国道16号線は渋滞していた。予想通りといえば予想通りだった。もっとも予想したのはぼくではなく、土地勘のある母であり、宇宙からの電波を受信しているカーナビなのだけれど。 今にも激しく降り出しそうな曇天。遅々として進まない車列。ハンドルを握っているぼくだけが無性に苛立っていた。目の前の渋滞にではない。慢性的な渋滞を放置しているこの町に対してだった。沿道沿いには大型駐車場を備えたショッピングモールやらファミレスやら量販店、カーディーラーが巨大な看板とともに幾つも立ち並んでいる。スーパー銭湯なんてのもある。その入り口に差し掛かるたびに入り待ちの車列が一車線を塞いでいる。

 道は増えないのに駐車場を増やせば交通量がどうなるかくらい想像できなかったのだろうか。それどころか「なんでもあって便利だね」と笑って暮らしている人も大勢いるのだろう。故郷がベッドタウンと呼ばれる一大消費地として捕食されている空気に耐えられず、ぼくは18歳のときにこの町を捨てた。