マル激!メールマガジン 2018年10月24日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第915回(2018年10月20日)
日本が「ハーフ」にとって生きづらい国だって知ってました?
ゲスト:サンドラ・ヘフェリン氏(コラムニスト)
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日本人と外国人の両親を持つ、いわゆる「ハーフ」が頻繁にメディアに登場する昨今。日本人と外国人の間に生まれる子どもの数が、毎年概ね2%程度に過ぎないことを考えると、確かに日本のメディアにおけるハーフの露出度は異常に高いと言えるだろう。
しかも、テレビに出ているハーフの多くが、得てして美男、美女でバイリンガルでお金持ちという話になっていることもあり、日本ではハーフに対してそういう先入観を持つ人が多い。しかし、『ハーフが美人なんて妄想ですから』の著者で自身も日本人とドイツ人を両親に持つコラムニストのサンドラ・ヘフェリン氏は、ハーフは誰もが美人でバイリンガルという先入観が、多くのハーフを苦しめているという。
ヘフェリン氏は著書の中で、批判を覚悟の上で、あるマトリックスを作成して紹介している。それは、美人度と語学力を縦軸と横軸に取り、ハーフを4象限に分けた上で、美人でバイリンガルのハーフを「理想ハーフ」、美人だがバイリンガルではないハーフを「顔だけハーフ」、言葉はできるが美人ではないハーフを「語学だけハーフ」、美人度も低く語学もできないハーフを「残念ハーフ」と名付けたものだ。
その上でヘフェリン氏は、メディアに出ているハーフのほとんどが「理想ハーフ」のカテゴリーに入るため、純ジャパ(純粋ジャパニーズ。ハーフではない日本人の意)はハーフといえば皆美人で外国語ができるという思い込みがあるが、実際のハーフの大半は、その象限には入らないのだと指摘する。つまり、いわゆる美男、美女ではなく、言葉も日本語しかできないハーフの方が、実際は遙かに多いということだ。
例えば就職でも、純ジャパにとっては外国語を喋れることは大きなプラスの評価対象になるのに、ハーフは外国語が喋れて当然と思われているため、逆に外国語が喋れないハーフは「ハーフなのに外国語ができない」ということで、むしろマイナス評価になる場合が多いのだという。それ以外にも、外見がハーフというだけで、初対面の人に親の国籍だの両親の馴れ初めだの、自分は親のどっちに似ているかなどのプライベートな事をあれこれ聞かれるのが定番になっている。英語ができないハーフが、レストランやファーストフード店で英語のメニューを見せられて当惑する事も日常茶飯事だそうだ。
実際は日本生まれ、日本育ちのハーフの多くが、自分はただの日本人だと思っている。にもかかわらず、そのような特別な扱いを受けることで、日本を自分の「故郷」とは思いにくい。しかし、かといって、もう一つの母国には住んだこともないし、言葉もできなければ、友達もいない。そんな国を自分の故郷と思うことは難しい。日本生まれ、日本育ちで、日本語しかできなくでも、外国人の血が混じっているというだけで、普通の日本人として扱ってもらえない疎外感を感じているハーフは多いのだという。
結局のところハーフの生きにくさの問題は、日本人が「何が日本人なのか」と考えているかの問題に帰結すると語るヘフェリン氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が、ハーフの視点から見た日本人論を議論した。
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今週の論点
・「ハーフ」が置かれる立場と、二重国籍への拒絶反応
・理想ハーフから残念ハーフまで「ハーフの四象限」
・普通の日本人=できの悪いハーフ、という苦悩
・行き着くのは「日本人とは何なのか」という問い
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■「ハーフ」が置かれる立場と、二重国籍への拒絶反応
神保: 今回のテーマは、マル激的には初めてです。
宮台: これまで似たようなテーマもまったくありませんでした。
神保: マル激どころか、ほとんど見ないのが問題だと思います。ハーフの方は日常的に見るのに、それをテーマにした学問もほとんどありません。戦後の混血児、のような話はけっこう研究がありますが、今のハーフとは何なのでしょうか。実はそのことを発信されている方がいて、ぜひそちら側の話も聞きたいと考えてゲストにお呼びしました。ドイツ人のお父様と日本人のお母様を持つ、いわゆるハーフのサンドラ・ヘフェリンさんです。今回参考にさせていただいた本、まずタイトルが面白いですね。