【創刊するにあたって】
映画を志す若者が、「映画監督になりたい」
立派な社会人が、「映画監督することが夢だった」と、
耳にすることがありますが、
「映画監督募集」という求人広告を、
見たことありますか?
そうなんです。
「映画監督」とは、求人広告に全く出ない職業なのです。
ハローワークで、
職業欄に「映画監督」
場所「全国」
で、検索しても、全くヒットしません。
「助監督」でも、同じ結果です。
つまり、全国何処でも、誰も求人していない職業なのに、
映画監督を志す人が多い。
このメルマガは、私のこれまでの経験から、
映画監督を志す人々、
映画に興味のある方々に少しでもお役に立てばと思い、
発信するものです。
また、「映画監督」の仕事って、何?
そんな疑問にも、答えていきたいと思っています。
こんなエピソードがあります。
私の大学の先輩になるのが、
「ゴッドファーザー」で知られるフランシス・フォード・コッポラ。
彼が、未だ若く無名な頃、「ゴッドファーザー」の監督が依頼された。
問題山積の現場で監督するコッポラだが、
ベテランスタッフがトイレで、囁く。
「彼は、自分で何をやっているのか、全くわかっていない奴だ」
しかし、完成した映画「ゴッドファーザー」はアカデミー賞作品賞を受賞。
ベテランスタッフが無知呼ばわりしたコッポラ監督だったのに…
「ゴッドファーザー」の世界的ヒットは「たまたま」の「まぐれ」?
それとも、コッポラ監督は、全てが分かっていた?
監督の仕事とは何か?
監督とプロデューサーの違いって?
監督の責任とは?
そんな事を、語っていきたいと思っています。
そして、映画を志す若い人たちへ、
伝えたいことがあります。
昔、映画を志す若者から質問を受けました。
「ハリウッドで映画監督に成りたいんだけど・・・
どうしたらいい?」と。
夢を持つことは素晴らしいし、大切なことです。
ただ、夢と希望だけでは、
山の頂上に辿り着くことは出来ません。
頂上を目指すには、いろいろなルートが考えられます。
どうしたら、映画監督になれるのか?
映画監督には何が必要なのか?
何が求められているのか?
具体的なツールを挙げながら、
山に登るルートを考え、
映画を志す人々に伝えられればと考えています。
日本の映画監督とアメリカの映画監督の違い・・・
作った映画が、世界に通用する秘訣・・・
俳優、女優、映画スタッフとのエピソードを交えて…
語っていきます。
このメルマガには、Q&A質問コーナーを設けますから、
そこで具体的な質問をされても結構です。
皆さんとの交流を楽しみにしています。
【映画的エピソード】
このコーナーでは、
日頃の体験や見聞したことで、
映画監督として直感的に感じたことを、
綴っていこうと思います。
皆さんも、何かを感じて頂ければ幸いです。
では、そのエピソード1。
場所はロスアンジェルスの住宅街。
ビバリーヒルズ隣の、閑静なベル・エア。
そこは、市内にもかかわらず、山があり、せせらぎがあり、
鹿や狸の野生動物が沢山生息しています。
ある日、アヒルの親子が、せせらぎから出て、
住宅街を散歩。
母親の後を、ヨチヨチ歩く子アヒルは、
日本で見るカルガモの親子連れの散歩に良く似ている。
その日は、生憎、近所に住む男性が外に居て、
アヒルの親子に出くわした。
男は自分の領域に侵入してきたアヒルが許せなく、
ヨチヨチ歩くアヒルの子を追いかけ、
ダンボールの箱を逆さまにして、捕まえてしまった。
箱に閉じ込められたアヒルの子たち。
男が保健所に電話をしに、その場を去った後、
逃げたはずの母親アヒルが、
ダンボールに近づいて来て、
箱の横にジッと立っている。
それを見ていた、近所の女性が、
母親アヒルに近づくが、
アヒルは、その場から逃げようとしない。
ダンボールの横から動こうとしない。
母親アヒルの目と鼻の先まで近づいた女性。
彼女も子を持つ母親であった。
母親アヒルは、
決して女性と目を合わせようとしないが、
その場を動かず、
置物の様にジッとしていている。
母親アヒルと母親である女性との間で、
無言のコミュニケーションが取られているよう・・・。
次の瞬間、
女性が箱を持ち上げると、
アヒルの子ども達が、いっせいに走り出し、
せせらぎの方に脱兎の如く逃げる。
母親アヒルも、瞬時に、
子アヒルと同じ方向に走り出す。
逃げたアヒルに気が付いた男が、
大声を上げながら、アヒルを追い掛けるが、
アヒルたちの姿は、一瞬で消えてしまっていた。
佇む女性。
怒る男性。
このエピソードは、
私が住んでいる家の前で起きたことだが、
驚いたのは、
人間が近づいても一歩も後ずさりせず、
捕らわれた子アヒルの側を、
少しも動かなかった母親アヒルの心情である。
普通、人間でも、他人が近づいてきた時、
本能的に距離を保つよう、下がったりするものだが、
この母親アヒルは、人間が近づいて来ても、
