おはようございます。
先週は番組の準備が忙しく、ブロマガをお休みしてしまいましたが、如何おすごしでしょうか。
「若者からおじさんまでの『十三機兵防衛圏』」は大石先生や結さんのゲームや漫画の知識が豊富で、自分も新しい発見がありました。
『イップマン 継承』生実況も、飲み会気分でしまさんと楽しく行うことができました。残念ながら『イップマン 完結』は公開延期となってしまいましたが……
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○5月10日(日)19時~「『やれたかも委員会 童貞からの長い手紙』完結記念 吉田貴司と童貞賛歌」
取材協力しました『やれたかも委員会』のcase024「童貞からの長い手紙」(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)が完結しました。10話から成る、堂々たる完結でした。単行本4巻はまるごと「童貞からの長い手紙」になるそうです。
これを記念して、著者の吉田貴司先生(https://twitter.com/yoshidatakashi3)をお招きし、執筆の裏話や、やれたかも話、童貞話をお尋ねします。ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
○5月18日(月)19時~「いまだから知りたいPCRの過去・現在・未来」(『イップ・マン 完結』が公開延期となったため、企画変更となりました)
新型コロナウイルスの流行以来、PCRという言葉をニュースで聞かない日はありません。しかし「PCR」という言葉を口にする政治家やテレビに出演する医師のうち何人がPCRの仕組みについて理解しているのでしょうか。一方で、PCRは高校生物の教科書にしっかりと載り、高校生が学生実験としてPCRを行ったりしています。
そこで、キャリー・マリスによるPCR法の発明からその応用、ウイルス検査やDNA鑑定での使用の実際、応用や将来の可能性までを解説するようなニコ生を行います。
ゲストとしてお友達で編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
○6月8日(月)19時~「分断の時代のウォッチメン」
HBO製作のドラマ版『ウォッチメン』がスターチャンネルで配信されています。また、6/3にはブルーレイやDVDが発売され、ワーナーのサイトではデジタル先行配信もされています。
このドラマ版『ウォッチメン』、アメコミの『ウォッチメン』を原作としつつもザック・スナイダーが監督した映画版『ウォッチメン』のようにそのままの映像化ではなく、34年後(つまり「いま」)の架空世界を舞台にした続編のようなドラマとなっています。映画版『ウォッチメン』公開時にアラン・ムーアが「いま映画化するなら冷戦にこだわらず現代を舞台とすべきだ」みたいなことをいっていましたが、それへのアンサー・ソングのようにも思えます。今回もアラン・ムーアは原作クレジットを拒否していますが、はっきりいって面白いです。
そこで、原作コミック、映画、『ビフォア・ウォッチメン』や『ドゥームズデイ・クロック』などの関連作に触れつつ、ドラマ版『ウォッチメン』を特集する放送を行ないます。
ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)をお迎えする予定です。
○6月29日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年6月号」
詳細未定。
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
https://macgyer.base.shop/items/19751109
また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
https://macgyer.base.shop/items/25929849
合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、ニコ生放送でも取り上げた『十三機兵防衛圏』について、まとめというか補講のような文章を書かせて下さい。
●アドベンチャーゲームとしての『十三機兵防衛圏』の新しさ
『十三機兵防衛圏』、はっきり言って面白いです。
発売から半年以上経っても未だ話題冷めやらぬのもよく分かります。国内でのセールスが13万本とアドベンチャーゲーム(AVG)としてはヒットしているのですが、『ドラゴンズクラウン』は(世界で)100万本を記録したわけで、結さんの仰るようにもっと売れて欲しいところです。
プレイしていて思うのは、『十三機兵防衛圏』のAVGとしての秀逸さです。
元々AVGはロールプレイングゲームから戦闘パートを抜いて冒険(アドベンチャー)を楽しむことにフォーカスした『コロッサル・ケーブ・アドベンチャー』から始まりました。この頃から、ゲームでしか楽しめない物語をプレイヤーにどう楽しませるかがAVGのキモであったと自分は考えます。
