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マクガイヤーチャンネル 第265号 2020/3/25
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おはようございます。

先週は『ブラックパンサー』生実況に「PCエンジンmini発売記念 おれたちのPCエンジン」と2回放送を行いましたが、如何だったでしょうか?

どちらもゲストとイチャイチャしながらお送りする楽しい放送となり、満足しております。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○4月6日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年4月号」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○4月29日(水)19時~「若者からおじさんまでの『十三機兵防衛圏』(仮)」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)

昨年11月に発売されて以来、熱狂的にヒットしているゲーム『十三機兵防衛圏』。自分もプレイしましたが、死ぬほど面白いです。「いま」作られるべきアドベンチャーゲームとして完成度の高さは勿論のこと、若者にとっては新鮮でおじさんは泣く要素が満載なのがニクいところです。2019年オタク大賞受賞も納得の作品です。

そこで、ゲームクリエイター神谷盛治やヴァニラウェアの歴史を振り返りつつ、アドベンチャーゲームやSFとしての『十三機兵防衛圏』の魅力に迫るような放送を行います。

ゲストとして漫画家の大石浩二さん(https://twitter.com/k_marudashi)と女優・タレントの結さん(https://twitter.com/xxxjyururixxx)に出演して頂く予定です。



○5月10日(日)19時~「『やれたかも委員会 童貞からの長い手紙』完結記念 吉田貴司と童貞賛歌(仮)」

取材協力しました『やれたかも委員会』のcase024「童貞からの長い手紙」(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)が完結しました。10話から成る、堂々たる完結でした。単行本4巻はまるごと「童貞からの長い手紙」になるそうです。

これを記念して、著者の吉田貴司先生(https://twitter.com/yoshidatakashi3)をお招きし、執筆の裏話や、やれたかも話、童貞話をお尋ねします。ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063



○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109


また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

https://macgyer.base.shop/items/25929849


合わせてお楽しみ下さい。




さて、今回のブロマガですが、ブラックパンサーやPCエンジンへの思い入れや思い出は次回描くとして、映画も公開されたハーレイ・クインについて書かせて下さい。


●ガールズ・エンパワーメント映画としての『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が3/20より公開されています。『スーサイド・スクワッド』で映画界にデビューしたハーレイ・クインの初の単独映画です。

新型コロナウイルスの影響で沢山の映画が公開延期となる中、きちんと公開予定日に公開されたのが嬉しいところです。アメリカでは先月頭に公開済みなので、あまり延期することができず、無理して公開したのかもしれません。


ハーレイ・クインは1992年にテレビアニメ『バットマン:ジ・アニメイテッド・シリーズ』に初登場し、その後コミックに「逆輸入」されたキャラクターです。最近話題のアメコミ映画で看板を張るヒーローのほとんどが1930から60年代に誕生していること(スーパーマンは1938、バットマンは1939、キャプテン・アメリカは1941年、スパイダーマンは1962年、アイアンマンは1963年誕生)を考えると、かなり若いキャラクターといえるでしょう。

しかし、ハロウィンになると町には量産型ハーレイ・クインがあふれ出します。これは渋谷だけではなく、世界的な現象です。わずか25年ちょっとで、ハーレイ・クインは世界的なキャラクターになったのです。


この映画、原題は”Birds of Prey (and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn)”です。つまり、ハーレイ・クインよりもDCの女性スーパー・ヒーロー・チームであるバーズ・オブ・プレイの方が先にくるわけですね。


で、いわゆるガールズ・エンパワーメント・アクション・ムービー――年齢・人種・職業も様々な女性たちがチームを組んで、男たちに一泡吹かせてやるぜ的バトルアクションを繰り広げる映画――として考えれば、映画『ハーレイ・クイン』は割とよくできているわけですよ。

幼女であるカサンドラ・ケインからハーレイよりも年上なレニー・モントーヤまで年齢も様々、人種もアジア人・黒人・ヒスパニックと白人に偏らず、敵にも味方にもLGBTQを用意し、監督はアジア系アメリカ人女性であるキャシー・ヤン……と、多様性ばっちりな座組です。


更に、基本的には、恋愛依存症だったハーレイ・クインが一人の人間として自立するまでを描いた話である、というのもガールズ・エンパワーメント・ムービーとしての本作の優れた点です。「バーズ・オブ・プレイ」というタイトルが付きながらも、本作はハーレイ・クインの視点で映画が始まり、ハーレイ・クインのナレーションが全編を覆う、ハーレイ・クインの物語です。

特に、時間軸がシャッフルされ混乱する前半から、段々と映画の時制が一つにまとまっていく後半という語り口の変化が、ジョーカーと別れたことで精神的にショックを受けるも、段々と立ち直っていき遂には「覚醒」するハーレイ・クインの精神状態にリンクしているところが興味深い――というような内容の映画評を北村紗衣がキネマ旬報に書いていましたが、自分もそう思います。

最近のガールズ・ムービーとしては、『ゴーストバスターズ(2016)』の10倍、『オーシャンズ8』、や『チャーリーズ・エンジェル(2019)』の3倍くらい面白いです。

勿論、カートゥーンではじまったり、ローラーボールに参加したり、リスのぬいぐるみがイマジナリーフレンドだったりと、後述するオリジンやコミックへの敬意や目配せも忘れていません。



●サムシング・サプライズ

しかし一方で、どこまでいっても「割とよくできた映画」止まりであるという問題もあります。

まず、マーベル映画というかMCU作品と比べて、あまりサプライズが無いという問題があります。かならず中盤もしくはクライマックスに映画全体をひっくり返すようなギミックを用意する最近のMCU作品と比べると、「様々な女性ヒーローが集まって男性ヴィランに一泡吹かせる」という展開に、予定調和以外のものを感じないのです。

ジャンルとしてのガールズ・エンパワーメント・ムービーが日々更新されているという問題もあります。

たとえば最近公開された『ハスラーズ』は「女の子たちが頑張って男たちに一泡吹かせる」の先にあるものを描き、ジャンルを更新した映画といえるでしょう。映画の後半でジェニファー・ロペスやコンスタンス・ウーがみせる弱さや哀愁は、これまでのガールズ・ムービーでは描かれなかったものであると同時に、女性しか持ちえないものでもありました。ガールズ・ムービーの範疇に入るかどうかは見方によりますが、『スキャンダル』『ジュディ 虹の彼方に』は同種の「辛さ」や「ままならなさ」がテーマの一つになりました。

これらに比べると、映画『ハーレイ・クイン』の新しさは、新しい女性ヒーローが登場しただけ、ともいえます。もっといえば、映画の語り口は『デッドプール』そっくりですし、プロットはよくあるケイパーものです。素敵なサムシングが足りないのです。



『バットマン&ハーレイ・クイン』の素晴らしさ

そんなことを想いながら、ハーレイ・クインの産みの親(の一人)であるブルース・ティムが製作総指揮と脚本に参加したOVA『バットマン&ハーレイ・クイン』を見返したのですが、やっぱり面白かったです。

『バットマン&ハーレイ・クイン』は1995年に終了した『バットマン:ジ・アニメイテッド・シリーズ』と同じ世界観であり、22年ぶりの続編ともいえる作品です。

この作品、とにかくハーレイ・クインに対する産みの親の愛が詰まっています。