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西山隆行氏:トランプ政権の1年はアメリカと世界をどう変えたのか
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西山隆行氏:トランプ政権の1年はアメリカと世界をどう変えたのか

2018-02-07 20:00

    マル激!メールマガジン 2018年2月7日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第878回(2018年2月3日)
    トランプ政権の1年はアメリカと世界をどう変えたのか
    ゲスト:西山隆行氏(成蹊大学法学部教授)
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     トランプ政権の誕生から1年が過ぎた。いざ大統領になれば多少は大統領らしく振る舞ってくれるに違いないとの淡い期待を背負って船出した政権だったが、発足直後からイスラム移民の排斥やメキシコ国境の壁建設を命ずる大統領令を乱発したのを皮切りに、とりわけ人種や人権、環境面では選挙戦中にも増した過激な言動や行動に揺れた1年だった。
     気がついてみればトランプ政権は最初の1年で、TPPやパリ協定や国連のユネスコから離脱し、NAFTA(北米自由貿易協定)も再交渉を始めるなど、かつての国際社会の秩序の守護神からその破壊者へと立場を180度変えてしまった。国内的にも長い年月をかけてアメリカが適応してきた環境規制を一気に緩和したり撤廃するなど、アメリカの時計の針を少なくとも20年~30年分は巻き戻すような政策を次々と実施している。
     こうした政策選択は一部の有権者には受けがよく、短期的にはアメリカに利益をもたらす可能性もある。しかし、長期的には国際社会におけるアメリカの地位を低下させ、アメリカの国力の衰退をもたらすことになりかねない、危ないものばかりだ。
     また、その間、大統領選挙戦中にトランプの陣営がロシア政府と共謀して選挙に介入を試みたとされる、いわゆる「ロシア疑惑」も、ウォーターゲート事件を凌ぐアメリカ政治史上最悪のスキャンダルに発展する可能性が依然、否定できない。
     11月に中間選挙が予定される2018年は、怖い物見たさ半分で様子を窺っていた有権者もそろそろ本気でトランプ政権の成果を見極めようとするだろうし、これまでのような出たとこ勝負の政権運営には早晩限界が来るだろう。そうなった時にトランプ政権がどこに向かうのかは、まったく予断を許さない。穏健路線に転じる可能性もある一方で、3割といわれる過激な鉄板支持層を堅持するために、より過激な方向に向かう可能性もある。
     トランプ政権の存在は、とりわけ人種や人権面でアメリカ社会に大きな影響を与え始めている。アメリカの大統領には究極のロールモデルとしての役割が少なからずあるからだ。特に子どもたちにとって大統領の言動は、今のアメリカで何は許され、何は許されないのかを判断するための重要な規範になる。歯に衣着せぬ本音トークと言えば聞こえがいいが、人種、宗教、人権などでアメリカがこれまで守ってきた一線が大統領自身の手によって次々と壊されてきたことの影響は、アメリカ社会のみならず世界に大きく波及している。
     日本でもかつて、例えば選挙制度や情報公開やNPO法のような、民主主義の制度改革が争点になるたびに、アメリカを参照点にするのが常だったが、今は何ごとにおいてもアメリカを模範とすることが難しくなっている。下手をするとアメリカが悪い見本の典型ように語られることも少なくない。困ったことに「これでも日本の方がアメリカよりまし」などと、現状肯定の言い訳に使われることも珍しくない。腐ってもアメリカはアメリカなのだ。
     トランプ政権の誕生はアメリカや世界をどう変えようとしているのか。アメリカはこのまま衰退してしまうのか。そもそもトランプ政権はどこまで持つのかなどについて、アメリカ政治に詳しい西山氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・負ける前提から、大統領という地位にこだわり始めたトランプ
    ・トランプ大統領の1年が、先験的に示したもの
    ・トランプの政策と、検討されないサイドエフェクト
    ・「見本の崩壊」で、日本の政治も正されない状態に
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    ■負ける前提から、大統領という地位にこだわり始めたトランプ

    神保: トランプ政権の誕生から1年、一般教書演説もあったということで、アメリカの話を入り口にして世界、日本を見る事ができればと思います。ゲストはほぼ1年前、前回選挙の直後にも来ていただきました、成蹊大学教授でアメリカ政治がご専門の西山隆行先生です。トランプが選挙に勝利し、「さすがに大統領になれば、そんなに無茶なことはしないだろう」という期待もあったと思います。それが予想通りだったのが、予想外だったのかということも含め、まず、西山さんはこの1年をどうご覧になっていますか。

    西山: トランプというのは、思った以上に分断を深める大統領なんだな、というのが強い印象です。おっしゃるように、選挙のときは民主党と共和党の間で対立していても、大統領になればある程度、全体をまとめようとしないと統治ができない、というのが基本的な発想ですが、トランプは民主党と共和党の分断だけでなく、両党の内部も分断させてしまっている。トランプ政権になり、ある意味でアメリカ社会がバラバラになっている、その度合が以前よりも増しているというのが大きなポイントだと思います。先日の一般教書演説で、トランプが国民の団結を訴えたことで、高い評価を受けていますが、1年経ってそんなことが評価される大統領というのは、やはり前代未聞です。

     
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