テキスト入力方式からコマンド選択方式やポイント・アンド・クリックアドベンチャーへの進化、グラフィックでの語り方(三人称もしくは一人称)や移動の仕方(オープンワールドのような箱庭世界での地続き的移動もしくは映画の場面転換的移動)のこだわり、コマンド総当たりプレイからの回避などは、全てAVGでどのように物語を語るかという挑戦の歴史でした。
特にトピックだったのは
・シナリオ分岐と複数視点が絡み合う『EVE burst error』や『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』
・エンディング到達回数に応じて選択肢が増えることにより周回プレイが前提となる『弟切草』や『かまいたちの夜』
・複数視点に加えてザッピングしながら物語を進める『街』
などでしょう。
これらシナリオ分岐・周回プレイ・複数視点が、パラレルワールド・タイムトラベル・永劫回帰をテーマとした物語と重ね合わされると、ゲームシステムと物語がシンクロし、最大の効果を発揮することになります。シナリオ分岐を把握し、周回プレイをしまくり、複数視点を自在に移動するプレイヤーにとって、同じことをしている主人公キャラクターは他人事でなくなるのです(手法は違いますが、小島秀夫が『スナッチャー』のボリュームに代表される、必ずプレイヤーを巻き込むメタ的な手法をゲームに入れ込むのも同じ理由からでしょう)。
これはゲームでしか語りえない物語であり、この時(東浩紀のニュアンスとはちょっと違うかもしれませんが)「ゲーム的リアリズム」が生まれたのです。
『エンドレスエイト』『まどかマギカ』『君の名は。』といった映像作品は全てこのゲーム的リアリズムの影響下にありますが、日本産永劫回帰AVGは『ビューティフルドリーマー』の影響を受けているので、一周回ったともいえます(もっといえば、本作のAVG + 他のゲーム + データアーカイブという構成は『DT Lords of Genomes』に似ているのですが、残念ながらトピックになるほどヒットしなかったので結果的に似てしまったのだと思います)。
『十三機兵防衛圏』は、このシナリオ分岐・周回プレイ・複数視点を、これまでにない複雑さで用いて物語を語るのです。
まず、プレイヤーがプレイするキャラクターの視点は13人、『YU-NO』や『街』よりも大幅に多い人数です。
しかも物語のザッピングは、時系列もシャッフルされた状態で進みます。まずプロローグで13人の登場人物たちが絶望的な最終戦に参加せざるを得ない未来が提示され、そこに至るまでのお話が語られるのですが、時系列はキャラクターごとにシャッフルされるのです。1エピソードは10分足らずで終わるのですが、連続ドラマのごとく謎や新たな発見が提示され、「引き」の強いシナリオもこの構造の強さをいや増します。
同じお話を違う視点で味わうことで印象が全く変わるのが映画『羅生門』から続く複数視点ものの魅力ですが、これに時系列シャッフルと「引き」の強さが加わることで、プレイヤーの中でパズルのピースが組み合わさる快感がプレイヤーごとに異なるという新たな魅力が発生します。物語の中のキャラクターは全く気付かず、プレイヤーしか知らない気づかない出来事や関係性が、感動に繋がります。
「タイムリープなどのループものはその構造自体に読み手のけん引力を備えている。カレーのルーみたいなもので、どう作ってもある程度おいしくなる」
というのがディレクター神谷盛治の弁ですが、これはタイムリープのみならず時系列シャッフルでも発生するのだな――というサプライズが仕込んであるのも上手いです。
更にもっといえば、これらの物語が、今や絶滅寸前の『LOOM』や『七ツ風の島物語』や『夕闇通り探検隊』のような横スクロールAVG + ヴァニラウェアお得意のイラスト調(またはドット絵調)の2Dグラフィックスで語られるのも大きな魅力の一つです。『オーディンスフィア』から引き続く舞台劇的な仕掛けもあります。
なによりも、キャラクターの動作や、背景でのちょっとした動きもAVGの謎解きのトリガーとなっているのですが、これらが全て2Dグラフィックスで描かれ(しかもこれまでカラフルな色使いを用いていたヴァニラウェア過去作とは対照的に、色数を抑えてグラデーションでみせる絵が)、アニメーションすることが、自分のようなおっさんゲーマーにとっては愛おしいことこの上ないです。
●80年代版『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』としての『十三機兵防衛圏』
『十三機兵防衛圏』には神谷盛治が青春を過ごした80年代のきらきらしたもの――少女マンガやSFロボットアニメやSF映画やアイドルといった、オタクが大好きなものが沢山詰まっています。だからおっさんにとって愛おしいことこの上ない……いや、多分本作は70年代を知らない若者にとっての『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の如く、80年代を全く知らない若者にとってもノスタルジーを感じられることでしょう(面白いことに、本作は1945年・1985年・2025年・2065年・2105年の5つの時代を舞台としていますが、未来である2025年・2065年・2105年にもノスタルジーを感じてしまいます)。
これは、ディレクターである神谷盛治が、注意深く計算して要素を入れ込んだ結果だと思います。
以下ネタバレ