マル激!メールマガジン 2016年5月11日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第787回(2016年5月7日)
男の生き方が変わらなければ日本は何も変わらない
ゲスト:田中俊之氏(武蔵大学社会学部助教・社会学者)
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結局日本は男が変わらないと何も変わらないってことか。このゴールデンウィークもメディアは相変わらずの出国、帰国ラッシュを取り上げている。あたかも日本中がバケーションモードに入っているような感覚を受けるが、あるアンケートでは今年のGWが10連休だったと答えた人は6%程度。3分の1はカレンダー通りに出勤していたそうだ。
かつては「24時間戦えますか」などとCMががなり立てていた時期もあった日本が、経済停滞期に入って20年が経った。年間の総労働時間は多少短くなっているが、その一方で、一日あたりの労働時間は逆に増えている。
社会学者で男性学を専門に研究している武蔵大学助教の田中俊之氏は、日本人の働き方が変わらないことの原因が、男が変われないところにあると指摘する。日本の男性中心の労働環境や労働慣行が変わらない限り、働き方のみならず、われわれの生き方もなかなか変わることができない。このままでは日本の前途は暗いと田中氏は警鐘を鳴らす。
近年、働き方や価値観が変わったと言われるが、日本人男性が一家の家計を支えることが全ての前提になっている点はほとんど変わっていない。しかも、日本では男性が40年間フルタイムで働き続けることを前提に、職場も家計も成り立っている。しかし、これは経済成長が見込める時代に人為的に作られた制度であり前提だ。その前提が変わっているのに働き方を変えられない男性が抱える矛盾は大きくなる一方だ。
『男が働かない、いいじゃないか!』などの著書のある田中氏によると、日本の男性は物心ついたときから競争に勝つことを要求されてきた結果、理不尽な慣習や制度でも競争の一環と捉え、それに順応してしまう傾向が強い。女性のように新しい友人のネットワークを作ることが不得手で、結果的に友達もできず趣味も見つからず、仕事に没頭することが男性の生き方そのものになってしまう場合が多い。
最近、1998年から続いていた年間3万人を超える自殺者数がようやく2万5000人まで減ったことが報じられているが、そのうち3分の2に当たる1万7000人強を男性が占めている。なぜ日本の男はこうも生きづらいのか。それが社会にどのような影響を与えているのか。男が変わるためにまず何が必要なのか。日本が抱える諸問題の根っこにある日本の男の問題を、田中俊之氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本人の労働観はいかにして生まれたか
・男の子に競争を求める教育は、マイナスになる
・“イクメン”VS“粘土層”という不毛な構図
・ポイントは「別の生き方がある」と思えるか
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■日本人の労働観はいかにして生まれたか
神保: 今日は5月6日金曜日です。5月2日月曜日も平日ですが、この2日を有給か何かで休めば、最大で10連休になるという話です。大学は暦通りですか?
宮台: ええ。大学によっては月曜日に授業があるところも、今日金曜日に授業があるところも普通にあります。それだけではなく、大学は今、いわゆる祝祭日にも授業を行うところが出てきている。文部省から「半期15コマ最低ライン」通達が出ていますから。
神保: “15コマ問題”ですね。「とにかく15コマやれ、中身は問わない」と。要するに、いま休んでしまうと、試験前の忙しいときに補講を行わなければならなくなるかもしれないと。だったらむしろ、こんなどこに行っても混雑しているようなときに休むより、授業をやってしまったほうがいい、という話になるかもしれませんね。
宮台: 今日のお話のひとつの重要なモチーフになることですが、そもそも昔から「早く連休終わらないかな」と考える人がいます。家族と仲がいいわけでもなく、義務としてどこかに連れて行くのも面倒だし、つまりワーク・ライフ・バランスという言葉を使うとすれば、「ワーク」とバランスをとるべき「ライフ」が非常に貧しく、せいぜい個人的な趣味に毛が生えたようなものしか想像できない。仕事をしている自分についてはイメージを明確に持つことができ、承認可能性も十分に期待できるが、プライベートにおいてそれなりに分厚い承認可能性や、充実した何かがないのです。だから、単に仕事を減らせばいいかというと、それだけでは難しい。
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