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映画監督 菅原浩志 メルマガ「創刊号」
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映画監督 菅原浩志 メルマガ「創刊号」

2012-08-13 12:01

    【創刊するにあたって】

    映画を志す若者が、「映画監督になりたい」
    立派な社会人が、「映画監督することが夢だった」と、
    耳にすることがありますが、
    「映画監督募集」という求人広告を、
    見たことありますか?

    そうなんです。
    「映画監督」とは、求人広告に全く出ない職業なのです。

    ハローワークで、
    職業欄に「映画監督」
    場所「全国」
    で、検索しても、全くヒットしません。
    「助監督」でも、同じ結果です。

    つまり、全国何処でも、誰も求人していない職業なのに、
    映画監督を志す人が多い。

    このメルマガは、私のこれまでの経験から、
    映画監督を志す人々、
    映画に興味のある方々に少しでもお役に立てばと思い、
    発信するものです。

    また、「映画監督」の仕事って、何?
    そんな疑問にも、答えていきたいと思っています。

    こんなエピソードがあります。

    私の大学の先輩になるのが、
    「ゴッドファーザー」で知られるフランシス・フォード・コッポラ。
    彼が、未だ若く無名な頃、「ゴッドファーザー」の監督が依頼された。

    問題山積の現場で監督するコッポラだが、
    ベテランスタッフがトイレで、囁く。
    「彼は、自分で何をやっているのか、全くわかっていない奴だ」

    しかし、完成した映画「ゴッドファーザー」はアカデミー賞作品賞を受賞。

    ベテランスタッフが無知呼ばわりしたコッポラ監督だったのに…
    「ゴッドファーザー」の世界的ヒットは「たまたま」の「まぐれ」?
    それとも、コッポラ監督は、全てが分かっていた?

    監督の仕事とは何か?
    監督とプロデューサーの違いって?
    監督の責任とは?

    そんな事を、語っていきたいと思っています。

    そして、映画を志す若い人たちへ、
    伝えたいことがあります。

    昔、映画を志す若者から質問を受けました。
    「ハリウッドで映画監督に成りたいんだけど・・・
    どうしたらいい?」と。

    夢を持つことは素晴らしいし、大切なことです。

    ただ、夢と希望だけでは、
    山の頂上に辿り着くことは出来ません。

    頂上を目指すには、いろいろなルートが考えられます。

    どうしたら、映画監督になれるのか?
    映画監督には何が必要なのか?
    何が求められているのか?

    具体的なツールを挙げながら、
    山に登るルートを考え、
    映画を志す人々に伝えられればと考えています。

    日本の映画監督とアメリカの映画監督の違い・・・

    作った映画が、世界に通用する秘訣・・・

    俳優、女優、映画スタッフとのエピソードを交えて…

    語っていきます。

    このメルマガには、Q&A質問コーナーを設けますから、
    そこで具体的な質問をされても結構です。

    皆さんとの交流を楽しみにしています。

    【映画的エピソード】

    このコーナーでは、
    日頃の体験や見聞したことで、
    映画監督として直感的に感じたことを、
    綴っていこうと思います。

    皆さんも、何かを感じて頂ければ幸いです。

    では、そのエピソード1。

    場所はロスアンジェルスの住宅街。
    ビバリーヒルズ隣の、閑静なベル・エア。
    そこは、市内にもかかわらず、山があり、せせらぎがあり、
    鹿や狸の野生動物が沢山生息しています。
    ある日、アヒルの親子が、せせらぎから出て、
    住宅街を散歩。
    母親の後を、ヨチヨチ歩く子アヒルは、
    日本で見るカルガモの親子連れの散歩に良く似ている。

    その日は、生憎、近所に住む男性が外に居て、
    アヒルの親子に出くわした。

    男は自分の領域に侵入してきたアヒルが許せなく、
    ヨチヨチ歩くアヒルの子を追いかけ、
    ダンボールの箱を逆さまにして、捕まえてしまった。

    箱に閉じ込められたアヒルの子たち。

    男が保健所に電話をしに、その場を去った後、
    逃げたはずの母親アヒルが、
    ダンボールに近づいて来て、
    箱の横にジッと立っている。

    それを見ていた、近所の女性が、
    母親アヒルに近づくが、
    アヒルは、その場から逃げようとしない。
    ダンボールの横から動こうとしない。

    母親アヒルの目と鼻の先まで近づいた女性。
    彼女も子を持つ母親であった。

    母親アヒルは、
    決して女性と目を合わせようとしないが、
    その場を動かず、
    置物の様にジッとしていている。

    母親アヒルと母親である女性との間で、
    無言のコミュニケーションが取られているよう・・・。

    次の瞬間、
    女性が箱を持ち上げると、
    アヒルの子ども達が、いっせいに走り出し、
    せせらぎの方に脱兎の如く逃げる。
    母親アヒルも、瞬時に、
    子アヒルと同じ方向に走り出す。

    逃げたアヒルに気が付いた男が、
    大声を上げながら、アヒルを追い掛けるが、
    アヒルたちの姿は、一瞬で消えてしまっていた。

    佇む女性。
    怒る男性。

    このエピソードは、
    私が住んでいる家の前で起きたことだが、
    驚いたのは、
    人間が近づいても一歩も後ずさりせず、
    捕らわれた子アヒルの側を、
    少しも動かなかった母親アヒルの心情である。

