マル激!メールマガジン 2018年2月14日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第879回(2018年2月10日)
民主国家はシャープパワーに太刀打ちできるのか
ゲスト:西田亮介氏(東京工業大学准教授)
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今日のテーマは今、国際論壇で話題となっている「シャープパワー」。
「シャープパワー」とはアメリカの政府系シンクタンクが昨年末にまとめた報告書で初めて使われた言葉で、民主国家を弱体化させるために、民主国家が重視する言論の自由や経済活動の自由を逆手に取るかたちで様々な工作を行う専制国家を意味している。当初は中国台頭のアメリカに対する脅威を表現するために使われた概念だったが、ロシアが2016年の大統領選挙に様々な形で介入していた事実が明らかになるにつれ、中国に加えてロシアもその対象と考えられるようになった。また、中国やロシアを手本に、そのような手法を真似て民主主義を操ろうとする国が南米や東欧にまで拡がり始めているという。
元々、国の軍事力を裏付けに影響力を行使する伝統的な「ハードパワー」に対し、20世紀末頃からハーバード大学のジョセフ・ナイらが唱えた、崇高な価値観や倫理観を通じて影響力を行使する「ソフトパワー」が重視されてきた。しかし、その崇高な価値基準を逆手に取ることで民主国家を分断したり弱体化させる専制国家の「シャープパワー」が今、台頭してきている。「ソフトパワー」の脆弱で柔らかい部分に、鋭い(シャープ)な刃先を突き刺すという意味が込められているという。
国が外交上の目的を達するために他国に対して様々な工作を行うことは、何も新しいことではないが、「シャープパワー」の特徴は、民主国家が本来の強みとしてきた民主主義の自由や開放性、経済活動の自由度などを逆手に取って様々な工作を行っている点だ。特にその中でも、ソーシャルメディア(SNS)を使った世論操作や社会分断、選挙への介入は、先のアメリカ大統領選挙や昨年のドイツの総選挙で大きな成果を上げた可能性があり、民主国家にとってはその根幹を揺るがしかねない重大な脅威となっている。
フェイクニュースの蔓延やネットを使った中傷や炎上マーケティングは以前から問題になっていたが、言わばネット社会化した民主国家の弱点を突く形で国家目的を達成したり、潜在的な敵国を弱体化させる外国勢力の活動の存在が明らかになった今、SNSのあり方があらためて問われることは避けられない。
ネットと民主主義の関わりに詳しい東京工業大学の西田亮介准教授は、それでも民主主義の利点である言論の自由を制限するような法的な規制を設けるべきではないとの立場を取るが、かといって現在のように、世論が外国勢力に乗っ取られかねない状態を放置するのではなく、「共同規制」と呼ばれる業界団体による自主規制導入の必要性を強調する。
民主主義はシャープパワーの脅威に太刀打ちできるのか。民主国家が民主主義の最大の果実である表現の自由や経済活動の自由を失わずに、専制国家に太刀打ちすることができるのか。社会がネット依存の度合いを強める中での必然な帰結とも言えるシャープパワーの台頭から、民主主義のあるべき姿を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、西田氏と議論した。
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今週の論点
・民主主義の弱点を刺す「シャープパワー」とは
・フェイクアカウントは規制できるのか
・処方箋のヒントは「動機を疑うこと」
・日本の公職選挙法は、意外によくできていた?
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