はじめに

孫子に、「敵を知り、己れを知れば、百戦あやうからず。敵を知らずして、己れを知れば、一勝一負す。敵を知らず、己れを知らざれば、戦うごとに必ずあやうし」という言葉がある。

一見あたり前の事に見えて、これが極めて難しい。

自己について判断し、相手について判断することは、次に私たちがとる行動の前提になる。

私たちにはもともと、「将来に向かってこうしたい」「こうありたい」という願望がある。だが自分の客観的位置、相手の客観的な位置によっては、自分の願望を実現するのは難しくなってしまう。

そのため、自己の願望を実現できるように、自分の客観的位置であるとか、相手の力を歪めて見るような力が働くのが人間である。こうした誤った判断を避けるうえで、極めて有効な手段は、第三者の評価に耳を傾けることである。

この本でしばしば指摘することになるが、日本の特色は①孤立性と②均一性にある。

「個」を排する力がど