    普通、人間でも、他人が近づいてきた時、
    本能的に距離を保つよう、下がったりするものだが、
    この母親アヒルは、人間が近づいて来ても、
    動かなかった。
    その時の母親アヒルの気持ちを考えると、
    強い母性を感じる。
    自分の身も心も、強靭な鉄の塊となり、
    大切な物を守る。

    そして、女性に無言で訴えたテレパシーのような存在。
    思いを無言で伝える能力は、
    人間を含む動植物は、本来持っているものなのかもしれない。
    それが、いつしか、
    使わなくなってしまった人間がいて、
    退化してしまったのではないだろうか・・・

    そして、アヒルを助けた女性の行為。
    「勇気」を持って行動するということ。

    「勇気」とは、
    小学校の頃、黒板の上に書かれてあったり、
    教科書でよく見る言葉でしたが、
    「勇気」そのものについて、
    教えられた記憶がありません。

    よく使われるけど、
    日本社会では、あまり実体のない言葉のように感じます。

    「勇気ある行動」より、
    「周りと異なる行動をとらない」

    本質を見極め、
    正しいことの為に行動する。

    そんなことを感じた、アヒルのエピソードでした。

    【映画の現場から】

    こちらのコーナーでは、
    現在製作中の作品の現場から、
    現状をお届けします。

    2011・3・11

    その数年前から、
    映画「ほたるの星」と「早咲きの花」が
    福島県南相馬市のゆめはっとで上映されたのがきっかけで、
    地元の方々と交流を深めていました。

    しかし、昨年の3月11日。

    その後、何度も地元を訪れ、
    避難されている人々に、耳を傾けました。

    若い時、第二次世界大戦を経験した老人が、
    「戦争より酷い」

    津波から逃れ、生き延びた女性が、
    「津波に流された方がよかった…」

    命が助かり、生き延びた人々が、
    生きていることの方が辛いと訴え、
    「死んだほうがましだ」とは、
    一体、何が起きているのでしょうか?

    21世紀の文明国日本で、
    苦しんでいる人々を助けられないのは、
    何かがおかしい。

    福島第一原発から20キロ圏内で、
    牧場を経営していた男性が、
    彼の自宅を案内してくれました。

    浪江町で相馬焼きの釜が沢山存在する地域。
    前回訪れた時は、余りの放射線量の高さに、
    車から降りることも許されなかった場所に、
    彼の自宅兼牧場がありました。

    白い防護服にマスク。
    両手には何枚も重ねたゴム手袋。
    車から降りる度に、靴の上からビニール袋を履き、
    外の土を車内に持ち込まないよう細心の注意をしての行動です。

    その中で、
    彼は、赤いジャンパーに野球帽を被り、
    手袋もマスクもなく、
    全く普段通りに、牛の世話をしているのです。

    自宅の裏山には、沢山の大きな椎茸が育っていました。

    彼が言うのです。

    「いつもは猿が来て、しいたけ盗って行くんだ。
     だから、猿を捕まえる罠まで、用意してるんだ。
     でも、今年は来ない」

    庭には、真っ赤に熟した柿の実がたわわに生っていました。

    「いつもは、鳥が来て食べるんだ。
     だけど、今年は一羽も来ないな」

    普段着のままの奥さんが言う。

    「畑の野菜に、一匹も虫が付いてないんだ。
     虫も食べないんだ。
     食べるのは人間だけだ」

    福島原発20キロ圏内に存在する浪江町。
    去年の3月11日から、時間が止まってしまったかのような町。

    20,000人居た町民は全て避難。
    町の中には、数時間立ち入りが許可された住民と警戒パトカーだけ。

    しかし、植物は道路を覆うばかりに成長し、
    屋上に上がった私を、カラスの群れが襲って来たのである。

    家を追われ、避難生活を余儀なくされている町の人々の
    「声無き声」をしっかり聞く義務を、
    私は強く感じている。
    映像に拘る人間としての責任を感じている。

    そして、時が流れても、
    3・11の現実は、今尚存在し、苦しんでいる人々が沢山いることを、
    しっかり捉えていかなければならないと感じている。

    決して風化させない為に。
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    この秋から、現地に拠点を構え、
    長期間の撮影を実施する準備中です。

    このドキュメンタリー作品の進行状況を
    これからもお伝えして参ります。

    【Q&Aコーナー】

    どんな質問でも、お待ちしています。
    愚問なんて、ありません。
    ただ、全ての質問にお答え出来ないかもしれませんが、
    全力は尽くします。

    質問はこちらまで御寄せください。
    qa-sugawara@azure-plus.co.jp

    ★Q&Aのルール★
    ・メルマガの登録アドレスから送ってください。
    ・採用する質問は、私と編集部が決めていきますので、ご理解ください。
     いただいた質問に全てお答えできないこともございます。
    ・質問は上記アドレスにメールで送ってください。
    ・いただいたメールに対しての返信は行っておりません。
    ・いただいた質問は、ブログに掲載される可能性があります。


    こんな感じで私のメルマガが始まりましたが、
    初めてのメルマガですので、
    ヨチヨチ歩きですが、
    少しずつ成長していくと思いますので、
    これからも宜しくお願いします。

    それでは、次回まで。

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    『ぼくらの七日間戦争』の映画監督 菅原浩志のメルマガ
    更新頻度: 毎月2本程度
    最終更新日:2013-06-01 00:00
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