マル激!メールマガジン 2018年9月19日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第910回(2018年9月15日)
自民党総裁選へのえも言われぬ違和感の正体
ゲスト:秋山訓子氏(朝日新聞編集委員)
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来週の木曜日に自民党の総裁選挙が行われ、自民党の次期総裁が決まる。第一党にして国会の過半数の議席を持つ自民党の総裁が、内閣総理大臣を兼ねることは言うまでもない。その意味で、20日に行われる自民党総裁選は日本の総理大臣を選ぶ選挙ということになる。
しかし、一国の最高権力者を選ぶ選挙の割には、何とも盛り上がりに欠ける。早くから国会議員票の8割以上を押さえた安倍首相の三選が確実視され、今となっては、石破氏が党員票をどの程度集めるかのみに興味の焦点が移っている。
過去四半世紀にわたり日本は、個々の政治家から政党へ、官僚から首相へと、政治権力の集中を進めてきた。中選挙区制の下、派閥や族議員が跋扈していた時代は、ロッキード事件やリクルート事件などで金権政治が批判され、個々の政治家が集めることができる政治資金に厳しい制限が課せられる一方で、政策論争を喚起するとの触れ込みで、小選挙区制や政党交付金などが導入されてきた。
また、バブルの崩壊や住専、薬害エイズや大蔵官僚のノーパンしゃぶしゃぶ接待など、官僚による失政や不祥事が相次いだことで、官僚主導の政権運営が批判を受け、政治権力を首相官邸に集中させる「改革」が相次いで打ち出された。
今や首相は、官邸官僚と呼ばれる省庁の中でも最も大きな権限を持つ独自の手勢を持ち、内閣人事局や国家安全保障局、経済財政諮問会議などを通じて、官僚の人事から予算編成、外交・防衛にいたるまで、ほとんど全ての分野で絶大な権力を行使できるようになっている。官邸の人事権は裁判所や捜査機関にまで及ぶこともあり、未だかつて無いほど、首相の権力をチェックしたり制御することが難しくなっていると言っても過言ではないだろう。
そのような状況の下で、自民党内は安倍首相が有利と見るや、各派閥は雪崩を打って安倍支持を表明。自民党の国会議員405人のうち、ここまで分かっているだけで約350人が安倍支持で固まってしまった。
果たして現在のこの状況は日本にとって好ましい状況なのだろうか。われわれは権力の集中を図る一方で、それをチェックしたり制御するための仕組み作りを怠ってきたのではないか。一度権力を手にした者が、自らその権力を手放すことは考えにくい。当然その権力を使って、更なる権力の拡大やその永続化を図るのが、権力の常であることは、多くの先達たちが警告してくれているはずだ。
政策的に、あるいは人間的に安倍首相に親近感を覚え、これを政治的に支持すること自体には、何ら問題はない。しかし、われわれが委譲した権力が公正に行使されているのか、またそれは然るべきチェックを受けているかどうかは、それとは別次元の問題だ。また、絶対権力の前で、ジャーナリズムがきちんと機能していると言えるかどうかも、問われる必要がある。自民党総裁選から見えてくる今の日本の政治の現状を、政治やNPOを長年ウオッチしてきた秋山氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・自民党総裁選の“争点”はどこにあったのか?
・官邸に権力が集中し、チェック機能が働かない現状
・安倍政権だからこの程度で済んでいる、という可能性
・日本の政治に必要なのは価値の転換
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■自民党総裁選の“争点”はどこにあったのか?
神保: 本日は9月14日、現在、自民党総裁選の二人の候補が、日本記者クラブで討論会を行っています。アメリカでは、政権幹部が匿名で、ニューヨークタイムズの一面に政権内にレジスタンス勢力があるとの意見記事を出しました。面従腹背の二重権力構造がネットワーク化しているということです。トランプはすごい剣幕で、国家安全保障上の脅威だから寄稿者を明らかにしろ、とすごい剣幕ですが、今回の総裁選も含め、日本にも関係してきそうです。
宮台: もろに関係します。ラジオでも話したことですが、民主制の機能不全をどうやってカバーするか、ということについての最終的なアイデアが、アメリカでいま、実現されているのだということです。一般的には、民主制は政治家を民衆がコントールする仕組みですが、たとえ真実だろうが不快だったら無視する、というポスト・トゥルース(オルタナティブ・ファクト)の時代になり、その結果、民衆が政治家に対して賢明なコントロールを施すことができなくなりました。当然、放っておけば政治権力が暴走し、それを食い止める唯一の方法は、かつてモンテスキューが指摘したように、相互に制御し合うことしかありません。
神保: チェック・アンド・バランスですね。