• このエントリーをはてなブックマークに追加
多田将氏:ニュートリノの謎が解明されれば本当に宇宙の起源がわかるのですか
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

多田将氏:ニュートリノの謎が解明されれば本当に宇宙の起源がわかるのですか

2016-08-17 23:00

    マル激!メールマガジン 2016年8月17日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
    ──────────────────────────────────────
    マル激トーク・オン・ディマンド 第801回(2016年8月13日)
    ニュートリノの謎が解明されれば本当に宇宙の起源がわかるのですか
    ゲスト:多田将氏(高エネルギー加速器研究機構准教授)
    ──────────────────────────────────────
     物質の最小単位となる素粒子の謎が解ければ、宇宙の起源がわかる。そう言われて、一体どれだけの人がピンとくるだろうか。物質をとことん細かく砕き、これ以上ないところまで小さくした時にできる素粒子のニュートリノが、宇宙誕生の鍵を握っている。そして、そう信ずる最先端の物理学者たちが、世界中でニュートリノ研究に鎬を削っている。
     茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構などの国際研究チームが8月6日、「ニュートリノ」の「粒子」と「反粒子」の変化に違いがある「CP対称性の破れ」の兆候を初めて捉えたと、米・シカゴで開かれていた国際学会で発表した。まだ、「兆候を捉えた」段階に過ぎないが、これが確認されれば、宇宙の起源の解明にもつながる人類史に残る大発見になるのだという。無論、ノーベル賞候補だ。
     われわれの目の前で人類史に残るほどの大発見が現在進行形で起きているかもしれないのに、そのすごさが理解できないのはちょっと悔しいし勿体なくもある。そこで今週のマル激では、正に今回の実験を行った高エネルギー加速器研究機構の准教授で「金髪の素粒子物理学者」の多田将氏に、典型的文系脳の神保哲生と宮台真司が「今さら聞けないニュートリノと宇宙の起源の関係」を聞いた。
     今後、世界中でこの仮説を確認する実験が実施され、これが確認された時、人類は宇宙の起源の解明に手が届くことになるのだという。多田氏は2020年代の中頃には、それが証明される可能性があると言う。
     20世紀に目覚ましい発展を遂げた物理学は、今なおその発展を遂げている。特に実験装置が発達したことで、かつては仮説でしかなかった数々の学説が、実験によって裏付けられるようになってきている。しかし、物質を素粒子の次元まで解き明かし、更に宇宙の起源にまで迫ろうかというところまで来ている物理学は、その先に何を見ているのか。今日の最先端の物理学もそう遠くない将来、いたって原始的で牧歌的なレベルに過ぎないものだったと言われる時が来るのだろうか。
     盛夏の折、最先端の素粒子物理学が明らかにするこの世で最も小さな話と、宇宙の起源というこの世で最も大きな話、そして両者の関係について考えた。

     ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    今週の論点
    ・宇宙の起源も紐解く「T2K実験」の内容とは
    ・そもそも「ニュートリノ」とは何なのか
    ・物質と反物質は同時に生まれるが、なぜ物質だけが残ったか
    ・日本が世界をリードする素粒子物理学 人類史上最大の問題を解決するか
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    ■宇宙の起源も紐解く「T2K実験」の内容とは

    神保: 今回は僕にとって一番ハードルが高いテーマかもしれない、「ニュートリノ」を扱います。宮台さんは“ブルーバックス少年”だったし、こういう分野はフォローしていますね。

    宮台: この後で紹介されるような、こういうことが「発見」されたとか、こういうことがわかったというニュースがあると、発作的にブルーバックスのようなものを買って読む、ということがあります。また最近はNHKのEテレがかなりいい科学番組を作っており、インターネットでアーカイブスが見られます。

    神保: 僕としてはそもそもニュートリノが何なのか、ということが全然わかりません。なぜ、物質をどんどん細かくしていくと、宇宙の起源がわかるのか。宮台さんは、そのことに違和感はないのですか?

    宮台: 違和感ありまくりですが、それを言えば「宇宙の始まりはアトムよりも小さかった」など、もう意味がわかりません。以前、惑星物理学者の松井孝典さんをお呼びしたときも、ありそうもない奇跡のような極小確率の偏差が積み重なって、例えば僕たちが存在しているとか、物が存在しているという話を伺いました。すべてがありそうもない。

    神保: すごい話です。文系的な解釈ですが、今回は「すごく小さいがゆえに、すごく大きな話」ということでいいのでしょうか。僕らだけで話していても無意味だと思いますので、専門家の先生の助けを借りましょう。ゲストをご紹介します。高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所の准教授で物理学者の多田将さんです。高エネルギー加速器研究機構が行った実験が、大きなニュースになりました。僕はこのニュース原稿を見て、出てくる単語が半分以上わからなかったのです。「高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)が、物体をすり抜けて飛び交う素粒子ニュートリノの粒子と反粒子の変化に違いがあるCP対称性の破れの兆候をとらえたと、米シカゴで開催中の国際学会で発表した」というのが、ニュースのリードです。

    多田: 僕はむしろ、おふたりはよくご存知なほうだと思います。うちの母親など、僕が核兵器の研究をしていると思っていますからね(笑)。一般的には、おそらくそんなものだと思います。ですから今回は、うちの母親に説明するくらいの気持ちで、どんな実験なのか、このニュースがどういう意味なのか、ということをお話したいと思います。

     
    この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
    ニコニコポイントで購入

    続きを読みたい方は、ニコニコポイントで記事を購入できます。

    入会して購読

    この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。