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  • 映画監督 菅原浩志のメルマガ №15 「甘い殺人兵器」/他

    2013-05-13 17:00
    330pt
    • 「甘い殺人兵器」
    • 「ポップコーンのカロリーを知っていますか?」
    • 「アメリカ社会の問題 肥満が肥満を作り出す」
    • 「ピープルズ・バック」

    映画を観る前には、人それぞれの準備がある。
    通路側の席を予約する。
    お弁当をしっかり食べる。
    飲み物とスナック菓子を用意する。
    前から10列目の中央の席に座る。
    (シネマコンプレックスが劇場を作る時、
     前から10列目の中央の席に映写や音のバランスを
     合わせたので、一番良い席と言われている)
    私の場合は、比較的お腹を空かして、
    コーヒーを飲んでから映画を観るのが習慣。
    しかし、その日は、お腹が空き過ぎていた。

    アメリカ、ロスアンジェルスの劇場で、
    映画が始まる前に、コーヒーと軽いサンドイッチか
    何かをと思い、劇場の周りの店を探した。
    「シナモンロール専門の店」が目に入った。
    シナモンロールを作り続けて25年の歴史ある店と謳っている。
    (ここがアメリカらしい。日本の虎屋さんは500年の歴史がある)
    このお店の人気商品が、
    ピーカンナッツがトッピングされたシナモンロール。
    大きさは日本のドーナッツぐらい。
    店員が、「May I help you?」
    その人気商品を頼もうとしたとき、
    値段の横の数字が目に入った。
    「1000キロカロリー」
    そのカロリー数はカツどん一杯に匹敵する。
    「Just looking, thank you.」(見ているだけ)
    と、私は店を後にした。

    カツどんと同じカロリー数を持つシナモンロールが、
    長年売られている店。
    映画「リーサル・ウェポン」ではないが、
    正に、「甘い殺人兵器」
    これが今、アメリカ社会の大きな問題になっている。

     
  • 映画監督 菅原浩志のメルマガ №14 「桜の花が灰色に見えるのは…」/他

    2013-04-30 17:00
    330pt
    • 「桜の花が灰色に見えるのは…」
    • 「神様が吹かした風?」
    • 「地球の大自然に勝るもの…」

    桜の季節が訪れると、
    いつも思い出すことがある。
    映画やテレビで活躍している女優で、
    私の作品にも、多数出演している彼女が、
    桜の木を見上げて、言った。
    「生まれ変わったら、桜の木になりたい。」
    「何で?」
    「一年に一回、皆から『綺麗だ』と言ってもらえるから」
    「……」
    個性派女優として知られる彼女の、
    正直な内面の声を聞いた思いがした。

    日本人ほど、桜が好きな国民を、私は知らない。
    桜が咲けば、木の下で、花見をし、
    桜の季節には、桜もちを食し、
    戦友を「同期の桜」と、唄った。

    日本人が好きなのは、桜の他に、
    花火とほたるがある。
    全て儚いこと。
    桜とほたるには、儚いという他に、
    もうひとつ共通点がある。
    それは、桜の花びらがヒラヒラと舞う速さと、
    ほたるが飛ぶ速さが、同じ速度なのである。
    科学的な速度計が無くても、
    私達には、素晴らしい感覚が備わっていて、
    心に響くスピードが感知できるようだ。

    五感を使って生きる。
    スマホに頼るのではなく、感覚を磨く。
    何故ならば、
    五感で感じなければ、その本当の良さは解らないのだから。

     
  • 映画監督 菅原浩志のメルマガ №13

    2013-03-31 11:00
    330pt
    • 「熱さに耐えられなくなったら、台所を出ろ?」
    • 「心の奥に宿っていたもの」
    • 「故郷を追われた人々の声に耳を澄ませて」

    東京メトロでの出来事。
    土曜日の夜22時を過ぎた地下鉄の車内。
    平日のこの時間帯なら、帰宅途中の乗客で立っている人が多いが、
    土曜日のこの時間だと、皆座れるほどの乗客数。
    一列に7人の乗客が座っている。
    その乗客の一人40代の男が、居眠りを始めた。
    段々眠りが深くなり、隣の20代の女性に寄りかかり始める。
    女性は、身体を男と逆方向に傾けるが、男は寝たまま。
    男の傾きは、あるポイントを過ぎると、
    ハッと目を覚まし、元の姿勢に戻るが、
    また深い眠りに入り、女性に寄りかかる。
    女性は、身体を傾けたり、前方向に身体を倒したりして、
    居眠りしている男の体重を避け様としている。

    女性が余りにも困っているように見えたので、
    斜め前に座っていた私は、女性に、
    「席を替わりましょうか?」
    と、声を掛ける積もりでいたら、
    地下鉄は駅に止まり、女性の目の前の席が空いた。
    これで、女性は向かいの席に移動すると確信したが、
    女性は席を移らなかったのである。
    終点に近づくにつれ、席は空き、
    目の前に空席が目立つようになっても、
    女性は席を替えようとはしなかった。

    女性と居眠りの男が、カップルや夫婦ではないことは、
    女性の嫌がり方から、はっきりしている。

    私には、この女性の行動が、
    非常に不思議な光景に映った。

    英語の言い回しに、
    「If you can’t stand the heat, get out of the kitchen.」
    直訳すると、
    熱さに耐えられなくなったら、台所を出ろ!

    このイディオムは、
    問題対処でプレッシャーが強くなり過ぎたら、
    その問題から離れろと言っている。

    目の前の問題を対処するのが精一杯で、
    物事を客観的に見ることが出来なくなる。

    問題から遠ざかる事は、
    必ずしも、問題逃避、諦めることではなく、
    視点を変えて、問題解決に繋がることになる。

    地下鉄の女性は、
    居眠りする男の体重をどうかわすか悩むより、
    席を替われば簡単に解決したであろうと思われる。

    しかし、女性は席を替わらず、
    その男の無意識な迷惑行為に、
    終点まで、耐え続けたのである。

    If you can’t stand the heat, get out of the kitchen!

    今回も私のメルマガを訪れて下さり、
    ありがとうございます。
    私の体験や経験から感じたことが、
    少しでも皆さんのお役に立てればと思い、
    このメルマガを綴っております。