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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2017/9/2(No.50)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.50】技術戦略プランに廃炉の技術的根拠は記載されず〜ロードマップの虚構性が改めて明らかに
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック
技術戦略プランに廃炉の技術的根拠は記載されず
ロードマップの虚構性が改めて明らかに

<初めて視認できた燃料デブリ>
 東京電力は7月19日、21日、22日の3日間、福島第一原発3号機の格納容器内部の調査を実施した。調査は国際廃炉研究開発機構(IRID)が主体となって行うもので、内部調査に使用するロボットは、IRIDから事業を受託している東芝が担当した。

 調査終了後の記者会見で東電は、原発事故後初めて、カメラに映し出された、硬そうな物体が、溶け落ちた燃料デブリの可能性があるという考えを示した。これまで1号機、2号機で格納容器内部の調査を実施しているが、大きな目標としていた燃料デブリを視認することはできていない。

 他方、燃料デブリが見えたからといって状況が大きく変わったわけではない。11年3月11日の事故直後からTwitterで情報を発信し続けている原発作業員の「Happy11311」氏は、デブリの発表があった際に「ペデスタル内の現状を見ると、ますますデブリ取出しの方向性や工法の想像が出来なくなったのが関係者の本音だと思う」(7月21日)と投稿し、先行きを懸念している。

 確かに映し出された映像を見る限り、少しだけ映った燃料デブリが廃炉まで30〜40年というスケジュールに大きく影響するとは考えにくいどころか、問題の大きさが改めて突きつけられたように感じた。実際、廃炉推進カンパニーの増田尚宏代表は、「映像を見てショックを受けた」と会見で述べている。もっとも、だからといって「手を出せないのではなく、慎重にやることが重要」とも話している。

 その上で、スケジュールへの影響については、「中だけを見て決めるのではない」「どのリスクを下げないといけないかということ」とだけ話し、2020年に取り出しを始めるという見通しがどう変わったのか、変わらなかったのかについては、触れなかった。

 これでは今後、どうなるのかは何もわからない。避難している住民にとっての判断材料にもならないだろう。

 映し出された映像では、どこからどこまでが燃料デブリで、どこからどこまでが構造物なのか、はっきりしないものもあった。けれども東電は、もともと格納容器内部にあった構造物とは明らかに違うものがそこにあることから、燃料や構造物が、高熱で溶けて固まったデブリだという認識を示した。

 かなり広範囲で赤茶けたものが広がっているのは、おそらくサビだろう。腐食したように部材の一部が欠けている部分もあった。

 現状で溶融燃料についてわかっているのは、カメラで視認した範囲のことだけだ。1号機では格納容器内部で試料の採取も行ったが、分析結果はまだ公表されていない。東電は試料分析を外部機関に依頼するとしているが、福島第一原発からの持ち出しすら進んでいない。原子力規制委は速やかに分析をするよう東電に指示を出しているが、東電の作業は遅々として進まない。

 このような状況の中、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は、秋にも予定されている中長期ロードマップの改訂のために技術的根拠を示す「技術戦略プラン2017」を発表。燃料デブリの取り出し方針を示した。