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マクガイヤーチャンネル 第165号 2018/4/4
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おはようございます、マクガイヤーです。

ちょっと時間でがきたので、部屋を掃除しつつ1/6ドールを弄っていたら、服を着せようとした時に素体を壊してしまいました。

こんな小さな服、皆はどうやって着せてるんだ……?



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


○4月14日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年4月号」

・最近の光進丸

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

『トレイン・ミッション

『レッド・スパロー』

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

『パーティで女の子に話しかけるには』

・『バットマン』

『リウーを待ちながら』

『グリーンランタン シネストロ・コァ・ウォー』

その他詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○4月28日(土)20時~

「『レディ・プレイヤー1』と『ゲームウォーズ』とスピルバーグ」

4/20よりスピルバーグの新作映画『レディ・プレイヤー1』が公開されます。

本作はアーネスト・クラインが2011年に発表したオタクコンテンツのスーパーロボット大戦のようなSF小説『ゲームウォーズ』を原作としています。VR空間を舞台にデロリアンやビバップ号が疾走し、レオパルドンやボルトロンがバトルするさまに、そのスジの読者は狂喜したものでした。

そんな『ゲームウォーズ』が映画化される、それもスピルバーグの手によって! スピルバーグによる有名小説やコミックの映画化は、ガッカリする結果になることもままあるのですが、予告をみる限り誰もが納得する映画化のようです。また、スピルバーグが全作品に渡って追い求めてきたテーマ「大人になること」「Homeを求めること」も当然のように含まれているでしょう。

そこで、これまでのスピルバーグ作品を振り返ると共に、『レディ・プレイヤー1』とその原作『ゲームウォーズ』について解説するのニコ生放送をお送りします。

アシスタントとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。



○5月3日(木)20時~

「『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はなにがインフィニティなのか」

4/27に期待の新作映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開されます。

究極のお祭り映画にしてイベント・ムービーである本作を観ない人なんていないと思いますが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズもこれで19作品目、ここからMCUに入るのに躊躇している人もいるかもしれません。

そこで、これまでのマーベル映画作品を振りかえると共に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を100倍楽しめるような放送をお送りします。

ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。



○5月26日(土)20時~

「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」

『仮面ライダーアマゾンズ』はシーズン1、2がAmazonプライム・ビデオで独占配信されている特撮シリーズです。

いわゆる平成ライダー1期のスタッフが『アギト』でも『ファイズ』でも『カブト』でもやれなかった仮面ライダー、あるいは石ノ森ヒーローとしての限界描写を突き詰めたような内容で、自分はおおいに楽しみました。

そんな『アマゾンズ』がこの春『仮面ライダーアマゾンズ完結編(仮)』として、劇場公開されるそうです。それも、これまで意欲作(と自分には思える)春のスーパーヒーロー大戦映画枠を廃止してまで公開する劇場版です。未だ詳細な公開日が発表されていないことが気になりますが、大いに期待しています。

そこで、これまでの『仮面ライダーアマゾンズ』を振り返ると共に、あるいは石ノ森ヒーローとしての『アマゾンズ』に迫りつつ、劇場版を予想するニコ生放送をお送りします。

今度のシロタロスは裏切らないぜ!

アシスタント兼ゲストとして、友人の虹野ういろうさんをお招きする予定です。




○6月初頭(日程未定)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年6月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○5月5日(土)開場12時、開演13時~

「山田玲司とDr.マクガイヤーのエロコンテンツバトル」 in 阿佐ヶ谷ロフトA

漫画家山田玲司とDr.マクガイヤーによるプレゼンバトル第二弾。

今回のバトルテーマは素直に「エロコンテンツ」!

「実はエロい」「意外にエロい」「本当はエロでしかない」……漫画やテレビや映画やその他のコンテンツについて、熱くトークバトルします。

果たしてどんなエロ話が飛び出すのか?!

