木野龍逸の「ニッポン・リークス」
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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
2017/10/2(No.51)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.51】廃炉の責任は誰が負うのか(1)──先延ばしになる工程目標
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック
東京電力と政府は9月26日、福島第一原発の事故収束作業の工程を示した「福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」を公表した。同日に開催された政府の廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で決定した。
平成29年9月26日3回目改訂
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hairo_osensui/dai3/index.html
中長期ロードマップは、事故からまもなく発表された工程表の「ステップ2」完了後(完了の条件は「冷温停止状態」という新しい解釈などによっていた。事故前は「冷温停止」の定義はあったが「冷温停止状態」という言葉はなかった)、30〜40年で福島第一原発の廃止措置を完了することを目指して中長期的な作業工程を計画したものだった。
ロードマップ策定は政府と東電が共同で行っていて、当初は政府の原子力災害対策本部が最終決定をしていた。現在は、相次ぐ汚染水漏洩事故を受けて2013年9月10日に原災本部の下に設置された、「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」が最終決定をする枠組みになっている。
中長期ロードマップ(3回目の改訂=第4版)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hairo_osensui/dai1/siryou2-1.pdf
ちなみに所管官庁でいえば、原子力政策を担っている経済産業省(資源エネルギー庁)が中心的役割を果たしている。
中長期ロードマップの改訂は今回で3度目。だから勝手に「第4版」と名付けておく。
最初の中長期ロードマップは「収束宣言」から約一週間後の2011年12月21日に発表された。ところが、汚染水の漏洩事故が相次いだことから対策が求められるなどしたため、半年後の2012年7月30日には早くも1回目の改訂が行われた。30〜40年で廃炉という、文字通り中長期の目標を定めた作業計画が半年で改訂されるのだから、この時点で工程の信憑性が薄いことは明らかだった。
平成23年12月21日 初版
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111221d.pdf
平成24年7月30日 第2版(1回目の改訂)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/t120730_02-j.pdf
続いて2015年6月12日に2度目の改訂があった。この時は、後述するように大きな記載の変更があり、今回のテーマでもある無責任体制がより強固なものになったように見える。
平成27年6月12日 第3版(2回目の改訂)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/t150612_05-j.pdf
そして今回の改訂(3回目)は、作業工程の遅れを反映して、各種作業の目標時期が後ろにずれていったのが大きな変更点だ。一方で、30〜40年で廃炉にするという目標は変えていない。
このため記者会見では、いったいどういう理由で作業が遅れているのにお尻が変わらないのかという質問が相次いだ。しかし資源エネルギー庁も東京電力も意味の通らない回答を繰り返し、記者から苦笑が漏れたほどだった。
さらにいえば、すでに何度もメルマガ等で指摘してきた「廃炉の定義」が曖昧なままになっていることが多数の記者から指摘されたほか、そもそも「廃炉の定義」を定めるのが誰なのかすら明確ではないという、責任所在の曖昧さも改めて浮き彫りになった。
<どんどん遅れる作業工程>
まず、中長期ロードマップの中で後ろ倒しになったのは、使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しと、燃料デブリ取り出し方法の確定だ。
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