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10月5日(土)に開催された第13回文化レクリエーションは、東京・南青山の根津美術館「美しきいのち ―日本・東洋の花鳥表現―」と東京・広尾の山種美術館「大観・春草・玉堂・龍子 ―日本画のパイオニア―」という、文化レクとしては初めてのダブルヘッダーでした。ダブルヘッダー、そういえば近年のプロ野球ではとんと開催されなくなりましたね。
【新創開館10周年記念 企画展】美しきいのち ―日本・東洋の花鳥表現―
2019年9月7日(土)〜11月4日(月・祝)
【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】大観・春草・玉堂・龍子 ―日本画のパイオニア―
2019年8月31日(土)〜10月27日(日)
10月になっているにもかかわらず最高気温が30度を超えたという真夏日、汗をかきながらまずは南青山にある根津美術館へ。筆者個人は初めて訪れるこの美術館、根津という単語にひょっとして?と思ったら、やはり明治時代の実業家・初代根津嘉一郎の所蔵品による美術館でした。東武鉄道沿線で育った筆者が「名前は知ってる〜」程度ながら認知していた実業家と、そのコレクション。今回ここへ訪れるまではそのすさまじさも当然知らず、展示美術品以外の部分でもすごさを思い知ることになったのです。
- 根津美術館エントランス -
- 根津美術館エントランス -
まず受付直後のホールの、庭園に面した全面ガラス壁沿いに中国の石仏が展示してあります。そのカジュアルな雰囲気に面食らいますが、おかげで間近で見ることができる親しみやすさがありました。ありがたく拝むのでなく、遠慮なく至近距離でじろじろと覗き込みました。
本企画展は動植物がモチーフのものということで、比較的親しみある感じの作品が多いかなと期待して行きました。そして実際、描かれている生き生きとした動物・そこに咲く花や草木には、時代を経ても変わらない美しさとそれを人が愛でる感覚が見えて、ほんの少し安堵感があったのを覚えています(謎)。
あと、本展に限ったことではなく古今東西どこのものでもそうですが、吉祥を願ってのモチーフなど「人の想い」をのせた作品も普遍的なもののようにあって、そうした縁起物もまた人々の文化や精神を豊かにしてきたのかなと、こうしたものを見るたび思います。
また、本企画展では同時開催で「仏教美術の魅力」「古代中国の青銅器」「刀装具 ―驚きのわざ―」「夜長月の茶」「宝飾時計」もテーマ展示されていました。思いがけずこちらも興味深いものがたくさんありました。刀装具はおもに「縁頭(ふちがしら)」の展示だったのですが、本当にすごい工芸品でした!3〜4センチほどの小さなパーツに精細な装飾がほどこされていて、こんな装飾品の世界があるのを初めて知りました。これは武士の刀自慢アイテムですわ……。
古代中国の青銅器にも興奮しました。こちらは殷の時代の青銅製のカメなどが主な展示でしたが、
饕餮文(とうてつもん)と呼ばれる中国の文様や装飾がものすごい迫力です! 昨年にMAAの文化レクでの「縄文 ―1万年の美の鼓動」展で見た縄文土器のようなインパクトにすっかりやられてしまいました。「饕餮」とは中国神話の怪物のことのようで、なるほど、おどろおどろしく力強い文様や装飾でそのイメージが名付けられたのかもと納得。筆者の個人的余談ですが、饕餮という言葉自体は好きな漫画に出てきて知っていた(上記にある元の意味は知らなかったのですが)ので、その意味でも「わ~」とひとり色めき立っていました。
個人的にインパクトの強かった作品がこちら。
「鶉図」伝・李安忠(この精細さ、どうやって描いたのか……)
「竹狗子図」長沢芦雪(ゆるキャラかな?的なかわいさ)
「南天双鳩図」呉春(鳩も花も美しい……くるっぽー)
「饕餮文觚(とうてつもんこ)」(ラッパのような酒器。格好いい)
「饕餮文斝(とうてつもんか)」(3つの剣が刺さったような酒器。格好いい)
「双羊尊」(背中合わせの2匹の羊かわいい)
「魚尽図大小縁」(タコや魚がコミカルな縁)
「染付水鳥文盃」(思わず笑っちゃう、水鳥の表現が秀逸)
そして根津美術館には大きな日本庭園があります。庭内には庭園らしくひらけた場所もありますが、起伏のある場所、鬱蒼とした木々に囲まれた日陰な場所、複数の茶室、そしてカフェもあり、
庭内の広さは予想以上のものでした。館内を回ったあとの残り少ない時間では回りきることができず、これはいつかまた来なくちゃと再訪を決意して根津美術館をあとにしました。
- 根津美術館の洗面所 -
- 庭園群 -
- 根津美術館の洗面所 -
- 根津美術館集合写真 -
次は山種美術館です。
次は山種美術館です。
根津美術館から山種美術館へは徒歩で向かいました。15分ほどで到着。近年、通称「美術館通り」としてアートスポットを結んでいるようですね。参考:山種美術館アクセス案内(PDF)
こちらは昨年の「【[企画展]生誕150年記念】横山大観 ―東京画壇の精鋭―」
(http://www.yamatane-museum.jp/exh/2018/taikan.html)以来のMAA文化レク再訪です。
昨年の企画展でも横山大観以外の画家作品はいくつか展示されていたのですが、今回は横山大観と菱田春草・川合玉堂・川端龍子を近代日本画のパイオニアとしてフィーチャーしたものでした。
4人それぞれいろんな表現・作風のものがあり、つまりこれが模索しながらの新たな日本画創作活動だったのかなと思いながら見ていました。朦朧体とか、現代からするとごく普通の素敵な表現方法のひとつだと思うのですが……。当時は新し過ぎたらしく、酷評されていたとか。そうしたことからもパイオニアだったんだと、素人の自分でもわかりやすくうかがえます。
個人的なハイライトは、横山大観「楚水の巻」「叭呵鳥(はっかちょう)」、菱田春草「釣帰」「月四題」、川合玉堂「雨江帰漁図」「渓雨紅樹」「湖畔暮雪」「水声雨声」、川端龍子「鯉」「鶴鼎図」「花の袖」でしょうか(やっぱり動物はいいものですよね)。そして川端龍子さん、動物の写実が上手すぎませんかね……。
最後に、山種美術館ならではの企画「松竹梅展」がありました。館の創立者・山崎種二の希望で開催されたテーマ展覧会の作品で、横山大観・川合玉堂・川端龍子がそれぞれ担当した松竹梅テーマの絵や書が並びます。絵が上手い人は書も上手いなあ……。そして川端龍子さんの「竹(物語)」、エフェクト入っていて完全にアニメの1カットでしたね……。
- 山種美術館内喫茶店 -
山種美術館を出るころにはだいぶ日も落ち、涼しくなっていました。今回あまり座り休憩することなく、よく歩いた筆者の足の感覚はすっかり朦朧体になっていました(無理矢理オチ)が、このあとにひかえる枠(飲み会)を思い、足どりも気持ち軽くお店に向かっていったのでした。
(記:よす)
- 山種美術館集合写真 -
- 山種美術館集合写真 -