人は1日に約3万回も呼吸をしているそうです。昼も夜も休むことなく働き、体に必要な酸素を送り続けてくれる呼吸は、まさに命の基盤。また、呼吸による膨張と収縮は、全身の循環の要。呼吸の質がよくなると、心と身体が整います。
今回は呼吸・整体コーチの松永真美さんから、呼吸と心身の深い関わり、自然にラクで生きるための呼吸の作り方を学びます。松永さんはこれまでヨガやメインドフルネス瞑想、食事療法など、様々な心身を整えるメソッドを経て、現在は呼吸・整体を指導されています。
ラクに生きる呼吸のヒミツ
ラクに日々を生きるポイントは、「普段から力まない、呼吸を止めないこと」と松永さんは言います。
動作と呼吸は自然に連動しています。息が止まったり、詰まったりすると、体は当然苦しいし不快です。ところが忙しく生きる私たちは、いつのまにか苦しいことや不快なことに気づかずにいたり、それに慣れたりしてしまうのです。
松永真美さん :
そもそもなぜ不調になるのかというと、体の声をキャッチできていないから。膀胱炎とか便秘は分かりやすいですが、体の要求を聞かずに我慢して働き続けてしまった結果です。「疲れたから休もう」ができなくなっているんです。
たとえばパソコン作業をしていると、肩が凝って足がむくんでしまう。これも、パソコン作業がいけないのではなくて体の声を無視しているからだと、松永さんは言います。
試しに椅子に座って、体を前に傾けてみましょう。足を自然と前に動かしたくなりませんか? でも、多くの場合、目の前の仕事をこなす方が優先で、足を伸ばしたいという声に気がつけない。すると足はむくみますし、息も浅くなり、肩がいかりやすくなり、肩こりに。めぐりが悪く、肌の調子も悪くなってしまいます。
松永真美さん :
そうやって1日に何回も自分に不快な思いをさせているんですよ。するとフラストレーションが溜まって、人に文句を言いたくなってくる。不平不満を言う時って、口を尖らしますよね。実際にやってみると、首や肩が力みます。その状態で息を吸ってみましょう。浅くて胃のあたりが力んだ感じになりますよね。体の声を聞けなければ体は力み、呼吸も浅くなります。呼吸が浅くなれば体は力みやすくなり、精神的にも余裕がなくなる。悪循環が生まれてしまうんです。
自分の中からラクな呼吸を見つけよう。引き出す深呼吸のエクササイズ
では、無理をしない、自然な深呼吸とはどんなものなのでしょう? 自分の体の声を聞く簡単なエクササイズを紹介します。
自分なりに3回ほど大きく深呼吸します。その感覚を覚えておいてください。 正座かあぐらか、ラクなほうで座ります。体を前に倒し、おでこを床につけ、15秒ほどそのままでいます。 ゆっくり体を起こし、正座の状態に戻って静止します。 すると、息を吸いたくなりませんか? 息を吸いたいと感じたら、体が吸いたいように、吸いたい分だけ吸いましょう。鼻から吸って、口から少していねいに吐きます。 2〜4を繰り返します。最初に自分なりに深呼吸をしたときの感覚と比べてどうですか? その時よりも気持ちよく、深く深呼吸ができていませんか?
深呼吸は1回だけでなく、何度もしたくなるかもしれません。息を吸いたい、それをキャッチしたら、何度でも自分の体の欲求に応じましょう。
何回か繰り返しているうちに、自分が一番気持ちよく吸えるタイミングが分かってきます。気持ちよく吸えるのは、体がしたいことをキャッチして、それに応じたから。これは、自分と息を合わせる練習です。
15回ほど繰り返してみましょう。心身が静かになっているのを感じられませんか?
松永真美さん :
試しに、深呼吸をしたくなってもしないでいると、苦しい、不快、体が力んでくる。そんな感じがあると思います。そんな思いを、自分にさせないでほしいと思います。仕事や家事に追われて、体の声がおろそかになりがちですが、日常の中に深呼吸をしたいタイミングは何度もあると思います。そのときに、それをキャッチして応えられる自分になっていく練習です。
この引き出す呼吸のエクササイズは松永さんのインスタライブで体験できます(次回開催は5月16日14時)
この投稿をInstagramで見る松永真美 | Mami Matsunaga(@matsunaga_mami)がシェアした投稿 - 2020年 5月月2日午後11時42分PDT
次回は、体の声をうまくキャッチしながら、日常の中で無理なく呼吸の質を上げていく方法を学びます。
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松永真美(まつなが・まみ)さん
呼吸・整体コーチ/マインドフルネスコーチ。東京外国語大学卒業後、出版社に勤務。学生時代にHIVに感染(現在は一切の治療をストップ)。2007年よりサッチャデーヴァ・ダース師のもとでマインドフルネスの探求を、2014年より森田敦史氏のもとで呼吸・整体の学びをスタート。現在も探求を続けている。自分、そして自分をケアすることに向き合ってきた経験を生かし、本来の自分に気づくお手伝いをしている。https://www.nowhereme.net/
イラストレーション/若山ゆりこ