書評:とことんやさしい エネルギーの本 第2版
   山崎 耕造 著、 日刊工業新聞社
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 第2章の<考えよう地球環境>で、「地球温暖化教」をはじめとする怪しげな環境問題について論じられている以外は、よくまとまっていると思います。

 <そもそもエネルギーとは何ぞや>という話からスタート。物質はエネルギーの一形態であることは、よく知られるようになってきましたが、エントロピー増大の法則にも触れながら簡略に解説しています。

 確かに地球のエネルギー資源の大半は太陽の核融合エネルギーが変化したものですから、このように根本から説明する体裁はとても良いと思います。太陽光発電のような直接的利用だけではなく、光合成を行った植物の遺産である石炭やその植物のエネルギーを活用する動物の死体が変化した石油(非生物起源説と生物起源説があるが、本書は後者の立場)など、地球上のエネルギー資源の大部分は太陽光の恩恵を受けています。潮流や風も、太陽光で地球が温められることにより生じる現象です・

 第5章で核エネルギーに関しても詳しく述べられていますが、政治的な偏見から語られることが多い内容を、客観的にコンパクトにまとめています。

 ちなみに、東日本大震災以前、日本の電力のほぼ三分の一が原子力によるものでした。
 米国の原子力依存度は20%弱ですが、日本の総発電量にほぼ匹敵します。
 フランスでは電力の80%が原子力です。

 エネルギー利用効率については、1次エネルギーを100%とした場合次のようになります。

1)電気自動車
  発電(火力発電の効率はおおよそ40%~50%)の場合は送電ロスなど
  も考えると、約38%。電気自動車そのものの動力効率は70%ですから、
  最終的なエネルギー効率は約27%になります。

2)ガソリン自動車
  原油からガソリンへの変換効率は84%。ガソリン車の動力効率は18%
  ですから、最終的な効率は約15%になります。

 ハイブリッド車の変換効率がどの程度なのかは非常に興味深いところですが、本書では触れていません。

 現在電気自動車を<満タン=フル充電>にするには、家庭用の電源で24時間かかることを考えれば、電気自動車が普及すれば現在と比べてかなり多くの電気を消費するようになることは容易に想像できます。各家庭が乗用車を充電するだけでなく、物流トラックなどの業務用車両も充電の必要があるのです。

 最後は、月資源利用や太陽光帆船(ソーラーセイル)などのSF的話題にも触れられていて楽しめます。


(大原浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
 (JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。

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