イベント詳細は↓

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/86342

チケットは4/6 12時より↓から購入できます!

http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002257405P0050001P006001P0030001






○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、前回に引き続いて藤子不二雄Ⓐ作品、特に『怪物くん』について書かせて下さい。



●怪獣ブームと『怪物くん』

その昔、「怪獣ブーム」と呼ばれる社会現象が何度かありました。

最初のそれは1966年~1968年の間とされています。TVでは、1966年に『ウルトラQ』『ウルトラマン』『マグマ大使』が放映されていました。映画館では『ゴジラ』『ガメラ』シリーズに加えて『大魔神』が放映され、更に『ガッパ』『ギララ』で日活と松竹が怪獣ブームに「参戦」した時期です。

『怪物くん』は1965年に『少年画報』にて連載されましたが、その人気から、1967年から『週刊少年キング』でも連載が始まりました。両者の連載中の1968年に(最初の)アニメ化もなされています。藤子不二雄Ⓐなりに、怪獣ブームに「参戦」したわけです。


映画を愛する文学青年のⒶですので、単にブームに乗っかったわけではありません。Ⓐが参照したのはハリウッド黄金期の怪獣映画――ユニバーサル・スタジオが製作したホラー映画・スリラー映画・SF映画、いわゆるユニバーサル・モンスターズ・シリーズや、それらをリメイクしていたハマー・フィルム・プロダクションのモンスター映画などでした。

『魔人ドラキュラ』(1931)、『フランケンシュタイン』(1931)、『ミイラ再生』(1932)、『透明人間』(1933)、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)、『狼男』(1941)、『大アマゾンの半魚人』(1954)『フランケンシュタインの逆襲』(1957)、『吸血鬼ドラキュラ』(1958)、『フランケンシュタインの復讐』(1958)……こういった映画群を、Ⓐが基礎教養として愛好し、愉しんでいたことは間違いないでしょう。

怪物王家の皇太子である怪物くんのお供の三人としてドラキュラ、オオカミ男、フランケン(シュタインの怪物)が登場するのはこれらに出てくるクラシックなモンスターたちを参照しているからです。だからこそ、半魚人や透明人間やミイラ男もセミレギュラーのような形で出てきます。


おそるべきは、彼ら全員がキャラクターとして「立っている」ことです。

Ⓐ特有の絵柄でディフォルメされているのは勿論のこと、「ざます」「がんす」「フンガー」「プハーイ」「デス」といった語尾や口癖を必ず持っていること、トマトジュースを飲む、料理人、怪物ランドの調査官やエージェント、エジプト式骨接ぎ法の達人といった漫画的設定の追加……といった数々の仕掛けで、見事にⒶ漫画のキャラクターとなっています。



●『怪物くん』とパロディ

更に、『怪物くん』には様々なモンスターや怪獣――「怪物」たちが登場します。


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たとえば、ことあるごとに登場したゴリラキングとガブロは、当然1962年に大ヒットした『キングコング対ゴジラ』を参照したのは書くまでもないでしょう。他に、翼竜型怪獣のドランも登場します。


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大映怪獣からは、明らかに大魔神をモデルにした「ハニワくん」や、カメ型怪獣のガメロが出てきます。


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ノンビラスはどことなく円谷怪獣を連想させますね。


ここまでは、リアルタイム読者である子供たちに元ネタのはっきりしたパロディとして理解されたことでしょう。

しかし、凄いのはここからです。


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まず、不潔な生活をしていた人間が変化したハエ男、これはどう考えても『ハエ男の恐怖』の蠅男が元ネタです。現在ではクローネンバーグの『ザ・フライ』のリメイク元となったことで有名ですが、当時のリアルタイム読者である小学生は『怪人ハエ男の恐怖』なんて絶対に観ていなかったはずです。


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『怪物くん』には悪役として宇宙怪物や宇宙人が登場しますが、何度も登場する「ベラボー怪星人ベム」の名前は、テレビドラマ『My Favorite Martian』の邦題『ブラボー火星人』からとられています。地球人を操るために使う星型のマークは、DCコミックスのスターロに似ていますが、『宇宙人東京に現る』のパイラ人からかもしれません。


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「ピラニアボーイはこわいぞ!」には、熱帯魚店のピラニアから変化したピラニア人間が大量に登場しますが、どうみても『インスマスを覆う影』のダゴンです。後述する悪魔組織デモーニッシュの悪魔フータンに「アンブローゾ!」という呪文で操られるのが、またクトゥルーっぽいです。


