんからいわれた言葉で、忘れられないものがある。それは、こんな言葉だ。
「おれは、壁を乗り越えたことがない」
この言葉を初めて聞いた時、ぼくはギョッとさせられた。生まれてからこれまで、そんな言葉を堂々と語る人を聞いたことがなかったからだ。しかもそれは、ぼくの師匠だった。そこでぼくは、注意深く師匠の言葉に耳を傾けた。すると秋元さんは、続けてこんな言葉を言ったのだった。