おはようございます。
コロナウイルスがオーバーシュート(この言葉、今回始めて知りました)しそうな昨今、如何お過ごしでしょうか?
こんな時は家に閉じこもって配信で『アベンジャーズ・アッセンブル』や『スティーブン・ユニバース』をイッキ見したり、PCエンジンminiしたりするのが一番ですよね。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○4月6日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年4月号」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)
・追悼志村けん
・最近のコロナウイルス
・最近のPCR
・『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○4月29日(水)19時~「若者からおじさんまでの『十三機兵防衛圏』(仮)」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)
昨年11月に発売されて以来、熱狂的にヒットしているゲーム『十三機兵防衛圏』。自分もプレイしましたが、死ぬほど面白いです。「いま」作られるべきアドベンチャーゲームとして完成度の高さは勿論のこと、若者にとっては新鮮でおじさんは泣く要素が満載なのがニクいところです。2019年オタク大賞受賞も納得の作品です。
そこで、ゲームクリエイター神谷盛治やヴァニラウェアの歴史を振り返りつつ、アドベンチャーゲームやSFとしての『十三機兵防衛圏』の魅力に迫るような放送を行います。
ゲストとして漫画家の大石浩二さん(https://twitter.com/k_marudashi)と女優・タレントの結さん(https://twitter.com/xxxjyururixxx)に出演して頂く予定です。
○5月10日(日)19時~「『やれたかも委員会 童貞からの長い手紙』完結記念 吉田貴司と童貞賛歌(仮)」
取材協力しました『やれたかも委員会』のcase024「童貞からの長い手紙」(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)が完結しました。10話から成る、堂々たる完結でした。単行本4巻はまるごと「童貞からの長い手紙」になるそうです。
これを記念して、著者の吉田貴司先生(https://twitter.com/yoshidatakashi3)をお招きし、執筆の裏話や、やれたかも話、童貞話をお尋ねします。ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
○5月18日(月)19時~「『イップ・マン 完結』公開記念 イップマンとドニー・イェン」
ドニー・イェン主演作にして現時点での代表作といっていい『イップ・マン 完結』が5/8より公開されます。中華圏で大ヒットし、イップ・マン・ブームを巻き起こしたシリーズ4作目にして完結編とされています。また、キャラクター同士のやりとりを台詞ではなくアクションでみせる、ウィルソン・イップ監督の最新作でもあります。
これを記念して、アクション俳優ドニー・イェンや監督ウィルソン・イップのフィルモグラフィー、功夫映画やイップマンについて解説する放送を行います。コロナウイルスで公開延期されないことを祈るばかりです。
○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
https://macgyer.base.shop/items/19751109
また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
https://macgyer.base.shop/items/25929849
合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、志村けんについて書かせて下さい。
●志村けんの誕生
高校生までコロコロコミックを読み、半ズボンを履いていたおれですが、志村けんの番組もずっと観続けていたわけですよ。
「最後の喜劇人」「コントの神」「日本の宝」と、今や誰もが賞賛と敬愛を惜しまない志村けんですが、『8時だョ!全員集合』時代の志村けん(と加藤茶)は、子供たちにとってのヒーローであり、PTAにとっての敵でした。
志村けんの笑いは、特異な動きとドリフお得意の音楽的なバックグラウンドに則った台詞回しで、うんこ・ち○こ・しっこ・ま○こ……の代わりにおっぱいをフィーチャーし続けるというものであり、世の中の良識を下ネタで穢すことが笑い(の一つ)だったのです。
ドリフのコントは、圧倒的な家父長的権力を持ったいかりや長介に対し、「子供」であるその他のメンバーが、時に従順に、時に悪ガキ的に、時にイノセントを通り越した馬鹿のようにふるまうというものでしたが、中でも志村けんのそれは圧倒的で、全ての幼稚園児や小学生にとっての憧れでした。
土曜日の20時というゴールデンタイムに、おっぱいや子供のち○こがモザイク無しで当然のようにテレビ放映されていたことを、今の若者は信じられないかもしれません。しかしこれは事実なのです。
それ故に志村けんと加藤茶はPTA――というか世の中の良識の敵であり、つまりは子供たちのヒーローでした。ほとんど全ての幼年雑誌ではドリフターズのコントや世界観を元にした漫画が連載され、ドリフのメンバーのイラストがあしらわれた茶碗や湯飲みといったグッズが家庭に一つはあり、PTAがアンケートで選ぶ「子どもに見せたくない番組(当時は「ワースト番組」と呼ばれていました)」の1位を『全員集合』が独占し続けました。後年になりますが、PCエンジンの初期ソフトとして『カトちゃんケンちゃん』が作られ、ケンちゃんラーメンがいつまでも新発売され続けたのも、同じ理由によります。大人たちの噂で、麻布の汚い飲み屋に夜な夜な志村けんが現れると聞けば、大人になったら絶対行こうと心に誓ったものでした(多分、麻布十番の名店「あべちゃん」です)。
