だから、それが売れたからといって、ぼくに大きな達成感があるわけではなかった。もっと言えば、喜びのあるわけでもなかった。それは、ただただホッとした気持ちだった。
喩えていうなら、イチローが200本安打を打つようなものだ。それは、とても大変なことだではあるが、しかし到達可能な目標であり、もっといえば一つのノルマのようなものでもある。だから、それを達成した瞬間には、快感よりも、ホッとした気持ちの方が先に立つのだ。
「もしドラ」が売れた後も、それまで出版すらしたことのない人間が生意気かもしれないが、ぼくにはホッとした気持ちの方が大きくて、喜びというのはほとんどないのだった。それは、達成する前から200万部売れるということを広言していたから、それが果たせて胸をなで下ろしたということもあったろう。
しかし、そんな「もしドラ」のプロジェクトの中にも、実はただ一つだけ、「奇蹟」のような瞬間というのがあった。そしてそれは、ぼくの人生の中においても、比肩するもののないくらい大きな喜びの瞬間でもあった。
それは、けっして大げさな表現ではなく、ぼくがこれまで生きてきた中で、最も欲していた瞬間かもしれなかった。ぼくがクリエイターを目指し、本を書いたことの、最もプリミティブな動機かもしれなかった。ぼくは、その瞬間を味わうために作家になったし、その瞬間のために生きてきたのかもしれなかった。
それは、2009年8月のことであった。
コメント
コメントを書くうわ...ちょいどいいところで切られた、続きが待ちきれない。
関係ないですが予約していた「消えたラーメン屋」がAmazonから待てど暮らせど届かない。
>>1
申し訳ございません!
でも、今日辺り着くかもしれないです。ぼくの周りには今日到着したという方がいました!
Amazonで予約していた「消えたラーメン屋~」が昨日東京から出荷されました。
明日には届くと思われます。
後から注文した、さやわか氏の「AKB商法とは何だったのか」のほうは既に到着しました。
「消えたラーメン屋~」の売れ行きの凄いことが予想できます。
>>3
早く届くことをお祈りします!
出だしは、悪くないんです。いただく感想も好意的なものが多いですし。
読んで頂くこと、心から感謝します。ありがとうございます!
この日が、「終生忘れることのできない暖かいお言葉」を頂いたというその日になるのでしょうか。
>>5
いえいえ、ぼくはそんな大した人物ではありません!
ただ書くものが人並外れて面白いだけの人物で、他にこれと言った取り柄はありません。
愚痴って失礼しました。「消えたラーメン屋」届きました。すごく面白いです!読んでいて胸が熱くなります。
さらに20冊買って周囲に配ります..w
「まずいラーメン屋はどこへ消えた?」届きました。
この本もまた「贈る本」「贈られる本」になりそうです。
>>8
ありがとうございます!
無理しないでくださいね。
読んだら忌憚のないご意見をお聞かせください!
>>9
これからの本は、超高付加価値でない限り売れないような気がします。
つまり、もうこれまでの本とは呼べないようなものになる必要があるのかもしれませんね。