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後述する「ぼくは悲しい怪物っ子よ」に登場するウル星人は、どこからどうみても『宇宙水爆戦』に登場するメタルーナ・ミュータントだったりします。


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セミレギュラーであるクラゲ型怪物グラゴンは、クラーケンでしょうが、デザインは『金星人地球を征服』の金星ガニによく似ています。


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他に、「ドクター・ノオ」「スルメシュ」「ザ・モンスターズ」なんてのも出てきますが、さすがに「ポッポ・ジョーロ」はアニメ版だと改名を余儀なくされていましたね。


映画好きなⒶらしく、怪物たちが役者として映画に出演するという回も定期的にあります。「みよ!怪獣ウエスタン」でも「三匹の怪物サムライ」でも『用心棒』のパロディをやったりしているところに、Ⓐの黒沢好きっぷりが伺えます。



●『怪物くん』の魅力

『怪物くん』は、基本的には子供向け漫画の王道をゆく、明朗快活・健康的な作品です。

なにが良いかって、まず主人公である怪物くんの「怪物王国の皇太子」という設定が良い!

『怪物くん』には、映画やテレビでみたことのある「怪物」たちが大量に登場します。漫画的ディフォルメが施されているものの、「怪物」には違いないので、オトナたちは大いに怖がります。


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時々、「怪物」たちがリアルなタッチで描かれるのも効果的です。急に絵柄が変わる演出は、今となっては日本漫画のお家芸ですが、Ⓐは『シルバークロス』の時期から取り入れ、『怪物くん』ではより効果的に使い始めています。これは、急に絵柄が変わるというギャグでありつつ、人(オトナ)によってはこんなに怖がる存在であることを示す演出なわけです。


しかしそんな「怪物」たちは、誰も彼も怪物くんに対してだけは「ぼっちゃま」とかしづきます。

中には怪物くんに対して反抗的だったり、生意気な「怪物」もいますが、怪物くんは誰よりも強いので、最後にはリスペクトを得ます。


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また、たとえ宇宙怪物であっても、喧嘩のような闘いの後は「同じ怪物同士じゃないか」と赦し合い、尊敬を勝ち得るガキ大将的ノブレス・オブリージュの持ち主でもあります。


怪獣ブームの頃の子供たちなら誰でも、怪獣と友達になりたいと一度は考えたことでしょう。もっといえば、「怪物」の親友や恋人や召使や配下の軍団を持ちたいと考える者もいたでしょう(『スター・ウォーズ』のモス・アイズリーの酒場やジャバの宮殿から『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人まで、この価値観を理解する欧米人のクリエイターも存在します)。

誰もが怖がるモンスターとは異なり、どことなく愛嬌もしくは神性があることが日本の怪獣(あるいは妖怪)との違いである、というのはよくいわれる言説ですが、『怪物くん』における「怪物」たちは、たとえドラキュラや狼男のようなユニバーサル・モンスターズの流れを汲むキャラクターであっても、後者に近いわけです。

「居候もの」漫画が備えるダブル主人公システムにより、読者はそんな怪物君の気分になったり、怪物くんのような親友がいるヒロシに感情移入して人外魔境・地底獣国な怪物ランドへの里帰りに付き合ったりして、大いに愉しむことができるのです。これを王道的な子供向け漫画と評さずになんと評せば良いのでしょうか。



●『怪物くん』におけるⒶのブラックユーモア

『怪物くん』の連載は1965年から1969年まで、都合5年にわたって続きました。連載期間こそ『忍者ハットリくん』と同じでしたが、『ハットリくん』が連載された『少年』が月刊誌であったのに比べ、『怪物くん』が連載された『少年画報』や『週刊少年キング』は隔週刊誌・週刊誌という違いがありました。藤子不二雄(Ⓐ)ランド版単行本も、『ハットリくん』が4巻しか刊行されていないのに比べて、『怪物くん』は21冊も刊行されています。


単行本21冊分も描かれているせいか、『怪物くん』の中にはドキリとさせられるエピソードがあります。