●志村けんの低迷
その後、『全員集合』は『オレたちひょうきん族』と「子どもに見せたくない番組」の一位を争うようになり、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』も終了し、『志村けんのだいじょうぶだぁ』から石野陽子が卒業すると、志村けんは明らかに低迷しているようにみえました。
『みなさんのおかげです。』が始まったのが88年、『ごっつええ感じ』が91年、『やるならやらねば』が92年、とんねるず・ダウンタウン・ウンナンといった下の世代が冠番組で新しい笑いを作り出し、一方でバブルも弾け、今更志村けんでも無いだろうという時期です。
96年に出回った「志村けん死亡説」は、この低迷を世間が雰囲気として敏感に察知した結果でしょう。
しかしおれはずっと志村けんの番組を観続けていたのですよ。
今でも覚えているのは、家族旅行した際、スペシャル版の『バカ殿』を観ていたら何故か同行していた弟の友達が「まだ志村けんなんて幼稚なものみているの!」と言い放ったことです。彼によれば志村けんの笑いは単なる下ネタと見た目や嬌声がおかしいギャグでしかない低レベル極まりないもので、虚実の皮膜を弄ぶような重層的面白さのあるフリートークやトーク番組に対応できない古い芸人でしかないのだそうです。
志村けんの笑いはそんなに幼稚なものではないと憤慨しましたが、彼の言い分も理解できました。当時、「お笑い第三世代」という言葉があったかどうかは覚えていませんが、昭和の喜劇人やコメディアンに属する志村けんは、いやドリフターズ全員が、とんねるずやダウンタウンが易々とこなすフリートークを苦手としていました。『ひょうきん族』のさんまやたけしがプライベートや映画・ドラマでの活動をトーク番組やラジオでネタとして喋りまくるのに対し、ドリフの面々がトーク番組やラジオに出る時は辛そうでした。いかりや長介は完全に俳優に転進していました。世界観も台本もしっかり出来上がっていたコントでは成立していたアドリブによる笑いが、その場その場で状況が変化していくトーク番組では難しそうだったのです。
●志村けんの笑いの重層性
そもそも志村けんの笑いは、『ごきげんテレビ』や『だいじょうぶだぁ』の時点で、それまでとかなり変化していたのですよ。
『ごきげんテレビ』のメインは『全員集合』や『ドリフ大爆笑』ではできなかったドラマ形式のコントでしたが、現在の目からみて重要なのはむしろ「おもしろビデオコーナー」の方でしょう。視聴者が投稿するビデオ作品の紹介コーナーなのですが、この手の投稿ビデオコーナーの元祖であり、YouTubeなどの動画共有サービスの原型とも呼ばれています(https://www.oricon.co.jp/news/2092073/full/)。
『だいじょうぶだぁ』の特筆すべき点は、おっぱい神経衰弱などの下ネタ追求は別として、コメディアンでも芸人でも俳優でもない「素人」を自身のコント世界にレギュラーキャラとして呼び込んだことでしょう。
勿論、『全員集合』でも『大爆笑』でも、アイドルや俳優をゲストとして参加させていました。しかしそれはあくまでもゲストであり、「お客様」でしかなかったわけです。独立番組となった『志村けんのバカ殿様』でも、大事なツッコミ役である筆頭家老は先輩コメディアンである東八郎に任せていました。
具体的にいえば、つまり田代まさしや桑野信義や松本典子をレギュラーとして参加させたことなのですが、中でも石野陽子(現いしのようこ)との夫婦コントは凄まじかったです。
実は、志村は同じような夫婦コントを過去に『大爆笑』で小柳ルミ子や太地喜和子を相手にやっていましたが、
石野陽子とのそれは、回を重ねるごとに異様な完成度に達していきました。
もっといえば、「こいつら二人、本当につきあっているのでは?」という息の合いようになっていったのです。
その頃は真偽不明だったのですが、熱愛や同棲が週刊誌で報道されても、石野陽子は『だいじょうぶだぁ』に出演し続け、コントの完成度はますます上がっていきました。
元々、『全員集合』でも『大爆笑』でも、ドリフのメンバーが演じるキャラクターの関係性は現実のそれを反映したものでした。つまり、最年長で独裁者であるバンドのリーダーいかりや長介とその部下――という関係性です。だからこそ、時に加藤や志村がいかりやの頭をはたいたり、罠に嵌めたりするのが楽しかったわけです。
この延長線上に『だいじょうぶだぁ』での志村と石野との夫婦コントがあるわけですが、現実での関係性が名言されないところに虚実の重層性がありました。果たしてコントを離れても志村と石野は同じようなやりとりをしているのか、盛り上がってきたらコントの延長戦の世界(これは決してテレビに映りませんが、視聴者が頭の中で想像してしまう世界のことです)でも志村と石野はセックスしてしまうのではないか……そのようなことを、どうしても考えてしまうのです(同じく熱愛疑惑があった太地喜和子には抱かなかった考えでもあります)。
後に、石橋貴明やウッチャンが女子アナ相手に同様のことをやる(やってしまう)のですが、その堂々さと胆の据わりっぷりにおいて、志村と石野の夫婦コントはレベルが違っていました。そしてこれらは、お笑い番組としての新しい魅力だったのです。
だからこそ、「何かあったのではないか」と想像させる石野陽子の『だいじょうぶだぁ』からの卒業や、その後の番組のみならず志村の低迷は、納得してしまうものでした。
●志村けんの再発見
ですが、その前後から志村けん(もカトちゃん)も頑張っていたのですよ。