5月25日(土)にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で行われた、劇場アニメ「薄暮」パトロン様向け試写会 東京公演(2回目)に出席しました。「薄暮」はクラウドファンディングによりアニメ制作費を募っており、私は試写会参加権付きのプラン(1万円)に出資していました。
山本寛オリジナル作品「薄暮」アニメ制作プロジェクト
https://camp-fire.jp/projects/view/11715
2018年公開予定でしたが、公開時期は遅れ、つい先日、2019年6月21日に全国映画館で上映されることが発表されたばかり。まあ、いつかは完成すると思っていましたが、公開予定までたどり着けたことは、何よりもめでたいことです。
実を言うと、試写会の日程とか、いろいろ言いたいことはあるのですが……。取りあえず、私は参加できたので、そのことは置いておきましょう。大事なのは、作品のクオリティーです。
■山本寛オリジナル作品「薄暮」の感想は?
事前のメールにも、そして上映前には山本寛監督からも説明がありましたが、私が参加した試写会の時点では“未完成”でした。ひと口に未完成と言っても、全く手を付けていない状態から完成直前まで、その範囲は広いため、詳しく説明します。
まずフル尺(約50分)の映像にはなっていました。そして声優による演技や音楽といったサウンドについては、今後編集や修正される可能性はあるにせよ、完成していたと言って問題ないクオリティーでした。問題は“絵”です。
1回見ただけなので正確な割合は分かりませんが、7割ぐらいのシーンで、キャラクターは動いていたと思います。逆に言うと、3割ぐらいは原画、あるいは絵コンテがそのままスクリーンに映し出されているという感じです。空や音楽室の外の絵を映したまま動かないシーンもあったのですが、本当は動画が入る予定だったのか、最初からプランされた演出だったのか、そこは不明です。
キャラクターが動いている、つまりアニメーションしているシーンでも、きちんと着色(処理)されているのは半分ぐらいだったと思います。正直、ここまでならば「そういう作品」と受け止めることも可能です。ちょっと甘い気もしますが、監督が「前衛的な表現」と強弁すれば、納得しても良いかなというレベルではありました。もちろん、今回は監督も「未完成」と認めていますし、そしてやはり致命的なのが“絵”の問題です。
ネタバレになるので、あまり詳しいことは書けませんが、この作品ではスケッチブックに描かれた絵が、ものすごく重要な役割を果たします。しかしスケッチブックに、絵がはめ込まれていない。さすがに「あえて白紙」という演出ではないと思うので、そこがすごく残念でした。そこできちんと絵を見せられたら、絶対泣けるような良いシーンだったんですよね。
こうした事情で「薄暮」について総合的な感想を述べるのは難しいのですが、それでも「これは完成すれば佳作になる」という手ごたえみたいなものは感じました。
まず、桜田ひよりさんと加藤清史郎さんの演技が、みずみずしくて好印象を受けました。声はしっかりと演技しているので、これに絵が乗れば良いシーンになると、容易に想像できます。また、音楽も雰囲気が出ていたと思います。音楽に見合うだけの風景が描かれれば、きっと良いシーンになるでしょう。あとは物語も良かったと思います。ネタバレにならない程度にぼかしますが、“初恋”って、ものすごく重たいものなのですが、物語の流れや登場人物のセリフから、表現できていたように思えます。
未完成のフィルムを見られたことは貴重な経験なので、個人的には今回の試写会は満足だったのですが……。何はともあれ、公開までのスケジュールも迫っており、心身ともに大変でしょうが、山本寛監督ほかスタッフの方々には、完成に向けて頑張っていただきたいと思います。