第10位「ゴッドファーザー」
「ゴッドファーザー」は10位だが、別段1位でもおかしくない作品だ。これまで見た映画の中で、最もくり返し見ている作品だろう。くり返し見ていても飽きない作品である。
なぜ飽きないかといえば、一つには演技が素晴らしく、一つには描かれている風景が美しいからだ。特に、イタリアのシチリア島の風景が美しい。あまりにも美しいので、思わずシチリア島に旅行に行ってしまったくらいだ。ぼくがイタリアを好きなのも、この映画の影響が多分にある。
しかし、それだけではない。この作品は、物語が非常に面白い。
この物語から、ぼくはどれだけ学んだか分からない。原作も、何度となく読み込んだ。原作を読んでから映画を見ると、また違った面白さが見えてくる。ぜひ、原作も併読されることをおすすめする。
「ゴッドファーザー」は本当に素晴らしい映画なのだが、その中でも最も素晴らしいシーンは、アル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネが、病院で孤立した父親を助けようとしたとき、一緒にいた男の手が震えているのを見て、自分は震えていない――度胸が据わっているというのに気づく瞬間だ。これは、何度見ても惚れ惚れする。
第9位「ノーカントリー」
ぼくが考える、史上最もすぐれた映画はこの「ノーカントリー」だ。文句なくベストワンである。
ではなぜ9位かというと、このランキングは「思い入れ」の順に並んでいるからだ。必ずしも「すぐれた映画」が上、というわけではない。
「ノーカントリー」の何が素晴らしいかといえば、これもやっぱり演技と映像だ。特に演技が素晴らしい。取り分けハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーが最高だ。
シガーがガソリンスタンドで店主相手に賭けをするところや、薬屋で万引きするシーンなど、どれも出色の出来映えである。
このハビエル・バルデムだけでも素晴らしいのに、もう一人、保安官を演じたトミー・リー・ジョーンズが素晴らしい。
彼の何が素晴らしいかというと、「顔」だ。ジョーンズは、「BOSS」のCMで長年宇宙人のキャラクターを演じているが、ただコーヒーを飲むだけで、多くの人を魅了している。
なぜ魅了できるかといえば、それは「顔」が凄いからだ。彼の顔こそ、役者の極みといって差し支えない。魅力的な顔を作ることこそ役者の仕事なのだと、この映画を見て知らされた。
第8位「天空の城ラピュタ」
くり返しになるが、このランキングはぼくの思い入れの順に並んでいる。そして「ぼくの思い入れ」とは、「見ているときに心を持っていかれた」ということ――つまりどれだけ夢中になれたかということになる。
「ラピュタ」は、全ての宮崎駿作品の中で、ぼくが最も心を持っていかれた作品だ。「ナウシカ」は、原作を読んでいたからそれとの差異が気になったし、「トトロ」は、必ずしもぼくが好きな風景ではなかった(風景なら「耳をすませば」が好きだ)。
しかしこの「ラピュタ」は、とにかく心を持っていかれた。ぼくが宮崎駿を決定的に好きになるきっかけとなった「カリオストロの城」のテイストが、この作品には凝縮している。
「ラピュタ」は、とにかく何から何まで最高だが、取り分けエンディングが最高である。
ぼくは正直、ラピュタが壊されるのはとても残念に思った。なんとか残すことはできないか、あるいはもう一度あの島に行くことはできないかと、映画を見ている最中から思った。
するとエンディングでは、そんなぼくの思いを叶えるかのように、中空に浮かぶラピュタが大写しになっていた。それはまるで、ラピュタが滅びず、いつの日か再び人々がこの島へ行く、ということを示唆しているようでもあった。
それでぼくは、大いなる満足感を覚えたのである。
そのためぼくは、この映画のエンディング曲が大好きだ。あの曲を聞くと涙が出る。そして、あのエンディングを作るよう進言し、あの曲を作ったのがプロデューサーの高畑勲さんだったと聞くと、「やっぱり高畑さんはすごいな」と、あらためて思わされるのだった。
第7位