マル激!メールマガジン 2019年4月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第938回(2019年3月30日)
5金スペシャル:クズのコスパ野郎にならないために生きがいを見つけよう
ゲスト:茂木健一郎氏(脳科学者)
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その月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。
今回は脳科学者の茂木健一郎氏をゲストに迎え、まず茂木氏の近著「IKIGAI」を元に、「生きがい」という言葉の背後にある日本固有の精神性や考え方を議論した。
茂木氏は日本人の生きがいには、1)小さく始める、2)自分からの解放、3)調和と持続可能性、4)小さな喜び、5)今ここにいること、の5つの柱があると説く。そして「朝、目を覚ます理由」とも表現される生きがいには、「こだわり」や「クオリア」、「フロー」などが必要で、まず手始めに、自分が心から大事にしているものは何か、自分に喜びを与える小さなことは何かの2つを自問することが、生きがいを見つける第一歩になると指摘する。
人間の価値が成功によって決定される世界では、多くの人が不必要なプレッシャーに押しつぶされそうになる。しかし、何かを達成しなくても、生きる価値を与えてくれる生きがいを持つことはできる。生きがいとは、自分にとって意味がある人生の喜びを発見し、定義し、楽しむことで、必ずしも社会的な報酬に結びつくものではない。それは自分だけが理解できる特別な価値であり、密かにゆっくりと培い、成果を得ていくものだと茂木氏は言う。
生きがいをみつけると「フロー」と呼ばれる心理状態に入ることができるようになる。これは、ある活動に夢中になるあまり、それ以外のものが何も気にかからなくなるような状態のことだ。しかし、フローを得るためには自我を解き放つ必要がある。そしてそれは、今目の前にあることに全身全霊を傾けることで初めて達成が可能となる。茂木氏は日本人特有の「こだわり」や「職人気質」の背後に、この「フロー」という精神状態があると語る。
生きがいはその言葉の通り、生きる甲斐を与えてくれるものだ。生きがいを見つけることができれば、とかくわれわれの行動を支配しがちな目先の損得勘定や人からどう見られているか、社会的な成功を収められるかどうかといった日々の不安やイライラの種から解放されるばかりか、意味があると思える人生の喜びを発見し、楽しむことがきっと可能になるにちがいない。
日本人だけが知る、長く幸せな人生を送る秘訣としての「生きがい」を英語で著した脳科学者の茂木氏と、とかく「クズのコスパ野郎」に成り下がりがちな今の世の中で生きがいを持って生きるための方法を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・失われている「概念的な仕事」と、クオリア論のポイント
・「クズのコスパ野郎」にならないために
・「体験」を閉ざす“クソ民主主義”
・「自分自身を受け入れる」という処方箋
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■失われている「概念的な仕事」と、クオリア論のポイント
神保: 久しぶりの5金で、無料放送なので普段見ていない方も見ていただけると思います。テーマは「生きがい」で、僕はすごくいい言葉だなとあらためて思ったのですが、まずはゲストをご紹介しましょう。脳科学者の茂木健一郎さんです。僕はどちらかと言うと、今日は茂木さんが宮台さんとインタラクトするのを、物見気分で来ました。
茂木: 宮台さんがよく言われている「感情の劣化」というものを、僕もすごく感じるんです。今日、映画を観ていて思ったのは、日本映画ってすごく辛いことが多いんですよね。なんでこんな感情を描かなければいけないんでしょうか。