都会で暮らしていた頃は欲望と虚栄心の塊だった。セレクトショップで買った何十万円もする服を着て、ポルシェに乗り、キャビアとフォアグラの違いも分からないまま数万円のディナーに舌鼓を打っていた。30代の頃の話だ。それが10代の頃に思い描いていた自由だと思っていた。いや、確かにそれはそれで自由だったんだと思う。でも、所詮は人工的に造られた箱庭の中の自由だった。バイクに乗って日本の、そして自分の足で世界のあちこちを旅するうちにもっと大きな自由を知った。