動かなかった。
その時の母親アヒルの気持ちを考えると、
強い母性を感じる。
自分の身も心も、強靭な鉄の塊となり、
大切な物を守る。
そして、女性に無言で訴えたテレパシーのような存在。
思いを無言で伝える能力は、
人間を含む動植物は、本来持っているものなのかもしれない。
それが、いつしか、
使わなくなってしまった人間がいて、
退化してしまったのではないだろうか・・・
そして、アヒルを助けた女性の行為。
「勇気」を持って行動するということ。
「勇気」とは、
小学校の頃、黒板の上に書かれてあったり、
教科書でよく見る言葉でしたが、
「勇気」そのものについて、
教えられた記憶がありません。
よく使われるけど、
日本社会では、あまり実体のない言葉のように感じます。
「勇気ある行動」より、
「周りと異なる行動をとらない」
本質を見極め、
正しいことの為に行動する。
そんなことを感じた、アヒルのエピソードでした。
【映画の現場から】
こちらのコーナーでは、
現在製作中の作品の現場から、
現状をお届けします。
2011・3・11
その数年前から、
映画「ほたるの星」と「早咲きの花」が
福島県南相馬市のゆめはっとで上映されたのがきっかけで、
地元の方々と交流を深めていました。
しかし、昨年の3月11日。
その後、何度も地元を訪れ、
避難されている人々に、耳を傾けました。
若い時、第二次世界大戦を経験した老人が、
「戦争より酷い」
津波から逃れ、生き延びた女性が、
「津波に流された方がよかった…」
命が助かり、生き延びた人々が、
生きていることの方が辛いと訴え、
「死んだほうがましだ」とは、
一体、何が起きているのでしょうか?
21世紀の文明国日本で、
苦しんでいる人々を助けられないのは、
何かがおかしい。
福島第一原発から20キロ圏内で、
牧場を経営していた男性が、
彼の自宅を案内してくれました。
浪江町で相馬焼きの釜が沢山存在する地域。
前回訪れた時は、余りの放射線量の高さに、
車から降りることも許されなかった場所に、
彼の自宅兼牧場がありました。
白い防護服にマスク。
両手には何枚も重ねたゴム手袋。
車から降りる度に、靴の上からビニール袋を履き、
外の土を車内に持ち込まないよう細心の注意をしての行動です。
その中で、
彼は、赤いジャンパーに野球帽を被り、
手袋もマスクもなく、
全く普段通りに、牛の世話をしているのです。
自宅の裏山には、沢山の大きな椎茸が育っていました。
彼が言うのです。
「いつもは猿が来て、しいたけ盗って行くんだ。
だから、猿を捕まえる罠まで、用意してるんだ。
でも、今年は来ない」
庭には、真っ赤に熟した柿の実がたわわに生っていました。
「いつもは、鳥が来て食べるんだ。
だけど、今年は一羽も来ないな」
普段着のままの奥さんが言う。
「畑の野菜に、一匹も虫が付いてないんだ。
虫も食べないんだ。
食べるのは人間だけだ」
福島原発20キロ圏内に存在する浪江町。
去年の3月11日から、時間が止まってしまったかのような町。
20,000人居た町民は全て避難。
町の中には、数時間立ち入りが許可された住民と警戒パトカーだけ。
しかし、植物は道路を覆うばかりに成長し、
屋上に上がった私を、カラスの群れが襲って来たのである。
家を追われ、避難生活を余儀なくされている町の人々の
「声無き声」をしっかり聞く義務を、
私は強く感じている。
映像に拘る人間としての責任を感じている。
そして、時が流れても、
3・11の現実は、今尚存在し、苦しんでいる人々が沢山いることを、
しっかり捉えていかなければならないと感じている。
決して風化させない為に。
この秋から、現地に拠点を構え、
長期間の撮影を実施する準備中です。
このドキュメンタリー作品の進行状況を
これからもお伝えして参ります。
【Q&Aコーナー】
どんな質問でも、お待ちしています。
愚問なんて、ありません。
ただ、全ての質問にお答え出来ないかもしれませんが、
全力は尽くします。
質問はこちらまで御寄せください。
qa-sugawara@azure-plus.co.jp
★Q&Aのルール★
・メルマガの登録アドレスから送ってください。
・採用する質問は、私と編集部が決めていきますので、ご理解ください。
いただいた質問に全てお答えできないこともございます。
・質問は上記アドレスにメールで送ってください。
・いただいたメールに対しての返信は行っておりません。
・いただいた質問は、ブログに掲載される可能性があります。
こんな感じで私のメルマガが始まりましたが、
初めてのメルマガですので、
ヨチヨチ歩きですが、
少しずつ成長していくと思いますので、
これからも宜しくお願いします。
それでは、次回まで。
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